東京都東村山市は、東京のベッドタウン。駅の周りには大きな集合住宅が立ち並んでいます。社会福祉法人小さい共同体、飛翔クラブは、駅周辺の住宅街と少し離れたエリアの DM 便配達を担当。5人のメイトさんと職員が、自転車を使って配達しています。午前と午後、それぞれ2、3人がチームを組んで、自転車で出かけます。
メイトさんに合う人の基準をつくった。
クロネコメール便(後に DM 便)事業をスタートしたのは、2012年5月。最初に、どんな人がこの仕事に適任なのかと考えて、いくつかの基準をつくったそうです。交通ルールが守れること、職員の指示に従って行動できることなどの基本条件と、身だしなみがきちんとしていること、遅刻しないこと、お客様や街のみなさんに挨拶やお礼が言えることなど、できたほうがよいことをリストアップ。利用者さんの体力なども考慮しながら、ふさわしい人に担当してもらったといいます。
飛翔クラブの太田民子施設長は、「今担当しているメイトさんは、この基準に合うかたばかりです。皆さん、とても真面目で意欲的です」と話します。
配達はいつも同じルートで。
朝、2人のメイトさんがヤマト運輸のセンターで DM 便を受け取り、飛翔クラブへ運びます。そこから2グループに分かれて仕分けがスタート。駅周辺のエリアは、松澤綾さんをリーダーとするグループが担当。もう1つのエリアは、腰を痛めてから仕分け専任となっている赤川究さんが1人でおこないます。
まず、テーブルに番地が書かれたカードを並べ、そこに DM 便を分類。その後、クリアファイルに挟んだ地図の上に配達先をマークします。次に、松澤さんと赤川さんが番地ごとに山積みされた DM 便を、次々と配達順に揃えていきます。
配達先によって毎日ルートを変えるやりかたもありますが、飛翔クラブでは毎日、ほぼ同じ道順で配達。ルートが決まっていると、新しく はいった人が覚えやすいというメリットがあります。
赤川さんは話します。「当初は、まず、 DM 便を番地順に並べてから、その後配達ルートに沿って並べ替えていました。しかし、ルートを覚えて、最初から配達順に並べていくようにすると、仕分け時間が一気に短縮。これは私にとっては大きな進歩で、自信となりました」。
松澤さんは、「以前は地図を見るのが苦手でしたが、今では好きになりました。地図はほぼ頭に はいっています。ただ最近担当し始めた地域は、まだ完全に把握できていないので、間違えないように、しっかりと確認しながらやっています」と語ります。
仕分けスタートから40分も過ぎた頃、「休憩します」という松澤さんの声が響きました。
自転車で一列に、ルールを守って慎重に。
配達時に自転車で先頭を走るのは松澤綾さん。案内係です。2番手の伊吹信介さんは端末操作係。3番手の桐谷国博さんは投函係。最後に、DM 便を確認しながら手渡す職員の氏家清さんが続きます。松澤さんは配達先が近づくと左手を上げて、止まる合図をします。自転車を降りてからも、歩道を歩く通行人や行き交う車に全員で配慮し、「車が来るよ」、「気をつけて」と声を掛け合います。
自転車を停めると、桐谷さんが DM 便を持ち、伊吹さんと2人でポストへ。伊吹さんが端末を操作した後、2人で配達先の住所や名前を確認して投函。お互いにチェックをし合うことが、ミスをなくすことに繋がっています。
風の強い日などは置いた自転車が倒れないように、待機する2人が気をつけます。曲がりくねった道が多く、高齢者と自転車も多い街。今日もルールを守って自転車での配達が続いています。
長く続けて他の施設のお手本に。
ヤマト運輸東村山西支店 田村大亮支店長は、「丁寧に仕事をしていて、誤配はほぼありません。もっと交流して、関係を深めていきたい」と話します。
ヤマト運輸埼京主管支店 サービスセンター 山崎秀勝センター長は、「1時間に約50冊というペースで配達していることに驚きます。とてもスピーディーでいながらサービスレベルが高いのは、本当にすばらしい。頭が下がる思いです」と語ります。
ヤマト運輸埼京主管支店 人材育成課 長部久美子課長は、「他の施設から、飛翔クラブさんを見学したい、という申し出があります。難しい仕事をしっかりやってくださっていることに感謝します。皆さんのお手本として長く続けてほしい」と結びました。
ヤマト運輸のドライバーだけでなく、郵便局員や他の運送業者を街で見かけると、「あ、同業者がいる」と思うという飛翔クラブのメイトさんたち。プロ意識と責任感を日々高めながら、今日も元気に街の中へ自転車を漕ぎだします。
向かって右から、松澤綾さん「お金を貯めて、いつか家族で旅行したい」。伊吹信介さん「お客様の気持ちになって DM 便を丁寧に扱っています」。桐谷国博さん「飾り文字で書かれたポストの名前は間違えないように気をつけています」。職員の氏家清さんは、いつもノートに転居などの情報をまとめているそうです。
先頭から、案内係の松澤綾さん、端末操作係の伊吹信介さん、投函係の桐谷国博さん、職員の氏家清さん。配達先に近づくと松澤さんが左手を上げて合図をします。
DM 便を配達順に並べ替える、仕分け専任の赤川究さん。
伊吹さんが端末を操作し、桐谷さんとふたりでしっかりと住所と名前を確認してから投函します。
「今後は仕分けもできるようになって、みんなの役に立ちたい」と伊吹信介さん。
配達先にお客様がいる場合は、必ず手渡しをします。「ごくろうさん」と声をかけてもらい、嬉しそうな桐谷国博さん。
社会福祉法人小さい共同体、飛翔クラブの太田民子施設長。看護師というキャリアから、利用者さんひとりひとりの能力や体力を観察しています。そして、それぞれが個性に合った仕事を選べるように、多様な業務を取り いれているそうです。「 DM 便配達で責任感が高まり、体力もついて、配達以外の日も休まなくなりました。チーム意識もあり、みんなとても仲がいいんですよ。このまま社会に出て働けるように支援していきたい」。
前列左から、メイトさんの赤川究さん、伊吹信介さん、松澤綾さん、桐谷国博さん。後列左から、ヤマト福祉財団東京支部 小林美欧事務長、飛翔クラブ職員 氏家清さん、飛翔クラブ 太田民子施設長、ヤマト運輸埼京主管支店 サービスセンター 山崎秀勝センター長、ヤマト運輸埼京主管支店人材育成課 長部久美子課長、ヤマト運輸東村山西支店 田村大亮支店長。