師走の恒例となった、ヤマト福祉財団小倉昌男賞の贈呈式が、12月9日に執りおこなわれました。
本年度の受賞者は、大阪府守口市の、有限会社奥進システム代表取締役の奥脇 学さん。そして、岡山県岡山市の、社会福祉法人岡山ライトハウス理事長の竹内昌彦さんです。
IT で体調の見える化に成功。
おふたりのご功績を、冒頭に挨拶された瀬戸薫理事長は、「奥脇 学さんは、 IT の会社を経営されて、従業員のうち8割が障害のあるかたです。重度のかたもいらっしゃいますが、在宅勤務などいろいろな働きかたを考えて残業ゼロを堅持されています。
また、精神障害のかたもいらっしゃいますが、体調管理を始めとする日常的なケアや周囲のかたの理解が非常に大切で、 IT 企業らしくきちんとデータベース化して分析し、みんなで支援をしていくという取り組みを進めている点に注目しました。そしてその精神障害者雇用の経験を踏まえ、 SPIS という就労支援システムを開発されました。50ぐらいの障害者施設がこれまでに利用されて、その貢献度は非常に高いと思います。この先も IT を駆使して、障害者の支援をしてくれることと期待も込めまして、贈呈したいと思いました」と賛辞を贈りました。
中央アジアの障害者の 脱貧困 に貢献。
そして、竹内昌彦さんについては、「幼少のころ目を悪くされて、小学生のとき完全に失明。それからの苦労は大変なものだったと思います。いじめもはねのけ強くたくましく生きてこられた。そして、地元、岡山でずっと盲学校の教師をなさってきました。全国をまたいで講演活動もされていて、いじめや自殺の問題をテーマに中学生、高校生らに、強く生きる こと、ひとりで生きているわけではない、ということをしっかり教え、生きるための希望や決意を与えてくださっています」と紹介しました。
そして、称賛に値することとして、「講演の謝金を貯めて、モンゴル国で視覚障害者のための職業訓練学校を設立。つぎは、キルギス共和国でも学校を作り、さらに今度は白内障の子どもたちの手術費用を支援しています」と中央アジアの視覚障害者の職業能力開発と脱貧困への功績を讃えました。
選考委員を代表して今野由梨さんは、財団創設者である小倉昌男 初代理事長と今も同じ思いで選考委員を務めていると語り、「苦労して開発なさったノウハウはベンチャーにとって財産。軽々に人手に渡さないというのが通念ですが、ひとりでも多くの人に幸せになってもらおうと奥脇さんは全部公開されています。これにはショックを受けました。また竹内さんの、キルギス、モンゴルにまで愛の手を届けるパワーに圧倒されています」と選定理由を補足しました。
日本の福祉発展の推進力に。
まず、おふたり、それぞれの推薦者から受賞者紹介のスピーチをいただきました。その後、瀬戸理事長より雨宮 淳氏作のブロンズ像、愛 が正賞として、また賞金100万円が副賞として贈られるとともに、ご苦労を分かち合ってこられた令夫人には花束が手渡されました。
今年の贈呈式では、おふたりのご来賓から祝辞をいただきました。厚生労働省 社会、援護局障害保健福祉部 企画課長の朝川智昭さんは、障害保健福祉部長の祝辞を代読。「現在の障害福祉は、みなさまがたのたゆみないご尽力により築かれてきたものであり、そのおひとりおひとりの力が、日本の福祉のさらなる発展のための推進力でもあります」と受賞者のみならず全国の福祉活動家を慰労するものでした。
消費者庁顧問、板東久美子さんは、「私は視覚障害者のかたのランニングの練習や試合で、伴走をさせていただいています。今回は、岡山ゆかりの竹内様がまさに視覚障害者としてご活躍され、私自身岡山出身でございます。今年は障害者差別解消法も施行され、新しいステージに進んだと考えます。受賞者のかたがたの今まで積み上げられてきた活動、ご活躍に光をあて社会全体に大きな刺激を与えていくことが、非常に重要であると思います」と、裾野の広がりに期待を寄せました。
贈呈式は受賞者両名のスピーチを最後に、今年も閉幕となりました。
「奥進システムの理念は『私たちと、私たちに関わる人たちが、とてもしあわせと思える社会づくりをめざします』。これを少人数ながらきちんと実践していることに非常に感銘を受けました」。奥脇さんを推薦した株式会社ダイキンサンライズ摂津、顧問の應武義郎さん。
「竹内昌彦という人を3分、5分で紹介することは逆に難しい。先生の夢を叶えるために、支援者も一丸となってがんばっていきたい」。 竹内さんを推薦した飛鳥グループ協同組合、専務理事の谷口真吾さん。
「『僕が内閣総理大臣賞をもらったときよりも嬉しいよ』と應武さんが仰ってくださって、本当に有り難いと思った」と声を震わせた奥脇学さん。
厚生労働省 社会、援護局 障害保健福祉部 企画課長の朝川智昭さん。
消費者庁 前長官で消費者庁顧問の板東久美子さん。
「全国からすごいかたがたの名乗りに圧倒されっぱなし。侃々諤々の議論を経て満場一致で選びました」。選考委員を代表して、今野由梨さん。
「理事長が読み上げる賞状に涙が出そうでした。私のことを丁寧に調査し、思って、この人に賞を与えるよとちゃんと記してある」。この賞状は簡単には仕舞えないと竹内昌彦さん。