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2017年度 障害者の働く場パワーアップフォーラム。

経済的自立力を備えた、新しい福祉を目指して。

初の大試食会、農福連携の実践リーダーたちの招聘、 A 型事業所や重い障害のあるかたの未来も語り合う。

本年度のパワーアップフォーラムは、大阪、東京、金沢、福岡の4会場で開催しました。経済的自立力を備えた新しい福祉を目指して、をベースに、会場ごとにサブテーマを設定。障害のあるかたが生き甲斐を感じ働き続けられる仕事と職場、高い給料の実現に、福祉施設になにができるのかを、講演者とともに話し合いました。

見つけてほしいのは、前に進むための課題と解決の糸口。

本日を実りある1日としてください。

瀬戸理事長は、福祉施設が抱えるさまざまな問題解決に、独自の試みを実践し結果を出している講演者たちの話を聞き、良きモデルとして参考にしてほしいと主催者挨拶をおこないました。

毎年、パワーアップフォーラムでは、きょうされん専務理事の藤井克徳 氏に時流講座をおこなっていただいています。藤井 氏は、昨年、神奈川県のやまゆり園で起きた痛ましい事件にふれながら、現在、障害のあるかたたちを取り巻く行政のケアのありかた、障害者権利条約、就労問題などを解説しました。

約1万人の障害のあるかたを調査した結果、基礎年金、給料、親からの仕送りも入れた所得合算値は、100万円を切るかたが60パーセント以上もいました。これでは親元を離れ、地域で自立して生活することはできません。我々が求めているのは、特別な権利ではなく一般市民との平等性の実現です。そのひとつが、働きがいのある人間らしい仕事、イコール、ディーセントワークです。

各講師には、歴代の小倉昌男賞受賞者などを招聘し、会場ごとのサブテーマに合わせた講演を、事例報告者には、現場での生きた体験談などを報告いただきました。さらに、昨年に引き続き各会場の地元福祉施設で働く利用者さんが当事者の声を発表。4会場で全8名の利用者さんが登壇し、日々どのような気持ちで仕事に励んでいるか、今後の目標などを伝えました。

最後は、藤井 氏がコーディネータとなりシンポジウムを開催。来場者からのさまざまな質問にシンポジストたちが回答しました。

瀬戸理事長は、「みなさん、前に進むための課題と解決の糸口は見つかりましたか。世の中に役立つ仕事をしたいと願う利用者さんの気持ちに応えてあげてください」とエールを贈りました。

4会場すべてがほぼ満席になった今年のパワーアップフォーラム。全会場で約690人の参加者がありました。

ディーセントワークは、みんなが求める平等の権利、と、きょうされんの藤井専務理事。

社会に役立ちたいと願う利用者さんの気持ちに応える仕事を、と、瀬戸理事長。

当事者の声、働く本人からのメッセージ.

大阪会場.

社会福祉法人まいづる福祉会、ワークショップ ほのぼの屋、六田 宏さん.

「美味しかった、また来たい」と喜んでいただけるレストランサービスを 目指しています。いま時給は1000円で月給約17万円。結婚して子どもが3人、念願のマイホームも建てました。

社会福祉法人一麦会、けいじん舎、栗本 いさ子さん.

私の担当は、野菜を切ったりカレーに使うタマネギを炒めることです。食の仕事は、即生活に役立ちます。いまの仕事は、私に一番合っていますし、大好きです。

東京会場.

社会福祉法人はる、パイ焼き窯、たんぽぽさん.

ずっと妄想などに悩まされてきましたが、パイ焼き窯と出会い、救われました。私の担当はお菓子の包装。障害は違っても、みんな得意な分野で元気に明るく働いています。

社会福祉法人ときわ会、あさやけ作業所、山口 伸一さん.

あさやけに来て38年、担当する仕事が変わっても、できるようになると、それが自信になります。後輩の面倒も見ながら、身体を壊さないようにこれからも働いていきます。

金沢会場.

社会福祉法人一羊会 One memory、佐藤 紘徳さん.

水耕栽培の水管理が、僕の担当です。空になったタンクを満杯にするのに一日近くかかってしまうこともありますが、お客様に美味しいと食べてもらえて、うれしいです。

NPO 野の花、ゆうの丘、久水 貴仁さん.

