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この街で、一緒に生きていく。公益財団法人ヤマト福祉財団 障害者のクロネコメール便配達事業

お給料が増えるほど、夢もふくらんでいく

大阪府東大阪市、JR と近鉄線が乗り入れる河内永和駅から徒歩約15分。静かな住宅街の中にワークセンターひびきはあります。メール便配達事業を始めて9年目。ひとりひとりのメイトさんの意識の変化や、お給料と仕事の関係についてなど、さまざまなお話を伺いました。

北大阪主管支店 東大阪御厨センター:面積2.95平方キロメートル、人口30,742人、世帯数13,926世帯

社会福祉法人ひびき福祉会ワークセンターひびき:2005年からメール便配達事業を開始。1日の平均配達数、約230冊。その他、ウエスの製造、販売など。

第7回ヤマト福祉財団小倉昌男賞を受賞した亀井勝さんが理事長を務める社会福祉法人ひびき福祉会。その事業所のうちひとつがワークセンターひびきです。亀井さんが福祉事業に関わった30年余、一貫している信念は、障害のあるかたの収入を増やし、夢を実現していくこと。この考え方に、ヤマト福祉財団のメール便配達事業の基本理念が重なって、2005年にメール便事業が始まりました。

亀井さんは本年、夢へのかけ橋プロジェクトの夢へのかけ橋実践塾において、亀井塾をスタート。ものづくりのプロを生み出す、という目標を掲げています。お客様に喜ばれることや、ニーズに応えることが必要という想いは、ワークセンターひびきの運営にも生かされています。

電動三輪自転車で、安全配達

障害者の仕事は低賃金があたりまえ、という偏見がまだまだある時代。ワークセンターひびきでは、一般のメイトさんと同じ賃金であるメール便配達事業に、かねてから可能性を感じていました。ヤマト運輸からの声がけにすぐに応じて、2005年8月に事業をスタート。最初は営業車を1台登録し、自転車で配達を始めています。しかし、事業所にあった三輪自転車で配達をしてみると、メール便をたくさん乗せても安定感があることを発見。そこで電動の三輪自転車を3台購入して、現在の配達スタイルになったそうです。

「いちいち自転車のスタンドを立てなくてもいいですし、強風や雨の日でも倒れません。メイトさんだけでなく、行き交う人との事故がないよう、安全第一で行っています」と、職員の山内崇洋さんは話します。

持ち出し登録をしながら仕分け開始

朝、9時。東大阪御厨センターに車で到着した3人のメイトさんは、すぐに担当エリアのメール便の持ち出し登録を開始します。いちばん広いエリアを担当しているメイトさんの速水行岳さんは、他エリアのメール便が紛れていないかをすばやく確認。配達ブロックに仕分けしながら、素晴らしい集中力で、番地順に重ねていきます。メイトさんの上田靖さんと前田健二さんはマイペース。それでも約 0分で持ち出し登録を終えて、ワークセンターひびきへと戻ります。

そして、9時半。ひびきのメール便コーナーに作られている町名別の棚に仕分けをし、配達順に重ねます。ビニールパウチした地図に配達先を蛍光マーカーで印をつけて、さらに職員が担当のメイトさんと一緒に最終チェック。この工程で誤配が確実に減ったそうです。最後に、本日の配達エリアの担当者の名前を前田さんがボードに書き込んで、流れるように準備が整いました。

番地の1つ違いも見逃さず、確認

メイトさんの速水さんは、多い日では1日200冊も配達することがあるほど、広いエリアを1人で担当しています。始めた頃から地図を家に持ち帰り、配達エリアを復習するなど、とても熱心。今では何番地何号の最後の数字が1つ違っているのも見逃さず、職員に報告します。

「旧番地表記のメール便も、これはどこの何番地のものだよと言いながら、渡してくれます。古い地図で確認していますが、速水さんがしっかりしているので、とても助かります」と職員の安藤康二郎さん。

マンションの多い地域は、配達中の盗難を防ぐために、前田さんと上田さんの2人ペアで配達します。また、新しい住宅にはローマ字表記の表札が多いため、ローマ字を読むのが不得意な前田さんを上田さんがサポート。番地を前田さんがしっかりと確認して、2人でポスティングします。

