手当たり次第の受注
6つの窓が一見するとロッカーか何かのように見える機械。ワークセンター日和山が導入した私物専用の業務用乾燥機ムーンサルトです。当財団の助成を得て購入。この春から満を持して、稼働しはじめました。
夢へのかけ橋実践塾に参加し、クリーニング事業で今年の夏にも利用者さんの平均給料を5万円にすることを公言するワークセンター日和山。1977年に、養護学校の卒後受け入れ先として無認可作業所からスタートしました。来る仕事はすべて受け入れるという姿勢で、雑草取りから図書館業務の補助、縫製までと、さまざまな業務に手を出し、クリーニングの下請けも1994年より受注してきました。しかし、クリーニング事業の売上は多くても年間100万円程度。そんな様子が長く続いていました。
「大きな分かれ道だったのは、2011年に生活介護事業と就労継続 B 型に移行したことだったでしょうかね」と、大橋道子施設長は転機を振り返ります。
「就労意欲のあるかたと、自分のペースでプログラムをこなしたいかた、どちらの利用者に対しても中途半端になっていた状況を見直すきっかけになりました」。
たくさんあった仕事を整理し、やめる事業は他の事業所にすっぱり譲りました。職員同士で喧々諤々の末、クリーニング事業を中心に、菓子製造とウエス加工、縫製をおこなう現在の事業形態に辿りついたのは、そのころです。
高齢化の波が洗濯物にも
いっぽうで2008年ごろから、届く洗濯物に変化の兆しが現れていました。私物クリーニングの増加です。
ワークセンター日和山は、ホテルや医療機関にシーツなどをレンタルするリネンサプライの大手企業から、洗濯物を受注していました。しかし時代の変化に伴い、高齢者施設に入居するかたの下着や靴下といった私物の洗濯が舞い込んでくるようになっていました。
私物クリーニングはたいへん手間のかかる仕事です。洗濯の前に、職員がすべての洗濯物をお客様ごとの袋から取り出し、リストを作成。乾燥後は混入のないようリストとにらめっこしながら畳み、袋詰めをしなければなりません。
「私物クリーニングをもっと引き受けたかったのですが、当時の我々の仕事のやりかたや技術では限界がありました。しかし、私物クリーニングは比較的歴史が浅く参入できる見込みがあったのです。事業を伸ばしていくなら、私物しかないと感じていました」と担当職員の吉川大幹さん。
ニッチを攻めて売上増を狙う
ですが、手作業では日に50袋がせいぜい。光明が差し込んだのは昨年5月のことです。見学に行ったクライアントの洗濯工場で、吉川さんはムーンサルトと出会ったのです。1人分ずつ、同時に3人まで個別に乾燥できる機能を持ち、仕分けの手間をカットできます。買いたい衝動に駆られましたが、一般的な乾燥機の2から3倍、500万円もする代物。
そんな矢先に参加した当財団のパワーアップフォーラムで知ったのがジャンプアップ助成金制度です。「どっちも500万円。これはもう、神の啓示かって」(笑い)
導入したムーンサルトの効果は絶大。現在1時間で15から17袋を処理でき、導入前とは雲泥の差です。
「私物に関してこれまであまり積極的な営業はしてきませんでした。しかし高齢化に伴ってますます私物クリーニングのニーズは高まると思います。この機械のおかげで自信を持って営業に行けます」と意気込みも十分。下請け一辺倒もこれで変わるかもしれません。
大規模な投資で、儲かるクリーニングへの脱皮を、彼らはいま果たそうとしています。
写真説明
私物クリーニング担当の利用者さんと担当の吉川さん
ネットに封入したまま洗濯された私物
私物専用乾燥機ムーンサルト。一度に3人分の乾燥ができる。上下の扉で1人分
洗い終わった私物をネットから取り出す仕事を手伝う羽下委員長
小部屋に分かれていて、ネットから取り出した私物は、個別に乾燥ができる
1人分ずつ乾燥がすんだものから畳み、ふたたびネットに収めて納品
大橋道子施設長とクリーニング事業を担当している吉川大幹さん
取材当日は夢へのかけ橋実践塾の新堂塾勉強会も開催されました