流れを止めずに DM の重量チェック。
中身を詰めた封筒を、右側の口からテンポ良く投入すると、スーッと流れながら、自動重量検査機が、封筒の重さを瞬く間にチェックしていきます。検査を終えた封筒はそのままベルトコンベア上を流れ、封を自動で閉じてくれる、封かん機へ送られます。
ワークセンターフレンズ星崎は、メールの発送代行業1本で給料5万円を目指す都市型の作業所です。目標達成を強力に援護する新兵器として自動重量検査機を昨秋、導入しました。長3から角2サイズまでに対応し、角2でも毎時3600通の処理が可能です。その整備費に財団の助成を活用しました。
DM の発送代行業務は、いくつもの工程から成り立っていますが、封かん前に欠かせない作業が検品です。一通一通、重さを量って内容物の過不足を確認します。
「これまで使っていた秤は手動で、正しく計測するのにしっかり2秒待つ必要がありました。でも、大量の封筒がラインに流れる中、集中力を切らさずに安定して作業しつづけるのは大変なこと。任せられる利用者さんは2人しか育ちませんでした」と、副所長の稲垣伸治さんは悩みだった事情を明かします。
自動重量検査機の導入で人員配置も見直し、2点封入なら以前は1日6000通が限界だったものが、現在では約2.5倍にまで生産量が伸びました。この新しい機械には利用者さんも興味津々。各自の目標を達成したかたから、「挑戦してみようか」という具合に、新しい機械に触れるチャンスを設けることで、「目標を持って仕事をする、そんな意欲にもつなげることができた」といいます。
やりかた次第で障害者だって稼げる。
作業所の発足当時から関わる山崎利浩所長は、かつてを振り返り、「箱折りや、軍手の選別作業、そして DM 封入作業といった下請けを中心に、経済活動よりは生き甲斐に軸足を置いていました」と語ります。
しかし次第に人が増えてくると、各利用者のニーズに沿った事業の再編ができないかと考えるように。そこで、「重度の人も参加でき、投資もそれほど必要としない事業の柱を探して、全国何ヵ所かの先行事例を見て回りました」。およそ15年前のことです。
視察をとおして、一際、強く印象に残った事業がありました。東京の小規模作業所チャレンジャーがおこなう DM 発送代行事業でした。
「うちと同じ障害程度の人たちが6万、7万と稼いでいる。衝撃でした。励まされた感じがしたんです。やりかた次第でできるんだと」。
仕事の質を上げ、直請けを獲得。
以来、他の下請けを少しずつ断り、 DM 発送代行業務に事業を絞ってきました。2010年から3年間は当財団、働くちから革新塾(第1期新堂塾)にも参加。チャレンジャーの施設長で、革新塾の塾長である新堂薫さんからも指導を受け、動作経済の原則やライン工程方式などを学び、トライ & エラーを重ねつつも作業の質と効率のアップに努めてきました。
「直請けの仕事を取れるようになったのがターニングポイント」と語るのは、途中から手を上げて、生活介護スタッフから営業専門職員にスイッチした山田大輔さん。直請けの比率を上げていくことで、忙しさを変えずとも売り上げを伸ばせる確信を得たと言います。
「直請けと下請けの比率は、売り上げベースでまだ半々ですが、ヤマト運輸さんの2主管支店と、契約をいただきました。恩返しのつもりで一所懸命こなしたいと思っています」。現在すでに給料は4万円台後半。目標の5万円は春先にも実現できそう。
しかし、「これまで学んだことを、次はゆたか福祉会内で共有していきたい」。そう語る山崎さんの言葉には、5万円は通過点に過ぎない。そんな思いを感じました。