このページは音声読み上げブラウザに最適化済みです。

助成先レポート Vol. 32:私たちの賛助会費が活かされています:障害者給料増額支援助成金。

挑戦は利用者を、職員を変えた。

優美な姫路城を左手にかすめるように、姫路駅から3キロメートルほど。古民家もちらほら残る古くからの住宅街にこぢんまりと構えているのは、障害者支援センター、出愛いの里の第2作業所です。小さな作業所は、昨年2月から本格的に乗り出した DM 事業で活況を呈していました。

Data.

特定非営利活動法人、出愛いの里福祉会。障害者支援センター、出愛いの里。兵庫県姫路市。

6畳2間の作業所から。

「前のとおりは、姫路市内で、いちばんバスの便が多いところ。市の補助で、障害者は全線無料なので、かよいやすい立地なんです」と語るのは、施設長の高橋誠さん。

福祉施設といえば、交通の便が悪い山奥という時代に施設職員をしていた高橋施設長は、そのアンチテーゼとして、障害を持った人が、ごく普通に町にとけこむ理想を実現させたいと、生活介護を主とする、6畳2間の作業所を町なかに開きました。2005年のことです。時の流れを受け、5年後には就労継続支援 B 型事業所を立ち上げますが、利用者に払えた給料は月3000円程度。「それまでは、和気あいあいとしたアットホームな作業所で良い時代でしたが、 B 型に移行した以上これじゃいかん」と、2010年に、財団主催の、はたらく力 革新塾にヒントを求めて参加しました。しかし、「そこに いって正直場違いだと思った。無謀なところに来てしまった」と、当時を振り返って高橋施設長。

革新塾が掲げる目標は月額工賃5万円。見回してみると、他の参加団体は、規模も大きく、すでに1万5000円といった給料を出しているところばかり。また、電子メールでやりとりし、プレゼンテーション ソフトを用いて発表をするという状況に、「これはもう私の時代じゃない。次代に引き継がんと」。

売り上げ拡大の白羽の矢。

そこでバトンを渡されたのが、施設長のご子息で、主任を務める勝茂さん。

「当時、まだ、福祉の世界には、働かしちゃ駄目といった雰囲気がありましたが、働いていいんだ。間違いじゃないんだ、というのが嬉しくて、すごく共鳴するものがありました」。

そこからは、ひとつずつ、革新塾で学んだことを積み重ね、次第に成果が付いてきました。

とくに、2015年から不定期に受注していた DM 事業を、昨年2月から助走期間を終えて本格化させると、それまで稼ぎ頭だったプラスチックダンボールシート(プラダン)の洗浄事業を売り上げで逆転するほどに。

電子部品を配送するときに、製品を埃などから守るカバーとして使用されるプラダンの洗浄は、2012年より受注し始め、現在では取り引き先の物流企業から、独占的に請け負うまでになりましたが、それだけに、これ以上の売り上げ拡大は見込めません。そこで選んだのが、丁合や封入、封緘を請け負う DM 事業でした。

7年で手が届く、ついに大台へ。

しかし、その DM 事業も手放しで成長したわけではありません。

「電話帳で、姫路の会社に片っ端から電話でアポを取って、営業をしていったのですが、軒並み断られまして」と勝茂主任。市内の事業所の多くは DM 発注業務を、大都市にある親事業所で一括して管理していたためです。姫路市外に営業の手を広げるしかありません。

「でも神戸にも需要はそれほど。あとは大阪だけ。そこでちょっと躊躇するというか、大阪まで高速使って、片道2時間ぐらいかけて割に合うのかと」。でも、蓋を開けてみれば、「すぐに、おこなっていればよかったな」。

今では、4社と定期的な取り引きをするようになり、受注量も大幅アップ。そうなると、処理能力の向上、効率化が欠かせません。そこで昨年4月に、封緘機と結束機を整備。当財団のステップアップ助成金を活用しました。それまでは、すべてが手作業。封緘はスティック糊を使い、結束は難易度が高いため、職員の仕事。それが今では月約8万通ほどの受注で推移、2017年上期の給料は4万3042円に達しました。なにより、利用者さんに変化が訪れたそうです。

「給料が上がるにつれ、責任感とか自信をいだくようになるのが目で見て分かりました」。職員も利用者さんの力を信じるようになった、と勝茂主任は言います。作業所が狭く、今はまだ理想の作業ラインの完成にはほど遠いそうですが、それでも5万円の夢はもう目前です。

昨年2月から本格的に動き出した DM 事業は、第2作業所15名が担当、売り上げは一昨年の約3倍を達成。

助成で封緘機を整備、より効率がアップ。

高橋勝茂主任。

高橋誠施設長。

プラダン洗浄の発注元である、三菱電機ロジスティクス株式会社白浜営業所様へ納品。写真左は、ご担当の石田利樹さん。

自動車部品を運ぶための包装資材を洗浄する仕事をおこなう、第2作業所のプラダンチーム。

朝礼で司会を担当、昨日の目標達成を報告する前川哲朗さん。

姫路城。

労働組合支部執行委員長、助成先訪問、Series 27.

ヤマト運輸労働組合、姫路支部執行委員長、大江 博文 さん。

利用者さんの素敵な笑顔に出会えたことに感謝したい。

本日は、カンパ活動の大切さと、その意義をまざまざと見せてもらった気がします。ひたむきさというか、真面目な皆さんの姿には感動しました。カンパは人の真心を表し、それが あつまることで、人々の真心となり、初めて大きな力になるのだと思います。全国的に見れば、姫路は支部としては大きくない。でも、熱い人間はたくさんいて、カンパに協力してくれる人の数では、引けを取らないと自負しております。ヤマトへ帰って、今日のことを、いかに伝えるのかという宿題もいただきましたが、他にもどんな形で協力できるのか、考えていきたいと思います。

公益財団法人 ヤマト福祉財団 トップページへ戻ります。
ヤマト福祉財団 NEWS の目次へ戻ります。