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リレーコラム、夢をつないで、第3回

埼玉県立大学、教授、朝日 雅也

障害者差別禁止と、合理的配慮の提供にあたって

本年4月から、障害者差別解消法が施行されました。まさに、障害の有無にかかわらず共生する社会を創造していくための枠組みができたと言えます。同時に、障害のある人、ない人、いずれもが、障害に対する意識を変革することが重要になってきます。ヤマト福祉財団様の障害者福祉助成事業等の地道な取り組みは、両者の意識を変革する、大きな力になっていると思います。

さて、私の勤務先の大学でも、障害のある学生に対する差別禁止と、合理的配慮の提供についての取り組みが推進されています。差別の禁止は、あまりにも当然のことですし、保健医療福祉分野の人材育成を担う本学にとっては、さらにその取り組みを徹底していく必要があります。そして、この考えかたは、在籍する学生に留まらず、これから大学進学を目指す、障害のある受験生についても同様です。

そこで、多くの大学では、障害のある受験生に対して、入学前の事前相談をおこなっています。その際、大事なことは、入学試験における配慮と、入学後の学習や、学生生活に関する配慮についての相談は、明確に分けることです。入口の段階で、例えば、大学には、障害に配慮した設備が不十分、支援体制が確保できない、あるいは、大学外での実習は、受けいれ先の理解が得られない、資格を取得できても就職は難しい、となると、結果的に、障害のある受験生に、その大学、分野で学ぶことを、あきらめさせることになるからです。

肝心の相談の結果が障壁になるのでは、国連の障害者権利条約にもうたわれている、障害のある人の権利の行使を妨げることになってしまいます。事前の相談は、入学試験を受ける上での配慮事項についてのみにすべき、と主張したのは、本学の初代の社会福祉学科長で、第8回ヤマト福祉財団 小倉昌男賞 特別賞を受賞した、故 丸山一郎先生でした。その上で、障害のある学生が入学したならば、大学が最大限、必要な配慮をおこなうのは当たり前のこと、と強調されました。私もその考えかたを継承し、大切にしています。障害のある受験生が、障害があっても大丈夫だろうか、大学側が、教育は可能だが、その後の就職等は責任を持てない、といった、制約的な観念に縛られることなく、障害があっても大学で学ぶことは当然、という意識に立って、どう可能性を広げていけるのかを検討し合うことが、真の差別解消の取り組みであるのです。

Profile

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉 子ども学科教授。障害者の職業リハビリテーション、就業支援等が専門。福祉施設と一般企業での就労をいかに結びつけていくか等についての研究活動をおこない、単に就労移行支援にとどまらず、障害のある人の、尊厳ある働きかたを追究している。埼玉県自立支援協議会会長、日本職業リハビリテーション学会会長。ヤマト福祉財団では、福祉助成金、および、障害のある大学生に対する、奨学金の選考委員会委員長。

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