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助成先レポート Vol. 36, 私たちの賛助会費が活かされています, 障害者給料増額支援助成金。

地域に根を張って、共に生きる、農福連携。

有田みかんで全国にその名を知られる有田川町は自然も多く残り、農業が盛んな地域。しかし、過疎 と耕作放棄地の問題は、ここでも例外ではありません。そんな有田川町で、農福連携の成果を上げているのが、早月農園です。瑞々しくて甘い、と、ミカンの評判も上々。さらなる成長が期待されています。

社会福祉法人, 有田つくし福祉会, 早月農園. 和歌山県有田郡有田川町。

農機具の修復で収穫もはかどる。

冬の陽射しを凝縮したような黄色い実が、山の険しい斜面で、収穫を待っていました。木々の合間を縫うように見え隠れするレールの上を、利用者さんが手摘みした、山盛りのミカンが運ばれていきます。

柑橘類を中心に、山椒や、梅、野菜の生産を、2012年から手がける早月農園ですが、その母体である、つくし共同作業所では、内職や、パンの製造販売をおこなっていました。

「地域のかたから好評をたいだいて、パンは、やり甲斐や、責任のある仕事になったのですが、内職や、パンの製造販売とはまた違った視点の作業である農業に着目しました。当時、畑仕事のセラピー効果も注目されており、廃校を内償でお借りできる話もあったので、そこを拠点に、農業に取り組むことにしたんです」と支援員の大辻宰さん。

訪問したのは、ミカンの収穫がピークを迎えるころ。多い日の出荷は、日に1トン以上。耕作放棄地を借りた柑橘類の栽培面積は現在、4.25ヘクタールまで増えました。その多くは山間。農業用モノレールは生産性の向上に不可欠です。しかし、長く放置されていた、ミカン畑のモノレールは劣化が激しく、安全性にも問題がありました。そこで、早月農園は、当財団の助成を活用し、2017年12月に、モノレールの新設を含む、修復整備を果たしました。

失敗はざら。それでも辿りついた3万円。

設備整備は、利用者さんにとっても良い変化をもたらしている、と大辻さんは続けます。「新しい機械に興味を抱いて、より前向きになる利用者さんは多いです。仕事への誇りや、責任感が増しているのを感じられる利用者さんもいます。設備投資が、早月農園の売り上げ、ひいてはみんなの給料アップに繋がっていること、そこに自分も関わっているんだ、という意識を利用者さんの多くが持っているのを、日々の支援の中でよく感じます」。

農園を始めて2年目、2013年度の売り上げは、柑橘類以外の野菜販売や、パンの訪問販売なども含めて約350万円。とくに農業の専門家がスタッフにいたわけではありません。近隣の農家からアドバイスを受けたり、講習会に参加したり。でも、「地形や、土壌の違いもあって、行き着くところは千差万別。挑戦と失敗の繰り返しだった」といいます。それでもミカン農地を借り増しして、規模を順次拡大。販路は、様々なコミュニティでの情報収集や宣伝、口コミを中心に地道に広げてきました。当財団の実践塾に参加して知り合った仲間の作業所なども、早月農園のミカンの美味しさを知って、買ってくれる大事な取り引き先になりました。その甲斐あって、2017年度の売り上げは1627万円。平均給料が初めて3万円を超えました。

想い描く夢のまだ途上。

早月農園が思い描く農福連携とはどのようなものなのでしょうか。「農福連携が謳われるようになったのは最近のこと。僕らがまず目指すのは、この地域にちゃんと根を生やして、地域のかたたちといっしょに、強く生き残っていくことです。利用者さんの頑張りを、早月農園から周囲に広げていって、相乗効果が引き出せれば。そうした地域貢献こそが、農福連携と呼べるものなのかな、と思っています」。そのためには、高いアンテナを張って、柔軟に対応できる力を身につけたい。近隣の作業所とも、より連携を深めていきたい、と語る大辻さん。そして、利用者さんの平均給料を、5万円の大台に早く乗せたい。これも早月農園が いだく、もうひとつの夢です。今回の助成ではモノレール以外に、じつは、加工食品用撹拌機、充填機も併せて整備しました。ジャム、マーマレードの製造用です。規格外の果実に付加価値をつけて商品化。安定的に生産できれば、収穫期以外の売り上げアップも期待できます。3年先、5年先の早月農園が楽しみです。

労働組合支部執行委員長, 助成先訪問 Series 31。

ヤマト運輸 労働組合 和歌山支部 執行委員長, 浜田明宏さん。

熱い思いが ひしひしと、皆さんの姿から伝わってきました。

急斜面の段々畑で、利用者のみなさんが、ミカンの出来具合を確認しながら、ひとつひとつ丁寧に収穫していました。ときには中腰になり、背伸びをし、あるいは脚立を使って、この寒い中、汗びっしょりになりながら、作業に取り組んでいる姿に、みなさんの働く喜びを感じました。私もお手伝いしましたが、足は滑らすわ、腰が痛いわ、ミカン満載のコンテナの重いことに、その大変さを実感しました。

根気のいるジャム作りに真剣に取り組んでいる姿、助け合いながら、仲間でひとつのものを作り上げていく姿にも心が打たれました。私たちの和歌山支部も、互いに思いやり、励ましあい、仲間を大切にする、町 一番の職場にしていきたいと、改めて意識しました。

急斜面での収穫。「小さいミカンが美味しいです」と利用者さん。

台風で被災したビニールハウス。

支援員の大辻宰さん。「目指すのは、障害者施設、早月農園ではなく、あくまで、障害者が中心となり、農業を営む早月農園です」。

西林則男施設長と二人三脚で開設した早月農園。「専業農家でも無理なのに、福祉で採算をとるのは無理じゃないか、と言われました」と西林久子理事長。

収穫したミカンをモノレールに載せる、浜田委員長と、利用者さん。

モノレールの荷物台車には、20キログラムのみかん満載のコンテナが10個積載できる。

理科室では加工食品用撹拌機を使ってジャムを製造中。

2015年のステップアップ助成で整備した選果機。

箱入りミカン, 3キログラム, 1,200円。

みかんジュース, 500円 と各種ジャム マーマレード 500円。

野菜便、2000円より。内容により異なる。

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