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この街で、一緒に生きていく。

ミスの原因を考えることで、失敗も貴重な経験となる。

JR 名古屋駅から近鉄線に乗り換えて約30分。四日市駅から車で約10分の住宅街がサポートセンターあいぷろ の配達エリアです。2人のメイトさんを中心に、たくさんの利用者さんがメイトさんとして関わりながら、広い地域を確実に配達しています。

DATA

三重主管支店、四日市生桑センター

面積 17.53㎢

人口 38,759人

世帯数 14,308世帯

社会福祉法人 あいプロジェクト、多機能型作業所サポートセンターあいぷろ

2008年からメール便配達を開始。1日の平均配達数、約100冊。その他の活動は、製菓作業、販売、しめ縄作り、農作業など。

障害者のクロネコメール便配達事業

参入施設数 320施設

従事者数 1,644人。2014年10月現在

お問い合わせは、公益財団法人ヤマト福祉財団メール便担当

電話 03-3248-0691

ファクス 03-3542-5165

http://www.yamato-fukushi.jp/

サポートセンターあいぷろ がある三重県四日市市生桑町は、細く曲がりくねった道と坂道の多い高低差のある住宅街です。ここに隣接するエリアを含む3つの地域を、3班で担当しています。

朝9時すぎ。中心となる2人のメイトさん、西村健志さんと佐野裕紀さんは、歩いて1、2分の場所にあるヤマト運輸四日市生桑センターへメール便を引き取りに行きます。手続き後、台車を借りてサポートセンターあいぷろ へ運搬。そして、西村さんが台車を返却している間に、佐野さんは仕分けに はいります。テーブルの上にはエリア別の大きな段ボールが並べられ、側面には町名や番地が見やすく書かれています。段ボールの中に作られているのは、番地ごとの縦の仕切り。その中にメール便を立てるように入れて行きます。ヤマト福祉財団中部支部の後藤淳浩事務長は「ヤマト運輸の縦仕分けと同じやり方です。仕分けをしやすく工夫していますね」と感心します。

1年前に移転し、配達エリアが一新

サポートセンターあいぷろ がメール便配達事業を始めたのは約6年前。以前にメール便配達をしていた職員からの紹介が、きっかけでした。4年半配達してすっかり慣れた頃、事業所が現在の場所へ移転。配達エリアが一気に新しく広くなりました。すべてがいちからのスタートとなったため、全エリアを職員がチェック。車通りが多い道、細い道で対向車に気をつけなければいけない道、などのリストを作成したといいます。そして、初めは職員が一緒に配達。注意が散漫になりがちなメイトさんになんどもアドバイスしながら、安全な歩き方などを学んでもらったそうです。

しだいに慣れた西村さんと佐野さんは約1年前にひとりで配達するようになりました。メール便は毎日平均で、約100冊。西村さんは週に5日、いちばん広いエリアを受け持ち、遠い地域は自転車と徒歩で配達しています。あらかじめ自転車を停める場所の許可をとり、そこを拠点にして徒歩で回り、また自転車で移動するやり方。近い地域は、バッグを抱えて徒歩で配達します。佐野さんは腰が悪いため、キャリーバッグを使って、近くのエリアを徒歩でゆっくりと回ります。

取材の日は、西村さんが55冊、佐野さんが35冊。残りの13冊は、メイトさん4人を職員2人がサポートしながら、一軒一軒ゆっくりゆっくりと配達していました。地図を持つ人、メール便を入れたバッグを持つ人、端末操作をする人とそれぞれが役割分担。この班は9人の利用者さんの中から毎日3、4人、交代で配達を担当しています。

日報に書き込みしっかりチェック。

サポートセンターあいぷろ のルールは、必ず日報を書くこと。日報は、その日の配達数の他に、作業準備をした人の名前や、地図をチェックしたかどうか、ルートを決めたかなどの項目に○をつけていくものです。その他、持ち物チェックの欄で、作業着、携帯電話、地図、調査票、ボールペンなどをきちんと持ったかどうかも確認します。配達が終わったら、終わり作業チェックの欄をマーク。欄外には、持ち戻り、転居、新しい家の情報があれば書き込むスペースもあります。

「元々は職員のために作った日報ですが、今ではメイトさんがしっかりと自分で書き入れています」と支援員の古市遼さん。日報に書き込みながら確認していることが、配達ミスの少ない理由ではないかと話します。

