医師になって10年がたち、現在は、リハビリテーション科医として、脳血管疾患や脊髄損傷など、様々な疾患、外傷により障害が残った患者さんの診療をしています。私は、生まれたときから両脚に麻痺があり、立ったり歩いたりするには装具が必要です。自分に障害があるからこそ、より患者さんに近い立場で、お手伝いができればと、診療に臨んできました。対象とする疾患が幅広く、学ぶべきことがたくさんありますが、様々な社会背景も含めて、患者さん全体を診ることができるのがリハビリテーション科の魅力です。患者さんが退院され、その後も、自宅や職場で元気にされている様子を聞くと、大変やりがいを感じます。
大学2年生から6年生までの5年間、ヤマト福祉財団より奨学金をいただきました。小倉昌男さんが選考された最後の学生であり、初めての医学部生であったと後からうかがいました。仕事をとおして、自立して生活し、少しでも社会に貢献していくことが、奨学生に対する思いに応えることだと考えています。
私生活では、昨年、第2子となる長男が生まれました。すくすくと育ってくれている子どもたちですが、小さなことで悩んだり、心配したりの毎日です。私が障害をもって生まれ、両親はどれだけ将来を心配したことだろうかと、自分が親になって初めて気づき、感謝の気持ちを新たにしました。育児休業を経て、4月からは職場に復帰する予定です。休業中も、共に働くスタッフから、「先生、早く帰ってきてね」と声をかけてもらい、必要としてもらえることを、大変うれしく思いました。
私は幸いなことに、周囲の理解やサポートに恵まれてきましたが、障害をもって働く女性医師というロールモデルとなる人が身近にいれば、もっと心強かっただろうと思います。後輩の奨学生のみなさんが、それぞれの場で活躍され、道を切り開いていかれることを願っています。