このページと、以下のページは音声読み上げブラウザに最適化済みです。

平成29年度福祉助成事業、助成金贈呈式。

私たちにできること、私たちができること。

障害のあるかたがたの経済的自立を理念とする当財団では、いくつかの助成金事業に取り組んでいます。給料増額のための新規事業立ち上げや整備計画を応援するほか、夢を叶えるために大学へと進学した障害学生を支援しています。今年度の助成決定団体をお知らせするともに、皆さまの助け合いの気持ちが届いた、ひとコマをご紹介します。

ジャンプアップ助成金、贈呈式、特別座談会。

誰もが誰かを助けている。地域コミュニティを支えるのは障害者。

就労支援センター 陽なたぼっこ は、熊本県北東部の山あいの町、小国町で唯一の障害者施設です。去る4月27日、ヤマト運輸株式会社、熊本主管支店長、労組熊本支部 執行委員長も同席し、助成金の贈呈式がおこなわれました。陽なたぼっこが、この資金で計画するのは調理場の増築。しかし、それは、いち施設に留まらず、小国町全体にとっても意味を持つものでした。

高齢者の暮らしを支える作業所。

陽なたぼっこが A 型事業所を発足させたきっかけには、こちら、小国町の置かれている現状が深く関係しているそうですが。

奴留湯:ええ。ここ小国町と南小国町を合わせて小国郷と言うんですが、かつては林業で栄えた山間地域です。しかし、現在、小国町の人口は7400人ほど。少子高齢化が著しく、人口の減少に歯止めがかかりません。65歳以上の高齢者は町民の37パーセントをすでに超えています。そのあおりを受けて、地域に根ざした地場産業や小規模店舗のほとんどが廃業を余儀なくされました。健常者でも働く場が足りない状況です。障害者はなおのこと、地域の中で居場所を失っていました。また、近くに店舗や弁当屋がなくなった結果、高齢者の多くが買い物弱者になりました。

この2つを解決するために、高齢者向け配食サービスをおこなう A 型事業所を立ち上げられたのが2014年ですね。

奴留湯:そうです。行政も配食サービスに取り組んでいましたが、予算が逼迫していたことから、1食につき自己負担200円、町の負担450円の弁当を、当時は30食かける週2回しか配っていませんでした。それで是非、仕事をしたい障害者と一緒に弁当事業を始めようと考えました。障害者には給料を、高齢者にとっては栄養面の支えとなることができるからです。当初は1日約70食からスタートした試みも、今では270食にもなりました。ただ、200食を超えると、現調理場はたいへん手狭で拡張せざるを得ない。それで、椋野施設長がヤマト福祉財団さんに助成を申し込みました。

熊澤:皆、いきいきと工夫されて、仕事をされている様子を調理場で拝見しましたけど、やはり200食を超えて作業するにはちょっと狭いですよね。しかも、まだまだ配食希望が増しているという話ですし。

渡邊:手作りのおかずが並んだ弁当が本当に美味しそうで、製造に機械化の進んだ大手の弁当とちがって、心がこもっている。受注が伸びるのもうなずけます。

熊澤:配達にも同行させていただきましたが、配達先のかたが笑顔で受け取って、「いつもひとりなんで」と漏らした言葉が印象的でした。地域に密着した 陽なたぼっこの活動に、お客様の意思も一緒に運ぶ精神でやっている、我々の仕事にも共通するものを感じ、うれしく思いましたし、我々も見習わなきゃいけないところが多々あるな、と。

渡邊:地域のかたが元気かどうか、見守りの役割も担っていらっしゃる。私たちのカンパを、是非、助成金という形で活用していただきたいと思いました。

20年先のモデルを見据えて。

立ち上げからこの3年間でどのようなご苦労がありましたか。

椋野:とにかく、ノウハウが皆無の状態で立ち上げましたので、機材だけは揃えましたけど、現場はかなり混乱したと思います。あるのは障害者の働く場を作りたい、ひとり暮らしの高齢者の栄養管理に寄与したい、という理念だけ。どのくらいの受注があるのかもまったく見えていませんでしたから。