肉厚3センチメートル直径8センチメートル以上ある高級原木シイタケを栽培しています。冬場の外作業はつらいですが、いまの収穫量は年間1トン前後。シイタケ農家に負けない生産量を目指しています。

福岡会場.

一般社団法人社会福祉支援協会 Be Friend 事業所、 A さん.

ちゃんぽんや弁当を販売するお店で、オーダーをとったり、料理の提供、弁当の配達もします。自分で働いてお金を得る喜びを感じながら、責任を持って日々働いています。

社会福祉法人柚子の木福祉会、レストランゆずのき、平野 智子さん.

毎日300食の弁当をつくる調理補助をします。楽しく仕事をすると、人とのつながりも良くなります。調理師免許を取って、たくさんのお客様の笑顔を見てみたいです。

大阪会場、マイドームおおさか。

食 で広がる障害のある人の働く場。

試食会もおこない食の事業の情報を共有。

7月7日の大阪会場は、サブテーマを 食 で広がる障害のある人の働く場とし、食品関係で事業展開する16施設が、自慢の商品を出店する大試食会も開催しました。

夢へのかけ橋 実践塾で弁当、配食サービスを指導する楠元塾長は、「お弁当、高齢者向け配食サービスに夢を託して」をテーマに講演。実際に提供するメニューなどを写真入りで解説しました。続いて同塾で製菓を柱に塾生を指導する亀井塾長が、試食会に出店した16施設を紹介。「利用者さんのためにも、出店施設は、企業秘密などなしで、来場者にどんどん情報を明かしてください」と伝えました。

パワーアップフォーラムで初の試みとなった試食会ですが、たくさん用意した商品も足りなくなるほどの盛況となりました。試食会後は、出店3施設が事例を報告。それぞれの地域性を活かし、利用者さんの能力を高めながら、いま食べてもらった商品をどのように製造しているかなどを説明しました。

夢へのかけ橋実践塾のふたりの塾長と試食会の出店施設をシンポジストに、食に関する事業での各人のノウハウなどを来場者に伝えました。

初の試みの大試食会。大盛況であっという間に売り切れのブースも続出しました。

社会福祉法人キャンバスの会、理事長、楠元 洋子 氏。

高齢者配食サービス、お弁当、レストラン、ふるさと納税の返礼品など、食には多くの可能性があり、事業の広がりとともに利用者さんの仕事も増えていきます。

NPO はまゆう作業所、理事長、深瀬 幸子 氏。

一番の売れ筋は、切り干し大根です。美味しくて安くて安全なものは喜ばれ、喜ばれるものは、繰り返し売れます。量産体制を整えることが、いまの課題です。

NPO 吉野コスモス会、うぃる工房、販売責任者、永仮 善久 氏。

施設の都合で商品をつくるのではなく、社会に求められる売れる商品を開発し、利用者さんに働く喜びを知ってもらう。そのために、私たちがいると思っています。

社会福祉法人亀岡福祉会、第三かめおか作業所、所長、日下部 育子 氏。

給料の高い低いは、利用者さんの働く意欲、人生も左右します。売り上げを伸ばせる食品づくりに、すべての利用者さんが携われる支援をみんなで目指しています。

試食会の出店施設:16施設。

社会福祉法人ひびき福祉会の亀井理事長は、「なぜその商品が事業の柱になっているのか。どこにこだわりつくっているのか」などを、軽快なトークで出店者たちから聞き出しながら紹介をおこないました。「試食の際は、味わうだけではなく、利用者さんの得になる情報も持ち帰ってください」と伝えました。

