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私たちの賛助会費が活かされています。奨学生レポート vol. 10

旅が好き。そこからユニバーサルな社会を描く勉強中。

学ぶことが愉しいから、実現したい夢があるから。理想に向かって、大学という場で研鑽を積んでいる奨学生の皆さんをキャンパスに訪ねます。

藤田 裕大 さん。

城西国際大学、観光学部ウェルネス ツーリズム学科2年。

出生後すぐに、脳室周囲白質軟化症と診断。体幹機能障害で、自立歩行は困難ながら、小中高は普通学級を卒業。書字にも負担は大きいが、手書きの小論文と面接で AO 入試を突破。現在は、資格取得や語学の習得にも励んでいる。

障害者奨学金制度。

障害を乗り越えて社会で活躍する日を目指し、勉学に励んでいる大学生のかたに月額5万円、返済不要、を助成しています。

幼いころの体験が源泉に。

千葉の一大観光エリア、南房総。太平洋を一望するキャンパスに、藤田裕大さんを訪ねたのは、夏の盛りのことです。小中高校を都内の公立校で学んだ彼は、進学を機に、大学のある鴨川市に越してきました。

10代前半から、高校卒業後も何か学びたいと考えていた藤田さん。両親や東京大学先端研が主宰し、障害高校生の大学進学を支援している、DO-IT Japan などにも相談して、入念に準備し、大学受験に挑みました。この大学を第一志望にしたのは、観光学への関心が次第に膨らんでいたから。

「2歳のころから、南大阪療育園に母子入園をしたり、手術のために長期入院することがありました。手術後も経過観察を兼ねて、3ヵ月に1度は、リハビリ入院で大阪を訪れました。そんなわけで、新幹線に乗って移動したり、長期宿泊の経験をしているうちに、旅行が自然と好きになって、トラベル プランナーとかになりたいなと思い始めたんです」。

また、ご両親も旅好きで、いろいろなところへ連れていってくれました。こうした思い出の数々が、彼を観光学へと誘ったのです。

旅とバリアフリーを思う日々。

エコツーリズムや、医療ツーリズムなども含め、現在は、観光について、多角的な視点から学んでいるという藤田さん。大学は実践的な学習に力をいれており、1年次には、マレーシアへの海外研修にも参加しました。リゾート ホテルのバックヤードを垣間見る経験も、現地では得ました。

「今度、学校で行く予定の国内旅行研修に参加予定ですが、そこでもユニバーサル ツーリズムをテーマに、という話が持ち上がっています」。

同キャンパスに かよう 学生で、障害があるのは彼、ただひとり。障害学生第1号です。

町並みに古い名残が見られる鴨川は歩道が狭く、電動車椅子では車道側に脱輪してしまうこともしばしば。最初は怖い思いもしましたが、「今は慣れました」と笑います。「大学側も『授業の面でも、対応できるところはします』とおっしゃってくれて、心強いです。また、バス会社の配慮にも本当に感動しました」。

大学からの相談を受けた、地元の鴨川日東バスはふたつ返事で、藤田さんの通学路線を全車、ユニバーサルデザイン車に変更してくださったそうです。

旅する楽しみを誰にでも。

資格取得の勉強や、語学のレッスンなどで、プライベートも忙しい藤田さんですが、この夏、友だちと一大プロジェクトを成功させました。日本の渚百選にも名を連ねる、市内の前原海岸に、砂浜用の特殊な車椅子を設置する計画です。鴨川チャレンジと銘打ち、必要な資金をクラウド ファンディングで募りました。結果は見事、目標の50万円をクリア。8月1日には市役所に赴き、寄贈式も済ませました。

「ユニバーサル ツーリズムを推進していきたいので、さらに勉強を進めて、全国に点在する、バリア フリー ツーリズム センターなども訪問し、その裾野を、まずは学内に広げたいです。そして、社会へ出たら、誰もが楽しめる旅行を提案していきたいと思っています」。

藤田さんの夢には、行く手を阻むバリアはありません。

路線バスとして、安房鴨川駅から、城西国際大学を走る鴨川日東バス。藤田さんの乗降は、一般の乗客の一番最後。乗り降りには、ドライバーさんがいつもサポートしてくださるそうです。

観光学部の同級生と情報交換。藤田さんのスーツ姿にビックリしていました。

取材日は、エコ ツーリズムのレポート提出日でした。岩本英和助教に手渡す藤田さん。

車椅子の藤田さんに見えるように大学も配慮し、掲示物を低い位置に貼り出しています。

奨学生のキャンパスにお伺いして、贈呈式をおこないました。

池田ブライアン雅貴さん。慶應義塾大学 総合政策学部総合政策学科。

名取絵里さん。龍谷大学、国際文化学部国際文化学科。

油田優衣さん。京都大学、教育学部教育学科。

坂井法仁さん。九州大学、理学部物理学科。

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