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受賞者を訪ねて

心安らぐ場という入口から自立という夢のゴールまで

精神障害者に必要なものはすべて用意する、草むらづくりの理念を貫く風間さんを訪ねました。

特定非営利活動法人 多摩草むらの会 代表理事 風間美代子さん

DATA

〒206-0034 東京都多摩市鶴牧1-4-10 アネックス鶴牧101

電話 042-339-8022

ファクス 042-339-8025

多摩草むらの会の多様な活動

風間さんらが、多摩草むらの会を発足させたのは1997年。グループホーム運営を目指し、任意で活動を開始しました。事業展開が加速したのは、2004年。NPO 法人格の取得をきっかけにグループホームと寒天茶房 遊夢を開設以来、10年を経ずに、7か所のグループホーム、8か所の働く場、就労継続 A・B 型、さらに相談支援センターを擁し、利用登録者318人、職員数131人という規模に成長しました。

働く場も、飲食店、農園、パソコン事業、和菓子製造、レストラン、ファブリック縫製など幅広く事業化していますが、きっかけはすべて当事者の「やってみたい」という希望からだそうです。「もっとたくさんの草むらがあったなら、人参畑に人参を取りにいけるのに」。精神障害者の気持ちを野兎にたとえた理念が原動力となっています。

胸をはってできる仕事を

寒天茶房、無農薬農園、野菜料理、まんじゅう製造など特徴のある事業活動も、もともとは当事者の健康を気遣って始めたことばかりです。回復に向かい食事にきてくれるようになった当事者に多い肥満を解決するためにメニューに寒天を取り入れ、無農薬野菜や菌床シイタケ栽培の農園で体調を見ながら就労。パソコン工房で就労のためのスキルを磨くこともできます。もっと働きたい人には、和菓子製造やレストランで働く道も選べるようになりました。「本人のプライドも保てるような仕事の提供が大切。これがお店づくりの秘訣です」。風間さんは、そういいます。

本物志向を貫く、畑 de きっちん と 夢うさぎ

多摩センターにある商業施設ココリア多摩6階のレストランフロアに今夏新たに開店した畑 de きっちんは、野菜料理を前面に打ち出し、中高年の夫婦連れや女性客をターゲットにしたレストランです。健康志向が受けて連日満員。夜10時までの営業で、グループでの利用も楽しめるように工夫されています。夢うさぎ では、麹を使った本格的な酒まんじゅうを作っています。店内にはおまんじゅうの甘い香りが漂っていました。

写真説明

畑 de きっちんは、屋内ながらも販売スペースも設け開放的な雰囲気。

風間富重さんは、自ら拓いた夢畑の施設長として美代子さんを支えています。

利用者も職員もここでは同じスタッフです。

夢うさぎは、いかにも和菓子店という店構えでお客様をお迎えしています。お店の質を高めることも支援職員の重要な仕事になっています。

受賞者を訪ねて

住みなれた地域で当たり前に暮らしたい

地元農家や一般市民との交流から始まり、経済活動によるコミュニティ作りで地域に貢献する熊田さんを訪ねました。

社会福祉法人 こころん 常務理事、施設長 熊田芳江さん

DATA

社会福祉法人こころん

〒969-0101 福島県西白河郡泉崎村大字 泉崎字下根岸9

電話 0248-54-1115

ファクス 0248-53-3063

福島県南部の精神障害者の暮らしのために

熊田さんが現在の法人の前身である NPO 法人こころネットワーク県南を設立したのは2002年。精神病院しかなかった地域で精神障害者を支援するための地域づくりから始まりました。高齢化している地元農家と精神に障害のある人たちとが連携することで信頼を得て、経済活動と地域貢献の連動モデル、里山再生プロジェクトが始動。直売カフェこころや がその拠点となりました。

色とりどりの野菜が並ぶ直売所

取材当日訪れたチャレンジショップにこにこ屋は白河市内の旧市街地にある空き店舗を利用した出張販売所。毎週木曜日に開店しています。ならんでいる野菜やお惣菜はすべて地元農家がこころんに持ち込んだもの。安くて良いものから売れるという市場の原理が働くので持ち込まれた野菜や果物はどれも安くて立派なものばかりです。

開店前から待っているお客さんや、買い物の後のお茶を楽しみにしている高齢者の姿もあり、まさに地域のコミュニティとなっていました。

養鶏場、果樹園から6次産業へ

こころんの利用者の働く場は、地元農家の事業継承として始めた養鶏場や休耕田を利用した果樹園などの農作業に加え、菓子工房、レストラン、直売所と幅広く用意できるようになりました。本人の希望に沿った働きかたができるようになっているほかに、施設の資源を販売、営業拠点として地元の生産者、加工業者に利用してもらうことで、地域にも貢献しています。差別や偏見の不安もなく、住みなれた地域で暮らすことができるようにという願いが見事に具現化されていました。

写真説明

チャレンジショップにこにこ屋の店内、白河市本町。

直売カフェこころや は、通りの左側に面し、車ではいりやすくなっています。福島県泉崎村川畑37。

とれたて野菜がならぶフランスのマルシェを意識した直売カフェこころや の店内。

酒蔵大木代吉本店で囲炉裏を囲む熊田さん。大木代吉会長は、里山再生プロジェクトとして震災前から連携してきた間柄。推薦者の田中志保美さんもここで働いています。