法人名出店商品
社会福祉法人キャンバスの会真空調理そうざい(野菜ポタージュ、椎茸のクリームソース、トマトソース)
社会福祉法人ひびき福祉会春巻、餃子、焼売
社会福祉法人慶光会蒜山焼きそば、麺類(蕎麦、うどん)
NPO 吉野コスモス会柿の葉ずし、炙りずしなど
社会福祉法人一麦会コロッケ、ジュース、和の菓ゼリー
NPO はまゆう作業所めはり寿司、切り干し大根
社会福祉法人聖徳園焼き菓子、コーヒー
社会福祉法人さつき福祉会炭酸せんべい
社会福祉法人つむぎ福祉会パン、焼き菓子
社会福祉法人修光学園洋菓子(焼き菓子)、紅茶(アイスティー)
社会福祉法人一峰会紀州五色バウム
社会福祉法人亀岡福祉会シフォンケーキ、あられ、ノンフライチップス
社会福祉法人橿原市手をつなぐ育成会グルテンフリーの焼き菓子、燻製煮玉子
社会福祉法人コスモス製菓(わらびもち、クッキー)
社会福祉法人京都いたはし学園パン、焼き菓子
スワンカフェ&ベーカリー大東店パン、焼き菓子

東京会場、全社協 灘尾ホール。

重い障害のある人の仕事づくり。

多様な仕事と個性に応じた支援。

7月21日、東京会場では、重い障害のある人の仕事づくり、をサブテーマに、4名のかたがそれぞれの取り組みなどを講演しました。

夢へのかけ橋実践塾の塾長でもある社会福祉法人はらから福祉会の武田 氏は、「障害が重いからと、その人にできる仕事を当事者ではなく関係者が勝手に決めて良いはずがない。それを支援することが、我々の使命です」と講演。 IT 企業を経営し、社員10人中8人の障害者を雇用する有限会社奥進システムの奥脇 氏は、「一緒に働きたいと思ったかたが、たまたま障害のあるかたでした。より働きやすい職場を整えるのは、経営者の務め。企業も福祉も同じです」と話しました。「障害が重くてもできることを増やし、好きなことを仕事にできれば、だれもが人生の主人公になれます」と社会福祉法人皆の郷の大畠 氏。社会福祉法人さくらんぼの会の倉品 氏は、「問題行動の根本を理解し、支援者みんなが意志を統一して支えていけば、それまでできなかった仕事もできるように変わります」と、ほぼ満席となった190名の来場者に語りかけました。

企業、福祉施設、さまざまな立場での取り組みや考えかたを講演。

社会福祉法人はらから福祉会、理事長、武田 元 氏。

工夫次第で障害の重い人も仕事に参加できます。

有限会社奥進システム、代表取締役、奥脇 学 氏。

企業は、福祉施設の支援力を見習うべきだと思います。

社会福祉法人皆の郷 川越いもの子作業所、所長、大畠 宗宏 氏。

利用者さんの、働けてうれしい、という声に応えたい。

社会福祉法人さくらんぼの会 おそうざいのさくらんぼ、係長、倉品 みや子 氏。

本人の気持ちを汲みながら、仕事の進めかたを改善します。

金沢会場、金沢流通会館。

農業と福祉の連携に取り組む、障害者の働く場。

栽培方法や販路を考え農福連携へ。

「お客様の声は宝の山。お客様を知る現場の提案がなければ、良いサービスはおこなえません」。瀬戸理事長の講演でスタートした8月25日の金沢会場。サブテーマは、農業と福祉の連携に取り組む 障害者の働く場です。

NPO ピアファームの林 氏は、「農業は自然と相談しながらおこなう大変な事業。楽しいからというだけでは、必ず失敗します」と農業をはじめる覚悟を問いかけました。

さらに、農福連携のリーダーたちが実践内容を報告。「地域とつながることで、6次産業化など新たな可能性も広がります」と社会福祉法人こころんの熊田 氏が体験を語りました。埼玉福興株式会社の新井 氏は、「障害のあるかたが、農業で働くための仕組みをつくることも必要」と説明。株式会社パーソナルアシスタント 青空の佐伯 氏は、無農薬、無肥料、無除草剤の自然栽培でつくるお米や野菜で高収益を生んでいます。「地域のかたに必要とされる農業は、ディーセントワークを実感できる仕事。私たちの力で日本を元気にしましょう」と呼びかけました。

