障害者サポートセンター あらた の母体となるのは NPO 法人 あらた。この NPO 法人は、障害者のための就労移行支援事業所、ジョブセンター あらた も運営しています。齋藤緑代表理事は、「ジョブセンターでの就労支援の訓練期間は2年。その後に利用者さんが働ける仕事を探していた時、ヤマト運輸の DM 便配達に出会いました」と話します。サポートセンター あらた の利用者さんとともに DM 便配達をスタートしたのは、2016年7月。今では4名のメイトさんが交代で配達を担当しています。
全員が自分の地図に、すべての配達先をマーク。
毎朝、ヤマト運輸のドライバーが届けた DM 便を、その日、担当するメイトさんが全員で、住所別に分類。職員の大滝由佳さんと、高橋ひとみさんが、一冊一冊、ゆっくりと配達先の住所と名前を読み上げます。すると、全員がそれぞれの地図にその日の配達先をマーク。そうすることで、配達しない地域のことも覚えることができます。職員が配達のルートを決め、 DM 便を配達順に並び替えて、仕分けは完了。配達総数を数え直して最終確認をします。最後にメイトさんが大きな声でジャンケンポン。組み合わせを決めたら、ふたてに別れて出発です。
歩くことで体も心も元気に。
齋藤代表理事は、「とにかく歩くことが人間の基本。歩くことができれば、体も心も元気に明るくなっていきます。大切なのは歩くことと、社会と交わること。 DM 便配達は自立支援にまさにぴったりの仕事ですね」と話します。
メイトさんの大瀧洋さんは歩くことがとにかく苦手で、体も弱かったそうです。 DM 便配達を始めてから5ヶ月。ついて歩くのがやっとだった開始当時の姿が信じられないほど、速く長くしっかりと歩くことができるようになりました。メイトさんの佐藤朋さんは体重が少し減って、笑顔がいっそう明るくなり、リーダー意識も芽生えています。
異業種に転職してきた職員だから言える言葉。
DM 便を担当する職員の大滝さんと高橋さんは、異業種からの転職組。福祉施設で働くのは初めてです。ある日、仕事を休もうとするメイトさんに、「これは代表理事からあなたが任された仕事。それなのに投げ出していいの」と声をかけたことがありました。すると齋藤代表理事から、「そういうふうに、普通の感覚で接して欲しい」と言われたそうです。
「福祉を学んだ専門職の人は、その人の病気や悩みからの対処を考えがち。一般の社会人としての感覚で、働くとは何かを教えて欲しいと思っています」と齋藤代表理事は話します。
ひとりひとりの良さを、さらに良い方向へ。
メイトさんの渡部千代子さんは、次はどこの家、と配達先に興味を持つことが増えました。道ばたや家の庭先にきれいに咲く花の存在に気づいて、歩くことが楽しみに。メイトさんの足立樹さんは、地図を確認して間違えないように配達することを心がけています。耳が不自由で話すことが苦手だったそうですが、 DM 便の仕事をしてから声を発する機会が増えたとのこと。2人で組んで仕事をするのが楽しいと微笑みます。
もっと寄り添って長く付き合えるパートナーに。
ヤマト運輸山形主管支店 山形サービスセンター 増川一郎センター長は、「すばらしい仕事ぶりに感謝しています。ヤマト運輸としても、パートナーとして長いお付き合いができるようにサポートしたい」と語ります。
ヤマト運輸山形主管支店 酒田支店 酒田大宮センター 伊藤貴徳センター長は、「 DM 便スタートの際は、一緒に配達しながらこの地域を歩きました。わからないことはどんどん聞いてくるなど積極的ですし、今ではすっかり安心して任せています。これからも寄り添って、いい関係を保ちたい」と話します。
ヤマト運輸山形主管支店 酒田支店 鈴木貴志支店長は、「酒田の冬は、雪は積もりませんが、風が強くてホワイトアウトになるほど吹雪く日があります。これからの配達は大変。体調と事故に気をつけて業務を続けて欲しい」と結びました。
あらた は、新しい、と、改める の2つの意味があるそうです。
ヤマト運輸のユニフォームを着ると、シャキッと仕事モードに切り替わるというメイトさんたち。いろいろと工夫し、改めながら、今日も元気にまちの中へ。新しい一歩を踏み出しています。