ステップ あそかの園 が新しい事業所をオープンしたのは4年前。最初は、外で できる仕事がいいと考えて、ポスティングを経験。利用者さんに合う業務と実感し、毎日できる仕事がないかと探していたときに、クロネコメール便、後に DM 便、配達を知ったそうです。隣接する地域で配達している ワークステーション大歳 へ見学に行き、その順調な仕事ぶりを見て、取り組みを決めた、と、ステップ あそかの園、就労支援員の田村政文さんは振り返ります。
「最初は職員だけで始めました。地図を覚えるのが大変で、慣れるまで、3カ月ぐらいかかりました」と田村さん。メイトさんの数が増えるに従って、少しずつ配達エリアも広がり、今では、1日約200から300冊、多い日は約600から700冊も配達。ひと月では約6000冊以上に。配達数は、DM 便参入施設の全国トップ10に はいって います。取材をお願いした日は、なんと約900冊。 DM 便には8名のメイトさんが関わっていますが、大忙しの日でした。
仕分けは全員で、力を合わせて。
毎朝、事業所に早く到着しているメイトさんから仕分けを開始します。エリア別に DM 便を分けた後、パウチした地図に配達先をマーク。その地図を見ながら、職員が配達コースを決めて、配達順に宛名を読み上げます。すると、メイトさんが2、3人で DM 便を探し出して、配達順に並べていくというやりかた。最後に職員が再度チェックし、間違いがないかを確認します。
お客さまの大切な品を届ける、責任のある仕事。
事業所の近くを配達するのは、下川千里さん。電動自転車で1日平均、約50冊、多い日は約130冊、配っています。下川さんは、自分のエリアの仕分けから、端末登録、投函までを1人でおこなえるため、職員から信頼されて、すべてを任されています。
「お客さまの大切な品だから、濡らしたりできない。突然の雨には、すぐに雨宿りをして、カバーをかけるように気をつけています」と下川さん。
配達数が多い日は、自転車のハンドルが取られそうになることもあるとか。
「人の役に立つ仕事をしたいから、もっと広いエリアを配達してみたい」と夢を語ります。
できないと決めつけず、可能性を伸ばす。
下川さんが担当する以外のエリアは、車で職員と2から3人のメイトさんが配達します。軽自動車でなければ すれ違えないほどの狭い道が多く、運転には気を遣う、と職員の矢田真由さん。
「なるべく配達先のポストの前で車を停めて、あの赤いポストよ、車に気をつけて、と声をかけています。でも、今では、自分で注意を払う人が増えてきました」と、矢田さんは話します。
同じ名字の人が ひとつの地域に多く住んでいるエリアや、二世帯住宅など、同じ名字の2つのポストに投函しなければいけない場合は、特に、下の名前の確認を怠らないようにしているそうです。
「私は DM 便に関わって半年になります。最初はメイトさんにずいぶん教えられました。これはできないはず、と独断で決めつけないで、ひとりひとりの可能性を伸ばしていきたい」と矢田さん。
適応能力が高い。今後に期待。
ヤマト運輸、山口主管支店、山口吉敷支店、矢次康成支店長は「ここは、 DM 便と宅急便が2対1という、DM 便の数が多いエリアです。かなり多い冊数をこなしながら、クレームがほぼない。今は、特にカタログが増える時期。でも、心配がないのは、本当にすばらしい」と語ります。
ヤマト運輸、山口主管支店、三好俊康 サービスセンター長は「山口主管では辞めるメイトさんがいて、人数が不足気味です。今後、メイトさんがさらに足りなくなると、サービスレベルが低下してしまう懸念があります。そんな中、こちらのメイトさんたちは、対面配達もこなし、適応能力が高いので心強い。もっとスキルを上げれば、ヤマト運輸の、他の仕事にも関わってもらえるかもしれない、という可能性を感じました。ヤマト運輸のパートナーとしての成功例。いつか、もう一歩踏み出す日が来ると思います」と期待を込めました。
気持ちをサポートしながら、一歩ずつステップアップ。
ステップ あそかの園 サービス管理責任者の大隈進さんは、「体調が左右するので、毎日来てくれるかどうか分からない人が多い。元気に通っていたのに、突然、来園できなくなる人もいます。言葉でフォローし、気持ちをどうサポートするか。難しいけれど、とても大切だと思っています」と話します。
スタートから約4年。次第に町に溶け込んでいる、ステップ あそかの園 のメイトさんたち。責任感を高めながら、毎日、確実にステップアップしています。
電動自転車で配達する下川千里さん。雨の日や、年に2から3回は積もるという雪の日は、徒歩で配達しています。
就労支援員の田村政文さんが配達順に読み上げる DM 便を、松永萌々恵さんが探し出して、手渡します。
左から、松永萌々恵さん、河村菜々子さん、平岡義彦さん、職員の矢田真由さん。河村さんは「わかることが増えてきたのがうれしい」と楽しそう。平岡さんの夢は「いつか JR 九州の豪華列車に乗ってみたい」。
最終確認をする下川千里さんと、サービス管理責任者、大隈進さん。
しっかりと宛名を確認して、投函する、松永萌々恵さん。絵を描くのが得意です。
前列左から、ステップ あそかの園、職員、矢田真由さん。サービス管理責任者、大隈進さん。就労支援員、田村政文さん、下川千里さん、松永萌々恵さん。ヤマト運輸、山口 主管 支店、三好俊康 サービスセンター長。後列左から、ヤマト運輸、山口 主管 支店、山口 吉敷 支店、矢次康成 支店長。ヤマト福祉財団、中国支部、土井宏作事務長。
「ひとりで できる人を増やして、みんなの工賃を、少しでも上げていきたい」と、就労支援員、田村政文さん。
「下川さんは、ひとりでやってみたい、と自主的に言ってきました。自分の仕事という意識が高い。一般就労に つながる 前段階の仕事として、DM 便は適しています」と、サービス管理責任者、大隈進さん。