新ブランド野菜にすべてをかける。
アルギットにら ってご存じですか。葉肉が厚く、しっかりとした甘みがあり、日持ちも長いのが特徴で、富山県の新ブランド野菜として目下売り出し中のニラです。でも、そもそもアルギットって何ですか。
答えてくださったのは、就労支援事業所ハーベストの主任、坂田俊久さん。ハーベストはアルギットにらに特化した農生産でがっちり稼ぐことを目指す、2014年4月に設立されたばかりの事業所です。
アルギットは、ノルウェー沖で採れる天然の海藻でミネラルを多く含み、これを元にした肥料で育てたニラが、アルギットにらです。
ニラ栽培の1サイクルは3年。アルギット肥料を畑にまき定植、植えた年は刈り取って管理をするだけ。収穫は2、3年目です。富山の場合、6から10月が出荷シーズンで、この間に4から5回の収穫ができます。
借り受けた耕作放棄地は全部で1ヘクタールありますが、出荷できるのは一昨年に植えた10アールと昨年に植えた40アールの田んぼから。今年植えた50アールの収穫は来年以降です。
アルギットにらに商品を絞り込んだ経緯を伺いました。
ここを立ち上げる2年前に、もうひとつ別の事業所を開所しているんですけど、そこでは多品目、手作業中心の農業を手がけました。しかし、安定した成果を出すことが難しく、給料を向上させるには、大規模化を図って収益性の高い農業を狙うしかないという話になりました。そうして発足させたのが、ここハーベストです。
せっかくの機械化もまだ発展途上。
そんな坂田さんたちのもとに、ニラの出荷作業を手伝ってほしいとの依頼が飛び込んできたのは、利益率の高い品目をちょうど探していた折。アルギットにらとの出会いです。
すごく需要が伸びていて、県の推奨品目になったところだったんです。 JA 全農 とやま による最低価格保証があり、市場価格が下落しても一定の収益が見込めるのは魅力的でした。
とはいえ、素人集団がひとつひとつ学びながらスタートの3年。当初の目論見通りにいかないことが多々あるようです。
ニラの出荷作業には洗浄、計量、包装の3工程を要します。刈り取ったニラの泥を水で洗い、下葉や薄皮といった部分をきれいに取り除く そぐり 作業を済ませたら、計量器で規格重量ごとに輪ゴムでとめ、袋詰めをして完成です。その手間は相当なもので、熟練者でもひとりで30束作るのに1時間はかかります。
この厄介な作業を、坂田さんたちは機械化で乗り切る計画を立てました。当財団の助成を利用し、洗浄そぐり機、結束包装機を昨年6月に整備、ラインを組みました。
機械を導入して、効率は2倍以上です。手応えはありますが、まだ機械のレベルに私たちが追いついていないのが現状です。
というのも、収穫したニラの質にばらつきがあり、品質の良くないもの、葉が黄色いものが混じっています。刈り取ってそのまま洗浄そぐり機にかけると、検品で9割くらい廃棄しなければならない時もありました。
農業で稼ぎつづける、を証明したい。
工程の順番を変えるなど工夫し、歩留まりを上げてきましたが、それでも、まだ A 品は60から70パーセント。
「耕作放棄地に、いくらいい肥料を入れても、土が馴染むまで生育にムラが出るのは仕方ないと聞いています。それでも5年以内には」と坂田さん。そぐり工程を経て製品化することで、当初の計画には及びませんが、収量が月6トン、今年度の売り上げも600万円を見込んでいます。
僕らが目指すのは、継続的な収益が期待できる、障害を持ったかたの農業モデルを確立することです。全国のかたには『アルギットにらっておいしいね』って言ってもらえるよう、その一翼を担える生産者に、ちょっと大きく出ましたが早くなりたいですね。
色つやが良く、肉厚なアルギットにら。
この日はあいにく台風5号が本州上陸。それでも市場が開いている限り、収穫はノンストップ。刈り取るとまたそこから生えてくるので毎月1回は収穫できる。
主任の坂田俊久さん。
1箱50束入りで出荷。
海藻アルギット。ニラを植える初年度に3年分をまとめてまく。値段も高めなので初年度の出費は大きい。
泥落としと根元のカットは、洗浄そぐり機でおこない、左奥で計量して包装機で袋詰めして完成。
歩留まり改善のために、現在は洗浄そぐり機にかける前に、ハカマ取りをおこなっている。ハカマ取りとは根元の白いところに残っている薄皮を除く作業。