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この街で、一緒に生きていく

笑顔で必死に前へ進んでいます

福島県の太平洋側、浜通り北部にある南相馬市。東日本大震災から4年過ぎた今も、震災の影響が残る地域です。市の3分の1に当たる鹿島区全域の DM 便配達を、きぼうのあさがお は担当しています。

きぼうのあさがお がメール便配達を始めたのは、2006年。メイトさんを募集するチラシを見た西みよ子理事長が「障害者でも携われますか」とヤマト運輸に問い合わせたのが始まりです。最初は配達数が1日300から500冊あり、職員が手伝っても1日中かかったそうです。9年目となる今では、多い日で、1日 約1000冊を手際よく配達。職員が頼りにする3人のメイトさんを中心に、7人のメイトさんが交代でしっかりと配達しています。

原発事故を心配し、避難圏外でも自主避難

津波で⅔が壊滅状態となった南相馬市鹿島区。幸い、きぼうのあさがお の施設は倒壊や浸水は免れました。しかし、原発事故後は、心配が絶えなかったといいます。30キロ圏内は避難地域で、きぼうのあさがお は第一原発から約31キロ。屋内退避という通達でしたが、利用者さんの安全を考慮して、山形県へ。26人と共に自主避難したそうです。そこで待ち受けていたのは、住民との軋れきなどの思いがけないストレス。そして、2週間で再び南相馬市に戻ることになったそうです。

「津波で甚大な被害を受けて、海側の配達地域を失い、しばらくメール便配達は休止していました。その後配達が再開したときは、嬉しかったですね。震災から4年、元気に見えるけれど、精神的には疲弊しているところもあります。でも、福島人魂で、負けてたまるか、頑張らなくちゃと、笑って元気をだしています」と西理事長は話します。

仮設住宅へきめの細かい配達

南相馬市鹿島区には7カ所に仮設住宅が点在。その約半数にまだ住民が暮らしています。突然の移転、ポストに名前がない、宛先に部屋番号が明記されていないなど、仮設住宅への配達には苦労したといいます。きぼうのあさがお では、その対策として、すべての宛先と名前をノートに記録。メイトさんの間で転居情報を共有しているそうです。

仮設住宅の多い配達地区を担当する稲垣貴志さんは「ポストの投函口にテープが張っていても、まだ住んでいることもあるので、確認が必要です」、志賀久美さんは「洗濯物やカーテンなどの有無で判断して、直接お届けすることもあります。でも、不明の時は自己判断しないで、持ち戻りをしています」と話します。

配達地域の拡大を検討中

メイトさんとして最初から関わる豊田幸生さんは、9年目のベテラン。みんなに頼られる存在です。仕分けのときも分からないことは、豊田さんに質問すると、すぐに答えを出してくれるそうです。「持ち戻りをすべて記載していますし、毎日の配達数の確認、請求書の記載などを担当しています。だから、ほぼ頭にはいっているのかもしれません」とやさしい口調で話します。

西理事長は「ヤマト運輸さんから隣の原町の配達も担当しないか、と声をかけていただいています。きぼうのあさがお からかなり遠いので、メイトさんが休憩する場所などを含めて、今後さまざまなことを検討しなければいけません。ヤマト運輸さんと相談しながら、前向きに進めています」と笑顔で語ります。

復興の可能性を担う DM 便の星

ヤマト運輸原町支店 斎藤純一支店長は「まじめな仕事ぶりは、頭が下がる思い。出入りの多い仮設住宅でもほぼ誤配がない。これからは除染を担当する人のための仮設住宅が約3000人分できていくといわれています。地域の拡大も含めて、今後も期待しています」と語ります。

ヤマト運輸福島主管支店サービスセンター 橋本直幸サービスセンター長は「雨の日は DM 便を汚さないように何重にもカバーしたり、細かなところにも気配りされているのがすばらしいですね。南相馬市は復興に向けて人が増えていく町。 DM 便も高い可能性を秘めています。体調管理に気をつけて今後も頑張ってほしい」と結びました。

「あかるく、さわやかに、がんばる、おれたち」。作業場の壁にみんなの想いが書かれています。

短時間ですばやく仕分けをしていく志賀久美さんと稲垣貴志さん。

きぼうのあさがお から自転車で約30分の遠隔地域。仮設住宅に配達する稲垣さんと志賀さん。宛先が分からないときは集会所で確認するという2人。稲垣さんはここからさらに遠い、アップダウンのある地域も担当しています。両親に旅行をプレゼントするのが夢。

「前後のかごにたくさん DM 便を乗せて、自転車で走るのは大変です。冬はアイスバーンになると危ないし、この辺は風が強い日も多い。何歳まで自転車で配達できるだろうと時々思います。でも、体力もついてほとんど休んだりしないので、ずっと頑張ります」と豊田幸生さんは話します。

お店や事務所などには、「 DM 便です」と声をかけて手渡しする豊田さん。

志賀久美さんはしっかりと宛先、住所を確認して投函します。夢はハワイ旅行。

前列向かって左から、ヤマト福祉財団東北支部 小原守事務長、豊田幸生さん、稲垣貴志さん、志賀久美さん、江井靖さん、水戸二夫さん、ヤマト運輸労働組合福島支部 荒博之執行委員。中列向かって左から、ヤマト運輸原町支店 斎藤純一支店長、西畑孝子さん、佐藤明美さん、藤田千鶴さん、あさがお 西みよ子理事長、佐々木善彦さん。

後列向かって左から、あさがお職員の荒幸弘さん、蓬田まゆみさん、遠藤あきさん、中目豊子さん、森桂子施設長、田村カオルさん、小島令子さん、ヤマト運輸人事部総務課 多田朋子さん、ヤマト運輸福島主管支店サービスセンター 橋本直幸サービスセンター長

「いらっしゃいませ。はい、かしこまりました。ありがとうございます。そんな挨拶の練習を1年間続けました。すぐに自然と口から出るように。今ではみんなが、自分はヤマト運輸の一員という思いを持っています。だから、真面目に一生懸命取り組んでいます」と西みよ子理事長と森桂子施設長。

2015年4月1日より、クロネコメール便配達はクロネコ DM 便配達へと変わりました。

福島主管支店 原町鹿島センター

面積
108.06平方キロメートル
人口
10,821人
世帯数
3,392

特定非営利活動法人あさがお きぼうのあさがお

2006年からメール便配達を開始。1日の平均配達数、約200冊。弁当作り、豆腐作り、介護、掃除など、自立支援のためのさまざまな活動を行っている。

障害者のクロネコ DM 便配達事業

参入施設数 317施設、従事者数 1,578人。2015年5月現在

お問い合わせは公益財団法人ヤマト福祉財団 DM 便担当

電話 03-3248-0691、ファクス 03-3542-5165

http://www.yamato-fukushi.jp/

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