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東日本大震災 生活、産業基盤復興再生募金。助成先を訪ねて

故郷再生へ希望の樹を育てる

家、仕事、暮らし、豊かな自然。震災で失ったものはあまりに大きく、多くのかたの支援と3年の努力を費やしても、まだ故郷再生への道のりは遠く険しい状況です。被災地では、故郷の大地にしっかりと根を下ろし夢を実らせる、そんな希望の樹となる新事業を大切に育てています。

いわて三陸、夢あふれる漁業モデル創生プロジェクト

第5次助成、三陸漁業生産組合

漁師と加工会社が力を合わせ6次産業化へ。これからが本番

写真説明

三陸漁業生産組合の復興のシンボルとなった共有使用船、第十七天王丸

漁師の仕事を思い切り堪能

「自分たちが獲った魚を魅力ある製品に加工し、自分たちの手で販売する」。そんな6次産業化を目指す岩手県大船渡市の漁師町、越喜来(おきらい)地区の三陸漁業生産組合は、この助成で高鮮度水揚げを可能にする最新の漁具資材や低温輸送車、共有使用船、製氷冷凍荷捌き施設と体制を整えてきました。

「いま漁師の仕事を思い切り堪能しています」。2014年春、町を再訪した我々に、組合員のみなさんはうれしそうに話しかけてきました。

「昨年12月に全組合員に船が行き渡り、いまは養殖とカゴ漁の両方で1年を通して船を出せます。船が手にはいるまではと踏ん張ってきた甲斐がありました」と三陸漁業生産組合の熊谷博之さん。「いまは年末からはじまった毛ガニのカゴ漁が大詰め。他にもカレイやヒラメ、ツブ貝、ノドクロが次々とあがり大忙しです」。熊谷さんは、漁の話をはじめると止まらなくなります。

組合では他にもホタテ、ホヤ、ワカメ、ムール貝の養殖もおこない、漁獲量は徐々に回復に向かっています。また効率的に仕事を進めるために、養殖、カゴ漁、市場とそれぞれの得意な仕事に役割を分担する組織改革や漁船の再編成も計画中で、人的な体制も整えようとしています。

加工会社も商品開発体制を充実

気を吐いているのは、漁師だけではありません。岩手県は、水産加工事業者生産回復支援事業、第1次助成で県内107社の加工会社を支援。そのひとつ有限会社三陸とれたて市場は、事業再建に必要な真空包装機や金属検出器、冷蔵機器を設置するための資機材を導入し、漁師とともに新商品開発に挑んでいます。それぞれの体制も整い、6次産業化はこれからが本番です。

写真説明

組合で唯一カキの養殖をおこなう熊谷博之さん

10 ヵ月目になったカキ、これを大きく育て、収穫するのは1年後という

カゴ漁でとれたミズダコ

アジフライやだし付きの茶漬けなどの商品化を研究中

福島県立自然公園松川浦周辺の海岸防災林再生事業

第5次助成、緑地創造研究会

クロマツ採種園の竣工を記念し植樹祭を開催

写真説明

地元のうねめ保育園の園児たちと一緒に一本一本苗木を植樹

松食い虫に強い遺伝子を持つ抵抗性クロマツを開発

福島県相馬市の松川浦周辺では、震災の津波で100㏊以上もの海岸防災林が流出しました。松川浦県立自然公園は、阿武隈高地から太平洋に注ぐ河口にできた大きな干潟で、古くは万葉集にもうたわれた県内有数の景勝地です。日本百景のひとつにも数えられたこの地の大洲や中州には、防風林や防潮林としてクロマツが植栽され、河口に広がるあし原と肥沃な干潟は貴重な植物や野鳥の宝庫となっていました。しかし、その様子は震災で一変しました。

福島県はこれまでの調査により、松川浦周辺の被害が大きかった原因が、干潟状の立地によりクロマツの根が浅かったためと推測。盛り土による築堤を行った上で、地域適性苗木を植栽し、新たな海岸防災林を再生していく計画を立てます。

海岸防災林として供給する苗木は、クロマツの天敵であるマツノザイセンチュウ(松食い虫)に強いものでなければなりません。そこで緑地創造研究会はこの助成を活かし、また福島県、相馬市をはじめ地元の苗木生産業者や NPO 法人、東京農業大学などの協力を得て、福島県林業研究センター内に海岸防災林用マツ苗種子の採種園の整備を開始。2013年、抵抗性クロマツ採種園が完成しました。

松川浦を蘇らせたい。その気持ちを子供たちにも

2014年4月11日、採種園の竣工を記念して植樹祭が開かれました。植樹祭で独立行政法人森林総合研究所の星 比呂志育種部長は「全国からマツノザイセンチュウに強い樹の苗木を何百種類も取り寄せました。これにセンチュウを人工接種し、生き残った強い樹を育てていきます。これらが自然交配することで、より強い遺伝子を持つマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツを開発できるのです」と説明しました。その中からこの地域に適した47種類、2000本の母樹苗木を採種園に植樹。苗木は2から3年で採種できる状態に育ち、10年後には95万本分以上の種子が採れる計算です。この種から、さらに多くの苗木を育てていくこの方法は、日本初の取り組みとして注目されています。

植樹祭には、近隣の保育園の園児も参加しました。松川浦周辺の海岸林復旧事業には、約11万本のマツ類苗木を提供する計画です。「松川浦の築堤への植栽は2017年3月頃の予定ですが、海岸防災林として再生できるのはまだ10年以上も先のことです。ひょっとしたら、私たちはその姿を見ることができないかもしれません。この事業を子供たちに受け継いでもらい、地域住人の心の拠り所となる美しいなつかしい松川浦の原風景を蘇らせてほしい」。出席者たちは、そんな願いを子供たちに託しています。

写真説明

なつかしい緑を未来につなげようをスローガンに海岸防災林再生。事業が動き出した

福島県林業研究センターに造成された抵抗性クロマツ採種園

2年をかけて苗木にしたものを松川浦の築堤に植樹

公立小野町地方綜合病院企業団、第5次助成。公立小野町地方綜合病院整備事業

より質の高い医療を提供できる新病院へ

年内完成を目指して新病院の建設は着々と進行中

「震災で深刻なダメージを受けた旧館を建て直し、この地域の保健、医療、福祉、介護の充実を図る新病院を建設したい」。公立小野町地方綜合病院企業団は、この助成を使って、2014年12月の完成を目標に、警察や消防署が隣接する町の中心地に新病院を建設しています。

2014 年4月1日に建設現場を訪れた時には1階の床のコンクリートを打設中で、丁寧に何度も平らにならして仕上げていました。

明日からは、クレーンを使って鉄骨(建物のフレーム)を建てていく準備に はいっていきます。

写真説明

完成すると地上4 階建て、敷地面積、7,897.17平方メートル、延べ床面積8,533.45平方メートルに

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