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この街で、一緒に生きていく

いい仲間とライバルがいるから、頑張れる

鶴岡市は、山形県の日本海側に位置する城下町。JR羽越本線の鶴岡駅から車で約10分の住宅街に、手づくりクッキー おからや があります。2人のベテランのメイトさんを中心に、9人のメイトさんと職員がタッグを組んで配達しています。

手づくりクッキー おからや がメール便配達を始めたのは、2006年2月。メイトさん1人、1日平均約25冊でスタートしました。施設長の大森和子さんとメイトさんの宮野泰広さんが、小さな地域を二人三脚で配達しながら、手探りでやりかたを覚えたそうです。

「町の人の理解を得ようと、まず配達地域のすべての家にチラシをいれました。おからやのメンバーが配達しています、何かありましたらご連絡ください、という内容です」と大森施設長。

宮野さんは何カ月かで慣れ、やがて広い地域もひとりで配り始めました。そして、すでに9年目。今ではあちこちで「ご苦労さん」と声をかけられるとか。それが宮野さんの励みになっています。

アジア知的障害者会議でメトさんの仕事を発表

宮野さんとともにメイトさんの中心となっているのが、佐藤隆史さん。メイトさんとなって8年目のベテランです。2013年インドでの第21回アジア知的障害者会議では、4人の仲間と共に参加。佐藤さんはヤマト運輸のユニフォームを着て、仕事について発表しました。通訳のかたをとおしてスピーチしたのは、定時制高校時代からいろんな仕事を経験したこと、さまざまな苦労をしながらも最後にメール便配達に出合ったこと、そして、仕事の大変さや楽しさが自分を変えたことなどです。会場で聞いていた学者たちは、障害者にできる仕事として関心を示し、いくつもの質問が出たといいます。

「とても緊張したけれど、いい経験になりました」と佐藤さん。次のスリランカ会議を楽しみに、お給料を貯めているメイトさんもいるそうです。

「あらゆる情報をみんなに伝えています。するとみんなが参加したいと手を挙げるんです。できることにはトライするのが、私たち おからや です」と大森施設長は楽しそうに話します。

雪が下から降る町

おからやの配達は、1日平均150冊。暖かな日は自転車で、悪天候の日は徒歩で配達します。大変なのは、冬。鶴岡では雪が下から降るといわれるほど、強い風と雪の舞う日が多いそうです。

雪や雨の日は、メール便が濡れないように、1冊ずつビニール袋にいれ、さらに大きなビニール袋で包んでからキャリーバッグにいれる工夫をしています。

おからや職業指導員の和田勝良さんは「どんな吹雪の日も、みんな黙々と出かけます。遠い地域の担当は2、3キロメートル歩きますが、文句を言わないし、休まない。配達が多い日はキャリーバッグにメール便をいっぱい詰めて、両方の肩から2つのバッグを斜めがけして出かけます。それでも楽しそうにしているんですよ」と話します。

誇りを持てるあこがれの仕事

「利用者さん29人中17人が男性です。学校の研修などでメール便配達を体験すると、この仕事がしたいと卒業後にはいってきます」と和田さん。携帯端末機を操作したり、外を歩く研修は他にないため、男性にはとても人気の仕事だといいます。

「メール便をとおしての変化は、ひとりひとりが自分のエリア、自分の仕事という誇りを持っていることですね。いい意味でライバル意識も仕事のパワーになっていると思います。そして、この配達がきっかけとなって、おからやがいろんな仕事を頼まれるようになったことも大きな変化です。メール便の配達をしっかりと行っていることが信頼と信用につながっていると実感しています」と大森施設長は話します。

DM便においても頼れるパートナー

ヤマト運輸鶴岡支店 菅野健二支店長は「仕事意識を高く持っているし、もっとたくさん配りたいという熱意に感動しています。この春からメール便からDM便に変わりましたが、変わらずお願いしたい、頼れるパートナーです」と語ります。

ヤマト運輸山形主管支店 鈴木健一課長は「いつも期日を守って遅れずに配達している。誤配もほぼありません。工夫があるし、ていねい。サービスレベルが高いです。DM便も、安心して任せられます」と結びました。

豆腐のおからを原材料とした、おいしいクッキーを作っている手づくりクッキー おからや。いまではクッキー製作だけでなく、メイトさんの仕事が事業の大きな柱です。おいしい匂いと笑顔があふれるおからやの元気な一日が、今日も始まっています。

山形主管支店、鶴岡宝田センター

特定非営利活動法人 花の会、多機能型事業所 手づくりクッキー おからや

2006年からメール便配達を開始。1日の平均配達数、約150冊。おからのクッキーの製作の他、自立支援のためのさまざまな活動を行っている。

障害者のクロネコDM便配達事業

2015年4月1日より、クロネコメール便配達はクロネコDM便配達へと変わりました。

拡大した地図に配達先をマークします

地図に配達先をマークする土田紘さん

ていねいに仕分けしていくメイトさんたち。左から、宮野泰広さん、菅原弘さん、石川裕也さん

運動が得意な菅原弘さん。配達には職員の本間新一さんが同行します

いつもニコニコ。楽しそうに配達する宮野泰広さん

しっかりと住所や名前を確認してから、お店で手渡しする佐藤隆史さん。

石川裕也さんはひとつの町内の7区画をひとりで担当。現在、8区画目を職員と配りながら訓練中。10区画全域ひとりで配達するのが目標です

佐藤隆史さんは、地図が頭にはいっていますが、必ずすべての配達先を地図にマークしてから出発します。建物は、元絹織物工場を活かした町おこしの映画館、まちなかキネマ

「いい仕事に出合ったと思います。職員が一緒に回っていても、自分で配達したという達成感があり、仕事意識につながっています」とおからや職業指導員和田勝良さん

前列向かって左から、門脇孟泰さん、土田紘さん、菅原弘さん、佐藤隆史さん、おからや大森和子施設長、宮野泰広さん、石川裕也さん、阿部達郎さん、おからや職員 本間俊一さん

後列向かって左から、ヤマト運輸山形主管支店 鈴木健一課長、ヤマト運輸鶴岡支店 菅野健二支店長、おからや職員 本間新一さん、おからや職員 前田勇さん、おからや職業指導員 和田勝良さん

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