この街で、一緒に生きていく/公益財団法人ヤマト福祉財団・障害者のクロネコメール便配達事業

ひとりで配達することが、楽しくって、うれしくって。

埼玉県の東浦和駅からすぐ近くにある静かな住宅街が、ヒールアップハウス晴れ晴れのメール便配達地域です。始めた当初は、なかなかうまく行かず、担当者をかなり悩ませたと言います。しかし今は、5名のメイトさんがいきいきとメール便配達に従事。その働きぶりを見て、他にもやりたいという人が増えてきているそうです。

最初の3ヶ月で、メール便配達はもうあきらめる寸前でした、と、晴れ晴れの石崎美智施設長は笑います。それほど、始めたすぐは体力的なことなどで、メイトさんが長続きしなくて困ったそうです。

2年前の当初、メイトさんをやってみたいと手を挙げたのは10人。しかし3ヶ月後残っていたのは、たった1人だけでした。しかし残った彼は、それでもやめようとはしません。それから、石崎施設長にとっては悩みの日々が始まります。

1人残ったメイトさんのためにもメール便配達はやめたくない。しかし現実は、メール便の半分以上を職員たちが配っている状態でした。職員に申しわけない。しかしひとりでがんばっている彼を、なんとかサポートしてあげたい。その頃の苦しい胸の内を石崎施設長は語ります。「1人のために、施設でこんな大変な思いをしてまでやっていく意味があるのかと自問自答しました」。

しかし、その悩みを解決してくれたのは、彼でした。彼は、メール便配達をとても熱心にがんばり、そのうち高い工賃を稼ぎ出すようになったのです。すると、彼を見て、まわりでやりたいと言う人が増えてきたそうです。今では、晴れ晴れのメイトさんは5人に。一日約80冊あまりを配達するようになっています。「うまくいかなくてヘコんでいたとき、ヤマト運輸の人がよくやっているとほめてくれました。大丈夫だよって応援してくれるので、やめちゃいけないとがんばりました」。満面の笑みで石崎施設長は話してくれました。

それぞれのテンポで、成長を続けるメイトさんたち。

メイトさんを始めて1年半になる佐藤直樹さんにとって、メール便配達は夢の仕事だったそうです。

しかし始めてから半年ぐらいは、苦労の連続。端末のボタンがうまくそれぞれのテンポで、成長を続けるメイトさんたち。押せなくて、そのたびに施設まで帰ってきてはまた戻るを、何度かくり返したこともあったそうです。それでもこの仕事がやりたいと、現在も根気強く続けています。「配達しているのが、とても楽しいです」と、心からの笑顔を見せてくれました。

小倉秀文さんは、毎朝いちばんに施設にやってきて、みんなの仕事の準備をします。メール便配達を始めてから、施設に来る日がどんどんと増えて行ったそうです。1年が経った今は、週に4回の配達をしています。ポストにテープが貼られているとか、マンションの号数とかの細かな記録をつけているのだとか。正確にやらなくてはいけないという気持ちが、とても強いといいます。「これまで何をやっても中途半端だったのに、この仕事をして、俺、思っていたよりちゃんとできるじゃないかと、自信が生まれました。自分がすべての責任を持っているんだと思うと、大変だけど終わった後に達成感を覚えます」。

自転車の前後が変わると、成長を感じる

始めて一ヶ月しか経たない小屋原敏文さんは、まだ職員と一緒に配達をしています。それでも同行の職員に「今日は見ているだけでいいよ」、「ひとりで配達するからついてくるだけにして」と言ってくるそうです。いずれひとりで配達するという目標が、しっかりあるのです。「最初は自転車の後ろをついてきていたのに、いつのまにか職員の前で走るようになっている。この前後が変わるときに成長を感じるんです」と石崎施設長。

人一倍責任感の強い湯田悟さんは、確実に正確にメール便を届けるために、細かなところにまで気を遣います。メール便の依頼主や受取人、そしてヤマト運輸の人のことまで考えて、自分はどのように配ったらよいのかを工夫するそうです。

体力をつけたいという湯田さん。「夏、汗をかいたのが、とても気持ちよかったです」。

後ろ姿に自信が表れている

ヤマト運輸 北東京主管支店 メール便営業課 櫻井昭男課長は「真剣に、しっかりと責任を持って仕事をしてくれています。ありがたいです」と、彼らの仕事ぶりに感謝します。

川口西支店 武藤健一支店長は、配達に同行して、その丁寧な配達ぶりに驚いた様子。「感動しました。メール便が人から人へと配達されているのを、改めて感じさせられました」。

彼らの配達に同行している取材中、石崎施設長が涙ぐむ場面がありました。メール便の住所を何度も確認しながらポスティングしている彼らの様子を見て、これまでのいろんな想いがめぐったようです。「最初は、ひとりで配達するのは不安だと言っていた人が、今はひとりで行くのが楽しくって、うれしくってという様子なんです」今日は自分だけで行くから放っておいてと言われると、うれしいけれど、ちょっとさみしいような気もするんですよ、と困ったような顔をして笑います。

石崎施設長は、彼らの後ろ姿を見ているのがとても好きだそうです。背中を見ていると、彼らの心の充足感がわかると言います。「それを背中でいちばん感じるのが、メール便配達のお仕事なんです」。

北東京主管支店 川口柳崎センター

面積4.04K㎡/人口39,440人/世帯数15,968世帯

特定非営利活動法人ヒールアップハウス・晴れ晴れ

2008年6月メール便配達事業開始。現在メイトさんは5名。一日約80冊を配達。その他、パン製造販売、チラシポスティングなど。

障害者のクロネコメール便配達事業

参入施設数 333施設 従事者数 1,401人(2011年10月現在)

お問い合わせは公益財団法人ヤマト福祉財団 メール便担当

電話 03-3248-0691、ファクス 03-3542-5165

http://www.yamato-fukushi.jp/

写真説明

まだ始めて1ヶ月の小屋原敏文さん。始める前は大変だと聞いていたのに、思ったよりやれたので自信が生まれてきたそうです。やりがいのある仕事だと話します。「はやくひとりで配れるようになりたい」

家族のようにあたたかく見守る石崎美智施設長。最初は、責任のあることだからと、自分から消極的になっているところがあったそうです。しかし今は、できなければ、できるようにするにはどうすればいいかを、考えるようになったと言います。「みなさんに任せられるということが、実感できました」。彼らが話すとき、他は内職だとか作業という言いかたをするのに、メール便配達は仕事という言葉を使うそう。それがとても新鮮だと話してくれました。

端末を操作するのが楽しいと言う、小倉秀文さん。みんなと協力し合ってできるのがうれしいそうです。他の人のために、注意点とかをまとめているのだとか。「最初は不安でしたが、逃げ出さずにやれました」。100冊以上を配ってみたい、と意欲満々です。

始めて1年半になる、佐藤直樹さん。職員を同行しての配達を半年ぐらい続けましたが、最近は自信を持ってひとりで配達ができるようになったと言います。まわりから、最近性格が明るくなったねと言われるそうです。

自転車に乗って配達する佐藤直樹さん

向かって前列左から、石崎美智施設長、小倉秀文さん、湯田悟さん、佐藤直樹さん、小屋原敏文さん、ヤマト福祉財団 東京支部 小澤秀好事務長後列左から、ヤマト運輸 北東京主管支店 メール便営業課 櫻井昭男課長、川口西支店 武藤健一支店長