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私たちの賛助会費が活かされています。障害者給料増額支援助成金。助成先レポート Vol. 35.

離島に暮らしながら自立する道。

九州は長崎の西方、約100km、大小152の島々からなる五島列島。その玄関口である福江島に、長崎県内でもトップクラスの給料を支給する作業所があります。その平均給料は月額6万円をすでに達成。さらなる成長に向けて準備を進めている、五島あすなろ作業所に伺いました。

Data.
NPO 法人 五島あすなろ会、五島あすなろ作業所。長崎県五島市。

手間暇かかる、伝統の手延べうどん。

「讃岐、稲庭は決まっていて、3つ目はいくつか名前が挙がるのですが、ここは福江島なので、五島うどんを最後に入れてさせてもらって」。

そう笑うのは五島あすなろ作業所の理事長、土岐寛志さん。

ここ数年、全国的に知られるようになり、日本三大うどんに数えられることも多い五島うどんは、手延べで作られ、細麺ながらコシが強いのが特徴。とくに上五島が本場です。

昨年12月、島内に五島うどん専門の飲食店、ばらもん亭をオープンさせた、五島あすなろ作業所は、ステップアップ助成金167万円を活用して、この夏、麺研磨機と、シュリンク包装機を整備しました。

「これから先、うちが手がけている事業の中で、伸びていくものはうどん製造事業だろうと。しかし手打ちと違い、手延べうどんは工程も多く、時間も手間もかかります。そこで、生産能力の向上や、高齢化する利用者さんたちのことを考えると、作業内容の簡易化、効率化が重要な課題だったんです」。麺研磨機は、乾燥麺の表面のバリやゴミを取り除き、喉ごしをぐっと良くします。また、1本1本、おこなっていた、目視検査の負担軽減も期待できます。シュリンク包装機は、ギフト商品の梱包に役立てる計画です。

島内だけを見ていたら限界に。

五島あすなろ作業所では、うどん事業以外にも、市指定ゴミ袋の製袋事業、墓参り代行事業などに取り組んでいます。しかし、人口減少が見込まれている島の将来を考えると、いずれ、事業収入の頭打ち、減少は避けられません。

幸い、五島うどんは注目度がアップしているさなか。今年7月には、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産が世界遺産にも登録され、構成資産を擁する五島列島を訪れる観光客の姿もぐっと増えました。島内のみを対象にした事業には限界がありますが、追い風が吹く今、うどん製品なら島外に打って出ることもできます。

五島あすなろ作業所は2001年の発足ですが、源を辿れば、現 理事長の父、達志さんが1992年に立ち上げた食品会社に遡ります。達志さんは若いころ、業務上の事故で足を失いました。障害のある人たちの力になるべく、やがて自ら行動を起こした達志さんが目を付けたのが五島うどんの製造です。もちろん旧自立支援法が施行される以前のこと、「障害者の働く場を」と考えて、株式会社の形で起業しました。当時、漁業以外に目立った産業のなかった五島は、障害のあるかたが働くには、たいへん厳しい環境だったのです。

現在では、より多くの障害者を雇用するために、株式会社を作業所に解体吸収。県の定める食品衛生管理 ながさき HACCP を、五島市で、もっとも早く取得するなど、熱心な営業活動で障害者の自立を応援しています。

夢や目標に向かうためにも。

認証取得の理由を理事長はこう語ります。

「一般のかたが作業所製品に持つ、それなりの品質なんでしょう、というイメージを払拭したかったですし、利用者さんたちにも、製品や、自分たちの仕事に、自信を持ってもらいたかったんです」。そして、こうも続けます。

「お金は大事です。経済的基盤ができれば、グループホームで先を見据えた生活をしていくこともできます。うちを利用することで、生活保護から抜け出せた人もいます。ただ、矛盾するように聞こえるかもしれませんが、仕事は単にお金を稼ぐだけではなく、自分が社会の一員として認められる、その存在証明でもあるのだと思っています」。

まずは、経済的な基盤を整えたら、利用者さんには、本当にやりたいことにどんどんチャレンジしていってもらいたい、と、理事長。昨年開店した、ばらもん亭の名は、古くから伝わる郷土凧、バラモン凧から採りました。利用者さんが目標に向かって大空を昇っていく。そんな日はきっともうすぐです。

くっついた麺を外す麺分け。この状態で、ゆっくりと一晩かけて乾燥させる。

福江島でも数少ない五島手延べうどんの専門店、ばらもん亭。郷土凧からの命名だが、その語源、ばらか には島の言葉で、活発な、元気のいい、の意味がある。

練られた生地は何度も、何度もよりをかけて、細い麺の形に。この過程で、島 特産の椿油が塗られる。

理事長の土岐寛志さん。

現理事長の父で、前理事長の土岐達志さん。

長い竹箸をつかっておこなう、延ばしの工程。

乾燥させ、裁断した麺は、研磨機にセットされ、20分ほど揺らしながら研磨される。

シュリンク包装機を利用することで、包装紙で包む工程を廃止。作業の軽減と、商品の安全性向上を図った。

五島手延べうどんの食べかたで有名な地獄炊き。

五島あすなろ作業所が手がける、手延スパゲッティ、平打ちの はごろも麺、五島手延うどん、磯乾麺。

労働組合支部執行委員長、助成先訪問、Series 30.

ヤマト運輸労働組合、長崎支部執行委員長、蛭子谷 淳一さん。

社会のためにできることをする。会社としても人としても。

手延べうどんって、作るのにこんなに大変だとは思いませんでした。そうめんに似た工程なのだろうとは思っていましたが、力仕事もあるし、本当に感心しました。

今年、長崎からは3件の助成申請が採用されました。いずれも主管支店長と訪問させていただきましたが、こうした社会貢献活動は、会社としても、人としても、やはり大切なことで、続けていくべきだと痛感しました。

長崎支部では夏のカンパとは別に、独自に冬もカンパを実施。毎年4月に運輸労連として、長崎県庁にお届けしています。できるだけ多くの善意があつまるよう、今日、見聞きしたことを、広く伝えていかなければと思いました。

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