果樹園、自然栽培、水耕栽培、直売所などで、利用者さんの給料増額を実現するリーダーたちの実践方法を農福連携のモデルに。

公益財団法人ヤマト福祉財団、理事長、瀬戸 薫。

戦わずして勝つために、新しい市場を見つけましょう。

NPO ピアファーム、理事長、林 博文 氏。

大事なのは、売れる商品を選び、どう販売するかです。

社会福祉法人こころん、常務理事、熊田 芳江 氏。

地元の食材を活かした新しい商品も開発しています。

埼玉福興株式会社、代表取締役、新井 利昌 氏。

農業は障害者に多様な働きかたを提供することができます。

株式会社パーソナルアシスタント青空、代表取締役、佐伯 康人 氏。

自然栽培をはじめる施設が、日本中に広がっています。

福岡会場、エルガーラホール。

就労継続支援 A 型事業所の未来。

利用者さんのための A 型事業所へ。

9月1日に開催した福岡会場のサブテーマは就労継続支援 A 型事業所(以下 A 型事業所)の未来。多くのかたが来場され、関心の高さを示しています。全 A ネットの顧問を務める岩田克彦 氏が、一般就労が難しい障害者に対して、 A 型事業所が果たす役割、について話しました。厚生労働省 社会 援護局の服部 剛係長は、最近、マスコミにも取り上げられた悪しき A 型事業所について解説。「それでも、私たちは障害者総合支援法に基づき、障害福祉サービスを継続できている施設を、正しく評価していきます」と伝えました。

逆風の中にある A 型事業所ですが、良い事例はたくさんあります。「一般就労を続けられなくなったかたに、働く喜びをもう一度味わってもらいたい」と株式会社ぱいおにあ未来サポートステーションの井上 靖統括施設長。社会福祉法人東康会の山田健二 氏は、「利用者さんの働く目的に合わせて就労支援と A 型の両輪で支えたい」と報告。合資会社ソルファコミュニティの代表 玉城 卓 氏は、「自然栽培も取り入れながら農福連携で仕事を拡大中です」と話しました。

脚注:全 A ネットとは、NPO 就労継続支援 A 型事業所全国協議会は、障害者の就労を支援する企業や福祉施設、 NPO 法人による全国組織です。障害者が雇用契約を締結して働く A 型事業所の、あるべき姿、の情報交換と論議をおこない、政策提言につなげようとしています。

A 型事業所が抱える問題点などを共有。現場の声も参考に、解決の糸口を考えていきました。

中間的就労分野における基本的課題と A 型事業の可能性研究会、座長、岩田 克彦 氏。

利用者さんのために、良い A 型事業所が増えてほしい。

厚生労働省 社会 援護局、障害保健福祉部 障害福祉課 就労支援係、係長、服部 剛 氏。

頑張っているところを評価する報酬改定を考えています。

株式会社ぱいおにあ未来サポートステーション、統括施設長、井上 靖 氏。

仕事を楽しく、自分らしく継続できるのが A 型です。

社会福祉法人東康会 就労継続支援 A 型事業ねんりん、施設長、山田 健二 氏。

溶接技術などのスキルも身に付けられる環境です。

合資会社ソルファコミュニティ、代表、玉城 卓 氏。

沖縄から全国へ、ネットワークをさらに広げます。

はたらく NIPPON 計画、 A 型フォーラム in 福岡、いい A 型のありかたを考える。

主催: NPO 就労継続支援 A 型事業所全国協議会(全 A ネット)。

翌9月2日には、全 A ネット主催によるフォーラムが開かれ、三つの分科会で意見交換がおこなわれました。

分科会1、ネットワークの必要性とメリット、では、現場が動きやすい環境をつくることで施設内外でのネットワークを構築でき、新しいアイデアも生まれるなどの意見が出ました。分科会2、生産性を高めるポイントと企業との結びつき、では、事業の異なる4施設が、利用者さんの働く仕組みや仕事を創出する着眼点などを報告。分科会3、 A 型事業所の利用者サービスの質を高めるために、では、最賃を保障しながら職員の負担を考え、どう実践しているのかを3施設が発表しました。

分科会のあとは、全体ディスカッションを開き、悪しき A 型と呼ばれる事業所が生まれた背景などの情報を共有。きちんと雇用契約を結び、最低賃金以上を払い、保険にも はいり、税金も払う A 型事業所は、社会にとっても利用者さんにとっても良いシステムである。この全 A ネットの基本方針を改めて確認し、最後には全員で、悪しき A 型事業所は認めない、と大会宣言をしました。

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