納得すれば、ミスは役立つ体験となる。

「それぞれが持っているこだわりがあります。だから、失敗しても、その解決法をこうしなさいと押し付けません。原因は何か、自分で考えることでミスを乗りこえてもらいます」と支援員の古市さん。「たとえば、雨の日にメール便を濡らしてしまったときは、なぜそうなったかを理解することが大切です。袋のフタをしっかり締めていなかった、バッグの上に傘をかざしていなかったなど、原因を確認して、どうしたら濡れないかを考えると失敗を繰り返しません」。

また、小さなポストに無理矢理メール便を押し込んで、商品を傷つけてしまった時は、職員と一緒に対策を練ったそうです。そして、あらかじめ小さなポストの家を地図に星印でマークすることにしたのです。星印のある家に配達があるときは、「お留守だったので持ち帰ります」と書き込んだ調査票を持参。留守なら調査票をポストに入れて、メール便を持ち帰ります。この流れをしっかり身につけるように、繰り返しアドバイスしたそうです。「今では、調査票も自分で書きますし、今日は星印の付いた家が何軒ありましたと忘れずに報告してくれます」と支援員の古市さんはうれしそうに話します。

仕事意識を持つことが成長につながる。

「施設の中ではできないことも、外ではできるようになったことがあります。たとえば、少しずつ明瞭に言葉が言えるようになったり、小さな声が大きくなったり。仕事という意識を持ってきているためだと思います。西村さんはとくにひとりで配達できるようになって、自信がついたと思いますね」。支援員の古市さんは、ここから就労に結びつくことを願っていると語ります。

夢を叶えるチカラになりたい。

ヤマト運輸三重主管支店、メール便課、斎藤幸正課長は「この広いエリアをほぼ歩いて配達するのは、大変だと思います。仕事ぶりは、本当に一生懸命で前向き。確認するという意識が高いし、思い込みがないから、ミスが少ないのでしょう。かけがえのない存在です」と話します。

ヤマト運輸三重主管支店四日市中村支店 小牧一敏支店長は「メール便を通して、働く喜びを知ってもらっているのはうれしい。他の施設にも声をかけてみたいと思いました。もっと広いエリアを配達したいという積極的な声も検討します。夢を叶えられるようチカラになりたい」と結びました。

メール便の配達の他に、メイトさんはケーキづくりなどにも携わっています。ひとりでできる仕事で自立心を育み、大勢といっしょに進める仕事でコミュニケーションを学ぶ。サポートセンターあいぷろ では、ひとりひとりの個性を伸ばすように愛が注がれています。

メイトさんの西村健志さんは、メール便を19歳で始めて5年目。多い日は1人で100冊配達することもあります。坂道からこの急な階段を登り、さらに続く毘沙門天の階段を一気に駆け上がります。夢は、もっとたくさんのメール便を広い地域で配達すること。

メール便を確認しながら、地図に蛍光ペンでマーク。その後、配達順に並べてバッグに入れていきます。

メール便をエリア別の段ボールに仕分けする西村さんと佐野さん。

メイトさん4人を職員2人がサポート。ゆっくりと歩きながら配達します。

住所を確認してから丁寧に投函する渡辺大祐さん。

どんぐり保育園で手渡しする西村さん。

メール便配達を最初から担当して6年目の佐野裕紀さん。楽しみは大好きなディズニーランドに行くこと。

支援員の古市遼さん 「グループで配達している地域では、メイトさんの顔を覚えてもらえるようになりました。「あれ、今日あの子は?」と声をかけてもらったりします。町の人と挨拶したり、接点ができるのは、とてもいいことです。運動にもなりますしね。とにかく、仕事を通して、ひとりひとりに自信をつけさせてあげたいと思っています」。

サポートセンターあいぷろ職員 山内沙弥香さん、大石加奈さん、中西伊吹さん、西村健志さん、佐野裕紀さん、職員増山雅代さん、木下瑞希さん、中山雄介さん、職員 武井佐和さん、ヤマト福祉財団中部支部 後藤淳浩事務長、職員 伊東元悦さん、岡本聖さん、職員 井村のぞみさん、里見晃裕さん、小林宗一郎さん、支援員 古市遼さん、渡辺大祐さん、サポートセンターあいぷろ 今村博之施設長、瓜生英貴さん、東田洋平さん、ヤマト運輸三重主管支店メール便課 斎藤幸正課長、ヤマト運輸三重主管支店四日市中村支店小牧一敏支店長

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