グループ内の SD シューズで、クリーニング & メンテナンスを展開。
いま、作業靴市場は、製造業、食品加工、警備業、建築業、運送業を合わせると、約3600万人と言われています。障害のあるかたの雇用拡大に、新たな仕事を創出したい、と考えるヤマト自立センターは、この市場に注目。ヤマト グループ内の SD さんのシューズをはじめとする、作業靴のクリーニング & メンテナンス(以下、 C & M )の事業化を、ヤマト グループに対して提案しました。
SD シューズのクリーニングは、約8年前に、ヤマト自立センターのスワン工舎新座で、靴専用のオゾン乾燥機を導入し、すでに着手していました。2013年10月に、羽田クロノゲート内に開設した、スワン工舎羽田へ機材を移動し、作業靴の C & M の本格的な取り組みを開始。せっかく つくり上げたノウハウを、もっと活かすことはできないか、障害のあるかたの雇用拡大のビジネスモデルになるのではないか、と計画しました。
ヤマト自立センターの瀧澤正一常務理事は、「障害のあるかたの雇用を広げたいが、本業や事務などの仕事を切り出すやりかただと、いずれ頭打ちとなります。新たな仕事を創出しなければ、雇用拡大も、待遇改善も難しいと思います。これは、どの企業も抱えている共通の悩みです。作業靴の C & M 事業の成長性を示すことで、解決の糸口を広げていきたい」と話しています。
誰にも使いやすく、生産性が高い、専門の道具や機械を、手作りで用意。
スワン工舎羽田のクリーニング室には、 SD さんが日々の業務で頑張って使用されてきた SD シューズが、いくつも届いていました。
「 SD さんには、2足の SD シューズをマイシューズとして貸与し、1ヵ月に一度、 C & M に出して、交互に使用していただくことで、つねに足元をきれいな状態に保つことができます」と管理者の大津武士さん。 SD シューズの C & M を開始したきっかけのひとつは、配達先のお客様より SD さんの足の臭いが気になる、との声が届いたことでした。それも、オゾン乾燥機による除菌消臭効果で解決できます。オゾン乾燥機で、水虫の菌、白癬菌などの雑菌を死滅できれば、大きなセールスポイントになる、と検証も進めています。
クリーニング室の靴クリーニング専用電動ブラシ機やワックスがけ機は、すべて職員の手作りです。しつこい靴の汚れ落としに適し、効率的に、誰もが簡単に使いこなせる機械が市販品になかったため、試行錯誤しながら開発しました。これらのツールは、靴クリーニングに関わる利用者さんの意見を反映して、現在も改良中です。
スワン工舎羽田では、クリーニングから、傷ついた靴の補色や縫製をおこなうメンテナンスまで、一足一足、丁寧に手作業します。特に縫製は、2本の糸で交互に手縫いすることで、ミシン縫い以上の強度に仕上げます。こうした縫製技術の訓練もしっかりとサポート。利用者さんが C & M の主役として活躍する準備を進めています。
「今回の調査により、約半年で1足のシューズを履き潰していることがわかりました。傷みが進む前に、ここでメンテナンスすれば、もっと長持ちし、経費削減にもなります。 SD さんも、ひとつの汚れた靴をずっと履き続けるより、 C & M できれいになった靴を、マイシューズとしてローテーションしながら、履き続けるほうが、気持ちよく働けます。 SD さん、会社、障害者さんのみんなにメリットが生まれる SD シューズの C & M を、全国展開できたら素晴らしいですね」と瀧澤常務理事は話しています。
一足一足の SD シューズを清潔で快適に。障害のあるかたが、チーム体制で洗浄、乾燥、磨き、補色、縫製、ワックスがけを、効率的におこないます。
ヤマト自立センター、常務理事、瀧澤 正一 氏。