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私たちの賛助会費が活かされています:障害者給料増額支援助成金:助成先レポート Vol. 25

お客様にとって当たり前の居心地のいいカフェであること

NPO 法人コミュニティワークス:Natural Cafe + Shop hanahaco: 千葉県木更津市、就労継続 B 型 生活介護

大学2年のときに指導教授の依頼で、縁もゆかりもない木更津市に移り住み、学生起業家として市民活動支援事業に挑戦した筒井啓介さん。当初3年間だった市との契約は10年つづきましたが、その10年間で筒井さんが知ったのは障害者雇用の場の少なさでした。

理想の施設を追い求めて

金曜の昼下がり、女性を中心にたくさんのお客様がくつろぐお洒落なカフェ。木更津駅から車で20分、緑多い小高い丘に建つのが Natural Cafe + Shop hanahaco です。店内は落ち着いたトーンでコーディネートされ、有名セレクトショップに並ぶ雑貨も販売しています。

昨年3月に念願のカフェをオープンさせたのが、2006年から本格的に障害者福祉に取り組む NPO 法人コミュニティワークス です。建設費の一部を財団の助成で賄いました。

ひとつ目の事業所で受けいれる利用者さんが増加するにつれ、施設が手狭に。さらに障害の種別や度合いもまちまちになると、精神障害のかたと、多動で賑やかな知的障害のかたとが、同じ空間でいっしょにモノづくりをつづけることに困難が生じていました。

「そこでイメージしたのは、B 型が仕事を回して売上をつくり、それを緩やかにサポートする生活介護にも分けることで、B 型と、生活介護の給料も上げていく。そんな仕組みは何かと考えて辿りついたのが、さまざまな仕事が切り出せる飲食店だったんです」と、語るのは理事長の筒井啓介さんです。

専門家とうまくつきあう

市民活動支援をしていると、福祉の相談がたくさん舞い込みます。あるとき熱心な支援者からの頼みで、障害者の職業指導をおこなう、職親制度の引き受け手になりました。

「ふたつ返事で受けたのですが、障害者の働く場がこんなにもないのか、と知ることになりました。同時に、地域で起業したい人の支援をしてきた経験が生かせるのではと思いました」。

NPO を立ち上げるのはお手のもの。すぐに設立し、共同作業所の認可も得ました。

スタートは、安い内職に苦しみましたが、職員たちが試行錯誤の末、開発した自主商品、新聞バッグは、英字新聞をリサイクルしたもの。これが雑貨ブランドのラインナップに採用されると、モノづくりで稼ぐスタイルが確立しました。内職からの完全脱却を目指してつぎに目をつけたのがお菓子づくりです。

たまたま当時、新聞バッグが NHK に採りあげられ、インタビューで利用者さんの給料が1万円台だと明かしました。現状を隠さず訴えたかったからです。世間の反応を知りたかった筒井さんは、その後ネットで気になるツイートを見つけます。

これが福祉作業所の限界だ。

福祉職員の力だけではなく、プロの力も使うべきだという冷静な視線がそこには感じられました。調べてみるとツイートの主は、福祉コンサルタントのよう。著名なパティシエ、絵本作家とのコラボレーションをコーディネートして、お菓子商品の開発を手助けしている様子です。

「すぐに自分からアポを。相手は驚いてましたが」(笑い)

そうして誕生したのがポルボローネ。マザー牧場の生乳を使い、売れ行きも好調です。

もっと前へさらに上へ

今回のカフェ出店でも、プロを上手に頼るやりかたは遺憾なく発揮されました。

店のコンセプト策定には、職員のほか建築家やデザイナーを交えて2年にわたる社内ワークショップを開催。どんなお客様をお迎えしたいのか、じっくり検討して意思統一を図りました。そのうえ店舗でお客様の目に触れる部分は、トータルデザインの専門家に例外なくチェックしてもらう徹底ぶりです。

「ここが障害者施設かどうかはお客様にとって関係なくて、快適に満足してお帰りいただくことが大事。ひいてはそれが売上につながり、利用者さんの給料に還元されるのですから」。

現在、B 型の平均月給は3万円に。それでも「目標とする売上にまだまだ足りていません」。策を思案する姿に、現状に甘んじない起業家精神を見ました。

労働組合支部執行委員長:助成先訪問 シリーズ20

みんなのカンパはあなたの身近で役立っている

ヤマト運輸労働組合:千葉支部執行委員長、坂口伸一さん

ヤマト福祉財団の取り組みについては、自分自身かねてより強い関心があり、支部委員長になってからは助成金の贈呈式などに出席する都度、お聞きする施設のかたのお話に共感するところがありました。

今日も筒井さんのお話からは、事業に込められた思いが伝わってきて、本当に感激しました。今日取材した内容は、支部の機関誌アクアラインでもご紹介したいと思っています。

これまで3回、支部委員長として夏のカンパに携わりました。2回目は1回目よりご協力いただける人数は増えたものの金額は下回りました。より広報に努めた3回目の昨年は人数、金額ともに前年を上回り、千葉支部の仲間たちにそれだけ共感が広がったのだと感じます。

自分たちの善意で提供した資金が、こうしたことに使われている事実をもっと知っていただいて、カフェへも訪れてもらえればと思っています。

hanahaco の利用者さんとスタッフ

開店準備にはまずお店の掃除から

調理の下準備にも、B 型の利用者さんの姿が

「建築家、POP 類のデザイナー、カメラマン、ブックセレクター、トータルデザインの専門家。僕はただの経営者で具現化する力がない。お金はかかりますが、やはり専門家を頼ったほうが、お客様にとっていいものになるんです」と筒井理事長

生活介護の利用者さんは、おしぼりのセット、物販データの管理、ユニフォームの洗濯などの仕事で店舗を支える

オリジナル商品の新聞バッグとスペインのお菓子、ポルボローネのパッケージ。菓子工房アントレの髙木康裕シェフが監修し、絵本作家、村上康成氏のイラストがあしらわれている

併設のライフスタイルショップにはお洒落な雑貨が並ぶ。いずれもフェアトレード商品か、全国の障害者施設や地場産業を守る工房が小ロットで生産する、ストーリーを持ったアイテムを厳選

Cafe + Shop hanahaco の責任者、初芝小百合さん

サラダバー、毎朝利用者さんが作る数種類のドレッシングも人気

この日のランチは、サバのみぞれ和え with 菜花とエノキの白和え。ヘルシーでボリュームもあるランチに坂口伸一委員長と千葉支部広報の正木邦政さんの顔もほころぶ

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