責任意識が生まれて、明るくなる。それが仕事のチカラ

メイトさん全員が仕事を通して、挨拶やありがとうという言葉が自然にでるようになったと、職員の山内さんは言います。「給料が1万円の時はお小遣い感覚ですが、3万円を超えると責任意識が生まれて、5万円ではさらに仕事意識が高まるように感じます」。たくさん配れるようになりたい、貯金をして何々を買いたいという声を聞くと、職員としてもっと収入を増やしてあげたいという思いを強く持つそうです。

「最近はインターネット注文の品が増えたせいか、ポストにはいらないものが多く、不在票が必要です。ポストがないお店への対応。転居が多く、名前の表示もないアパートの配達先確認。そんなさまざまな状況の変化についていけなくて、とまどうメイトさんもいますが、混乱しないように職員と一体となって取り組んでいます」。不安なものはすべて持ち帰り、職員に渡すことを徹底して、誤配をほぼ無くしていると話します。

パートナーシップに今後も期待

ヤマト運輸北大阪主管支店メール便課の新谷守課長は、「まじめな仕事ぶりに、やる気を感じます。ヤマト運輸にとって、パートナーシップを組む大きな存在です」と話します。また「大阪はもっと需要のある地域。メール便配達事業所を増やしていきたい」と関西支社のメール便担当溝口大泰さん。そして、北大阪主管支店東大阪西部支店の伊東勇二支店長は「今年は誤配はほとんどありません。大きな車のはいれない細い道があるので、三輪車の配達は効率がいい」 と、ひびきの仕事ぶりを評価。「密度の高い仕事をしてくれるので、これからも期待しています。ヤマトのテーマでもありますが、安全第一で進めてほしい」と語ります。

「発想を変えなければ、メイトさんのお給料は変わりません。そのためには職員の勉強も必要だし、徹底してメイトさんを支えるという覚悟も必要です」と亀井理事長。障害者の夢を実現させたいという想いが、人と社会に響いていくように。ひびきの取り組みは続きます。

写真説明

速水行岳さんは、担当エリアが広いので、効率のよい配達順を考えて回ります。どんな坂道も電動の三輪自転車で、スイスイ。趣味は、プラモデルを組み立てること。

メール便を仕分けし、配達順に並べていく上田靖さん。

配達先を地図にマーク。毎日きれいに拭いて、更新します。

ボードに貼ってある挨拶の言葉。毎日確認します。

パンク修理でおなじみの自転車屋さんで、元気に手渡しする前田健二さん。いつも笑顔を絶やしません。楽しみは、お給料でコンサートに行ったり、サッカーの本を買うこと。

駅前は混雑するので、ゆっくりと走るようにしています。急がないで余裕を持つことが、安全と確実な配達につながるのだとか。自転車で配達するのは、前田さんと、彼を見守るように後ろを走る上田さん。

メール便をポストに入れる前に、住所をしっかりと確認する速水さん。

職員の山内崇洋さん。「花見や運動会などのイベントに参加するかを尋ねると、みんなが『配達する』と言います。仕事に前向きになったと感じます。給料日にはみんなで食事に行ったり、買物につきあうことも。プラモデルを大人買いして、うれしそうな顔を見ると、こちらも幸せになります」

社会福祉法人ひびき福祉会 亀井勝理事長。「精度が高く、きちんと納期を守る仕事は、健常者と同じ賃金であるべきです。そのためには、確実な仕事をすること。私たちは、土日もメール便を配達しています。ニーズにしっかり応えることが重要です」

前列向かって左から、ひびき福祉会理事長 亀井勝さん、ワークセンターひびき職員 山内崇洋さん、上田靖さん、前田健二さん、速水行岳さん。後列向かって左から ワークセンターひびき職員 安藤康二郎さん、ヤマト運輸関西支社 メール便担当 溝口大泰さん、北大阪主管支店 東大阪西部支店 伊東勇二支店長、北大阪主管支店メール便課 新谷守課長、ヤマト福祉財団 関西支部 石田久雄事務長、関西支社メール便担当 濱野道康マネージャー

障害者のクロネコメール便配達事業

参入施設数 320施設

従事者数 1,617人

以上、2013年10月現在

お問い合わせは公益財団法人ヤマト福祉財団メール便担当

電話 03-3248-0691

ファクス 03-3542-5165

http://www.yamato-fukushi.jp/