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この街で、一緒に生きていく: 公益財団法人ヤマト福祉財団: 障害者のクロネコ DM 便配達事業。

自主的に、確実に、思いやりをもって。就労後に役立つ経験を重ねていく。

茨城県取手市。 JR 東日本の常磐線取手駅から車で7から8分の住宅街に、 NPO らしん盤の就労支援事業所、そよかぜ はあります。クロネコ DM 便の配達数は、1日平均約150冊。3人のメイトさんを中心に数名で、広範囲のエリアを自転車で配達しています。

ヤマト運輸茨城主管支店 取手駅西口センター.

面積.
9.94平方キロメートル.
人口.
88,842人.
世帯数.
8,549世帯.

NPO 法人らしん盤。就労移行支援、就労継続支援 B 型事業所 そよかぜ.

2009年2月、クロネコメール便、後にクロネコ DM 便、をスタート。1日平均約150冊。他には喫茶そよかぜの配膳と食器洗浄、建築部品の組み立てなど。

障害者のクロネコ DM 便配達事業.

参入施設数.
316施設.
従事者数.
1,592人。2017年8月現在.
お問い合わせ.
公益財団法人ヤマト福祉財団、 DM 便担当.
電話.
03-3248-0691.
ファクス.
03-3542-5165.
ウェブサイト.
http://www.yamato-fukushi.jp/

2015年4月1日より、クロネコメール便配達はクロネコ DM 便配達へと変わりました。

取手市は茨城県の南部に位置する、人口約10万人の都市。東京の中心地から電車で約1時間。東京は通勤圏内です。

2009年2月、 NPO 法人らしん盤の理事達が協力して、クロネコメール便、後にクロネコ DM 便、配達を開始。当初は、理事達で配達し、仕事内容を覚え、手順を作成することから始めたといいます。その後、就労移行支援事業所そよかぜを2012年に設立。そこで、引き続きメール便配達に取り組んできました。

体力をつけて、自主性を高めること。

そよかぜ設立の際、理事達が就労するために必要な訓練としてあげたのは、次のようなことです。体力をつけて、持続力や集中力を高めること。協調性や責任感、自立心を持つこと。生活リズムを整えて、報告、連絡、相談の ほう、れん、そう を習慣化することなど。メール便はこれに適しているとして、そよかぜのもっとも重要な就労支援事業となりました。

みんなで相談して、配達数を公平に。

朝のメイトさんの関心事は、その日配達する DM 便が何冊かということ。この日は18冊だけで、ちょっとがっかりしていました。みんなで仕分けをした後、配達地域ごとの冊数をリストに書き入れると、そよかぜ恒例のメイトさんタイムが始まります。

今日はここを配達したいと、自分から手をあげます。そして、エリアが重なると話し合いをして、担当する配達エリアを自分たちで決定。最後に、3人のメイトさんの配達数がほぼ同じになるように調整します。

職業指導員の笠島美香さんは、「僕のが2冊多いから、と言って少ない人へ、近いエリアの分を1冊手渡したりしています。思いやりとフェアな気持ちを感じます」と話します。

坂道を計算に入れて、配達ルートを決める。

取手市は坂が多い街。とりわけ、そよかぜの配達地域では、自転車で上るのがとても大変なほど、急な坂道がいくつもあります。そのため、配達ルートを決めるときは、まず坂道を頭に入れておくことが大切。坂の下に配達先があるときは、坂の上に自転車を停めます。坂を歩いて下りて配達し、歩いて坂の上へ。たとえ遠回りでも、自転車で坂を上らなくてもすむように順路を組むことがカギ。時間のロスがなく、体力を消耗しないで配達することができます。

配達しながら、地図を作っていく。

そよかぜは近くの住宅街だけでなく、今年、工場と新興住宅街が広がる遠方の配達エリアが増えました。ここは次々と家が建ち続けている、開発中の地域。最新版の地図には以前の情報が載っていないため、少し前の地図を図書館でコピー。前に住んでいた人の情報を確認しながら、そこに転居先情報や新しい配達先を書き込み、情報を更新しています。まさに配達によって、日々新しい地図が生まれています。

任せている分、しっかりサポート。

新しいメイトさんが配達を始める時は、その人のペースに合わせて、覚えるまで職員が同行。段階的に任せながら、少し離れた場所から見守り、何かあったら連絡を待ちます。出発時間を明記して、夏は1時間以内に、必ず連絡を取り合うこと。熱中症予防に、水を2から3本と塩飴を持つことなど、きめ細かくルールを作り、サポートをしています。

さらなる情報交流で、パートナーの絆を強く。

ヤマト運輸茨城主管支店、取手支店、斉田正史支店長は、「坂道を攻略し、効率的に配達していることがわかります。新しい配達エリアは、ヤマト運輸のドライバーにとっても難易度が高い地域。情報を共有できればありがたい。これからもパートナーとして共に頑張っていきたい」と語ります。

ヤマト運輸茨城主管支店、サービスセンター、長塚一守センター長は、「今従事しているメイトさんが高齢化する中、そよかぜは頼れるパートナー。より安定した品質を保てるよう、今後もバッグアップしていきたい」と結びました。

そよかぜからは、すでに十数名が一般就労しています。日々の作業の中で身に付いたのは、何度も確認し、間違っていたらすぐにもとに戻ってやり直すやりかた。そして、一緒に働く仲間への思いやり。 DM 便配達の経験は、確実にそれぞれの職場で生きています。

吉広雄治さんは坂の上に自転車を停車。坂の下まで歩いて配達し、また坂を歩いて戻ります。「方向音痴で初めは迷ったりもしました。でも、今では道を間違えないし、配達ルートを決めるのもラクになりました。メール便を始めた時は不安があったけれど、少し自信がつきました。就労の機会があれば、前に一歩踏み出そうと思っています」。

仕分けをする前田大輔さん。町名別に何冊あるかを数えて紙に書き入れます。その後、他の人が再度確認。必ず複数の人の目でチェックします。

地図に配達先をマークし、配達ルートを書き入れる大山毅一郎さんと、そよかぜ職業指導員の笠島美香さん。

「ヤマト運輸の制服を着ると身が引き締まります。ひとつひとつが訓練。集中力がつき、精神的に強くなっていると思います」と大山毅一郎さん。

自転車のスタンドは、頑丈で壊れにくく、倒れにくいものを特注。

住所と名前を確認してから投函する吉広雄治さん。大山毅一郎さん。

NPO 法人らしん盤、高島睦子理事長、「基本的にはひとりで責任を持ってやらなければならない仕事。つらいこともあるけれど、心が鍛えられています」。

そよかぜ職業指導員 笠島美香さん。

そよかぜ朝倉正彦施設長、「挫折を味わっている人や治療中の人がいる。毎日、体調の波もある。それでも、続けることで、朝起きることも苦労ではなくなります。 DM 便配達は、就労訓練にしっかりと役立っています」。

前列左から/斎藤一矢さん、前田大輔さん、大山毅一郎さん、職業指導員、笠島美香さん、後列左から/ヤマト運輸茨城主管支店、サービスセンター、長塚一守センター長、就労支援員、神崎恵子さん、ヤマト運輸茨城主管支店 取手支店、斉田正史支店長、サービス管理責任者、泉たけ美さん、生活支援員、宮本香織さん、岡美葉子さん、朝倉正彦施設長。

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