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私たちの賛助会費が活かされています。障害者給料増額支援助成金 助成先レポートVol. 23

ピンチをチャンスに。弁当事業へ新たな挑戦

NPO法人ピーターパンネットワーク共働作業所ピーターパン、福島県大沼郡会津美里町、就労継続B型

会津養護学校第1期卒業生の受け皿として、1993年に発足した共働作業所ピーターパン。じつにさまざまな事業を経験してきましたが、ここ数年はある赤字事業に悩んできました。事態を打開すべく、勇気を持って踏み出した姿をレポートします。

期待して臨んだ養鶏事業

根雪の中に立つ大型ハウスを覗くと、黒く長い尾羽を持つ会津地鶏が健やかに育てられていました。肉も卵も、コクとうま味にすぐれた銘柄鶏です。

猪苗代湖の西。会津若松市に隣接するこの地域で20年以上、地道に活動してきたピーターパンは、この養鶏事業に苦しんでいました。

「見込み違いでした。やるなら1000羽規模でないと難しい」と理事長の久家貞記さん。

もともとピーターパンは、バイオディーゼル燃料、BDF の製造販売を事業の核に据えていましたが、農業への利用者の関心も高く、会津地鶏の養鶏事業を2009年に200羽からスタートさせました。

「素人の挑戦でした。飼料は自分たちで都合し安く賄うつもりでしたが、やはりいいエサをあげないと、品質のいい卵にはならない。そのうえ、番犬をおいたり、金網を張ったりして対策をとったものの多くのヒナがイタチの餌食になってしまいました。地鶏を名乗るには平飼いが条件で、羽数を増やすにも鶏舎が新たに必要でしたがそんな資金もありません」と、施設長の穴沢明美さんは振り返ります。

覚悟の大改装

4年が経ち、いつも卵を買ってくれる固定客はいるものの、コストがかさみ赤字つづき。ついに職員会議で事業継続を断念、ゆっくりとした縮小を決断します。が、同時に穴沢さんはあらたな自主事業として弁当屋を提案しました。

「せっかくの美味しい卵、加工し付加価値をつけて提供できないかしら」。

菓子製造も浮かびましたが、美里町に1軒あった弁当店が事情により閉店。いつも混雑していた様子から、潜在的なニーズは伺えました。

そこで当財団の助成に応募。助成金500万円に銀行の借入500万円と自己資金380万円を加え、75平方メートルのしっかりとした厨房を昨年5月に整備し、新鮮な地鶏卵のオムライスを売りにした、ウェンディのお弁当屋さんを7月にオープンさせました。

「当初はこれだけ大々的に改装する気はなかったんです。でも財団さんに事業計画を相談している過程で、やるならしっかり、とハッパをかけられました」と、穴沢さん。

とはいえ、その時期ちょうどピーターパンは土地、建物の買取のために大きな借入をしたばかり。

「だから、理事長に言い出しにくかった」。穴沢さんは、「自分の名前だけで借りられますか」とひとり、銀行の扉を叩いたといいます。

「財団さんがこれだけバックアップしてくれたんだから、自分も負けてられない。そんな気持ちだけでした。銀行のOKが出たところで理事長に相談すると、しょうがないべ、と了承してくれました」(笑い)

半年を経て、課題は見えた

利用者さんは、開店直後に見られた戸惑いや不安も今は消え、全員が楽しくお弁当づくりに励んでいます。

1日200個、毎月100万円の売上目標も約8割を達成。とはいえ利益面では、良い食材を使いすぎているきらいからまだ期待どおりとはいかず、仕入れの見直しが課題です。また、夢へのかけ橋実践塾でお弁当をテーマにした勉強会、楠元塾にも参加し、「衛生管理や原材料費ダウンの徹底について、強い刺激を受けています。うちはゼロからのスタートなので、良いところはすぐに現場にフィードバックしている」そうです。

これまでは近隣の工業団地や役場がお客様のほとんどでした。春からは高校の購買部での販売、行政による高齢者への配食サービスなどにも参入する予定で話が進んでいます。

BDF事業も堅調に推移しており、昨年末に3万円の大台に乗った給料を、さらに引き上げできるのも、きっと間近。

ピーターパンの飛翔はいよいよ高くなる。そんな時を迎えつつあります。

新しく設備したもののひとつ、スチームコンベクション。導入によりメニューのレパートリーが一段と増えた

調理台、洗い場、配膳台2列を設備した広い厨房

良質の廃油を購入してきて、バイオディーゼル燃料を製造、販売するBDF事業は、堅調に業績を上げている

会津美里町町役場にお弁当を配達。この日、注文した渡部英敏町長も、オムライスは大のお気に入り

基本メニューはオムライスと日替わり弁当の2種。この日はハンバーグ弁当

会津地鶏の卵をぜいたくに使ったオムライス

来年度の予算書をつくりながら「うまくいったら、スゴいわ」と、ニヤけてしまうという施設長の穴沢明美さん

「民間作業所は簡単に経営が成り立たない」と、これまでの苦労を語る久家貞記理事長

鶏舎には元気な会津地鶏が。現在は140 羽が飼育されている。とれたての温かい卵に菊地執行委員もびっくり

労働組合支部執行委員長、助成先訪問 シリーズ18

私たちの気持ちは、しっかり届いていると納得

ヤマト運輸労働組合、福島支部執行委員、菊地昭雄さん

障害のあるかたが働いている姿を見るのは初めてでした。実際に目の当たりにすると、想像していたより、みなさんしっかりと働いていて、とても驚きました。その表情もいきいきとしていて、本当に素晴らしかったです。

夏のカンパ募集の声かけを担当しているんですが、振り返ってみれば漠然と「お願いします」としか伝えることができていなかったように感じます。

今回、実際にこういった現場を拝見したことによって、私たちのカンパが、どこでどのように役立っているかをしっかりと自信を持って伝えられる、そう確信しました。帰ったら職場で話します。他の社員のかたにも、こうした状況を、そしてみんなの誠意、気持ちはちゃんと伝わっているんだよと、知ってもらいたいと強く感じました。センターもここから近いので、お弁当を注文してみようと思います。これも支援のひとつですよね。

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