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私たちの賛助会費が活かされています。障害者給料増額支援助成金。助成先レポート Vol. 28.

事業をひとつに絞り込む勇気。

多くの作業所と同じく、ワークセンターフレンズ星崎も障害者の進路を確保する目的で1995年に発足しました。スタッフは福祉を志す大学生が中心、借家の木造民家に利用者2人からのスタートでした。以来20年余、ひたむきな創意工夫と挑戦でついに、月給5万円に王手です。

社会福祉法人ゆたか福祉会、ワークセンターフレンズ星崎。愛知県名古屋市。

流れを止めずに DM の重量チェック。

中身を詰めた封筒を、右側の口からテンポ良く投入すると、スーッと流れながら、自動重量検査機が、封筒の重さを瞬く間にチェックしていきます。検査を終えた封筒はそのままベルトコンベア上を流れ、封を自動で閉じてくれる、封かん機へ送られます。

ワークセンターフレンズ星崎は、メールの発送代行業1本で給料5万円を目指す都市型の作業所です。目標達成を強力に援護する新兵器として自動重量検査機を昨秋、導入しました。長3から角2サイズまでに対応し、角2でも毎時3600通の処理が可能です。その整備費に財団の助成を活用しました。

DM の発送代行業務は、いくつもの工程から成り立っていますが、封かん前に欠かせない作業が検品です。一通一通、重さを量って内容物の過不足を確認します。

「これまで使っていた秤は手動で、正しく計測するのにしっかり2秒待つ必要がありました。でも、大量の封筒がラインに流れる中、集中力を切らさずに安定して作業しつづけるのは大変なこと。任せられる利用者さんは2人しか育ちませんでした」と、副所長の稲垣伸治さんは悩みだった事情を明かします。

自動重量検査機の導入で人員配置も見直し、2点封入なら以前は1日6000通が限界だったものが、現在では約2.5倍にまで生産量が伸びました。この新しい機械には利用者さんも興味津々。各自の目標を達成したかたから、「挑戦してみようか」という具合に、新しい機械に触れるチャンスを設けることで、「目標を持って仕事をする、そんな意欲にもつなげることができた」といいます。

やりかた次第で障害者だって稼げる。

作業所の発足当時から関わる山崎利浩所長は、かつてを振り返り、「箱折りや、軍手の選別作業、そして DM 封入作業といった下請けを中心に、経済活動よりは生き甲斐に軸足を置いていました」と語ります。

しかし次第に人が増えてくると、各利用者のニーズに沿った事業の再編ができないかと考えるように。そこで、「重度の人も参加でき、投資もそれほど必要としない事業の柱を探して、全国何ヵ所かの先行事例を見て回りました」。およそ15年前のことです。

視察をとおして、一際、強く印象に残った事業がありました。東京の小規模作業所チャレンジャーがおこなう DM 発送代行事業でした。

「うちと同じ障害程度の人たちが6万、7万と稼いでいる。衝撃でした。励まされた感じがしたんです。やりかた次第でできるんだと」。

仕事の質を上げ、直請けを獲得。

以来、他の下請けを少しずつ断り、 DM 発送代行業務に事業を絞ってきました。2010年から3年間は当財団、働くちから革新塾(第1期新堂塾)にも参加。チャレンジャーの施設長で、革新塾の塾長である新堂薫さんからも指導を受け、動作経済の原則やライン工程方式などを学び、トライ & エラーを重ねつつも作業の質と効率のアップに努めてきました。

「直請けの仕事を取れるようになったのがターニングポイント」と語るのは、途中から手を上げて、生活介護スタッフから営業専門職員にスイッチした山田大輔さん。直請けの比率を上げていくことで、忙しさを変えずとも売り上げを伸ばせる確信を得たと言います。

「直請けと下請けの比率は、売り上げベースでまだ半々ですが、ヤマト運輸さんの2主管支店と、契約をいただきました。恩返しのつもりで一所懸命こなしたいと思っています」。現在すでに給料は4万円台後半。目標の5万円は春先にも実現できそう。

しかし、「これまで学んだことを、次はゆたか福祉会内で共有していきたい」。そう語る山崎さんの言葉には、5万円は通過点に過ぎない。そんな思いを感じました。

流れるように重量を量り、設定値以外の封書を弾く自動重量検査機。手前は封かんされた完成品。

自動重量検査機へ封書を投入。

丁合作業のための治具。作業効率を上げるための用具をさまざまに自主製作している。

「新堂塾を修了した辺りから、現場作りと仕事の獲得、生産設備がちょうど揃いだしたころに、着実に数字が伸び始めました」と山崎所長。

「 DM のいいところは、クライアントが変わっても工程は変わらないということ。利用者さんは習熟しやすい」と新堂塾塾生の稲垣副所長。

職員、利用者さんの仕事に対する本気度を見て、自ら営業職に手を上げたという主任の山田大輔さん。

全員揃いの作業着を着て、仕事モードに。

給料5万円に向かって。

新堂塾長も取材に同行。

労働組合支部執行委員長、助成先訪問 Series 23。

ヤマト運輸労働組合、名古屋支部執行委員長、柴田 育史さん。

いただいた元気に、私たちはどう応えるのか。

こちらにお邪魔するのは3度目ですが、ここに来ると毎回、元気をもらえます。働いているみなさんを見ると、自分がもっと頑張らなきゃって。そして福祉を生業とする人たちの志の高さ、そういうのを感じてすごくうらやましくなります。

逆にヤマト運輸の社員は何ができるのかと思うと本当にカンパぐらい。あとはスワンのケーキいっぱい買おうねとか。そういうことぐらいしかできなくて。もらった以上のものを、世の中へいかにお返しできるのか。小倉イズムというものを我々、組合は大事にしていかなければいけないと思っています。

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