坂田:料理するのも初めてでしたし、食材を注文、確保する方法も分かりませんでした。地元の野菜を使うことをコンセプトに掲げていたんですけど、何割まで地元野菜にするかで、まず、僕らは悩みました。どこかの八百屋さんに頼むと、地元野菜じゃなくなってしまう。かといって、地元だけでは最初はなかなか量も揃わない。今は直売所に相談に乗ってもらって調整できるようになりましたけど。認知症のかたとのやりとりも大丈夫かなと思ったんですけど、何か問題が発生したら、今は、ケアマネージャーさんに間に はいってもらう形で、見守りをやっています。

熊澤:我々としても、日本全国一般の公道を使って仕事をさせていただいていることを肝に銘じて、各地の行政と連携して見守りのお手伝いをさせていただいております。そこにあるのは商売云々という以前に、宅急便が41年前に始まって、これまでずっと地域に育てていただいた。その恩返しというと上から目線で嫌なんですけど、地域になくてはならない存在、愛される企業を目指していきたいという思いです。

渡邊:夏のカンパも去年で30年となりました。労組が中心となって、社員のみなさんから、交通遺児の支援を謳ってカンパを募ったのが始まりです。これまでの総額は約13億6000万円。毎年7000万円以上の善意があつまり、あしなが育英会と、ヤマト福祉財団に定期大会の場で寄付してきました。こうしたカンパや賛助会費が助成の財源となっており、是非、陽なたぼっこ さん のようなかたがたのところで、ヤマトグループ、17万人の善意を有効に生かしていただければと思います。

佐藤:調理場の拡張によって、当面の目標は1日300食の配食。そして、障害者雇用を15人まで増やし、給料も1万5000円ほど増やしたいと考えています。そして、社会で働く場所が欲しい、給料がもう少し欲しい、という立場を超えて、逆に地域をサポートする側に障害者が立つこの仕組みは、日本社会の20年先のモデルとなり得るはず。そう信じて邁進していきたいと思っています。

陽なたぼっこの小国町にお伺いして おこなわれた、29年度ジャンプアップ助成金の贈呈式。

左から、労働組合熊本支部 渡邊猛支部執行委員長、熊本主管支店 熊澤宏主管支店長、小国町社会福祉協議会 奴留湯哲宣会長、同 佐藤旨人事務局長、同 椋野正信統括施設長、陽なたぼっこ 坂田英之サービス管理責任者。

届けるのは、お弁当とコミュニケーション。見守りの役割も果たしている。配達に同行した熊澤主管支店長と渡邉支部執行委員長。

座談会 出席者。

  • 小国町社会福祉協議会、会長 奴留湯哲宣。
  • 小国町社会福祉協議会、事務局長 佐藤旨人。
  • 小国町社会福祉協議会、統括施設長 椋野正信。
  • 小国町社会福祉協議会、就労支援センター、陽なたぼっこ、サービス管理責任者 坂田英之。
  • ヤマト運輸株式会社熊本主管支店、主管支店長 熊澤 宏。
  • ヤマト運輸労働組合熊本支部、支部執行委員長 渡邊 猛。

就労支援センター 陽なたぼっこ:就労継続 A 、 B 型。就労移行。

調理場施設の拡張増築資金。

平成27年度平均給料、55,787円、13人。

平成30年度目標給料、66,944円、15人。

顕在化した地域のニーズにいかに応えるか。

2014年より、 A 型事業を開始。全くの未経験ながら、高齢者向け配食サービスに挑戦しています。3年で200食を目標にしていましたが、1年半で達成。むしろ弁当の受注を制限している状態です。しかし、ニーズに応えるには、手狭になった調理場の拡張が課題でした。就労希望の障害者をひとりでも多く受けいれ、お弁当が届くのを首を長くして待っている高齢者のためにも、資金の助成を待望していました。

公益財団法人 ヤマト福祉財団 トップページへ戻ります。
ヤマト福祉財団 NEWS の目次へ戻ります。