しっかりとした助成金と仕組みづくりで応援
今年のパワーアップフォーラムは、瀬戸新理事長の挨拶から始まりました。
「私はこの7月に財団の理事長に就任しました。早速、新堂塾長の千川福祉会を訪れ、福祉の現場を拝見させていただきました。そこでお会いしたのは、自信を持って仕事をし、しっかり稼いだお金を自分の趣味に使い、人生を楽しんでいる利用者たちです。彼らの姿を見て、障害のあるかたたちの給料を3万円、5万円、7万円へと増額することで、世の中全体も明るくなっていくと確信しました。そのためには、福祉施設が経済的自立力をしっかりと備えていかなければなりません。売上を伸ばせる、より多くの利用者が仕事に就ける事業へと改善するには、計画はもちろん、設備投資も必要です。私たちは、いままで以上にしっかりとした助成金を準備し、みなさんを応援したいと考えています。障害者の施設はたくさんありますが、ひとつひとつは弱い存在です。どうやってスクラムを組んで強くしていくか。この仕組みをつくることも我々の大切な使命だと思っています」と挨拶しました。
福祉か雇用かではなく、福祉も雇用も、の支援へ
きょうされんの藤井専務理事は、時流講座で、平成26年に批准された障害者権利条約について解説しながら、今後の就労支援のポイントは合理的配慮イコール個別の支援にあると話しています。
「同じ知覚障害であっても1000人いれば1000人の違いがあります。一般の人と対等に振る舞うためには、1人ひとりに応じた合理的配慮が必要であり、特に労働面では、よりしっかりとした支援が必要です。尊厳ある、人間らしい仕事というディーセントワークには、当然、給料も含まれています。いま福祉施設にできることはなんでしょうか。福祉に比重を置くと雇用が軽くなり、雇用に比重を置くと福祉が軽くなると言う意見は、これまでさんざん出てきましたが、いまやそんなことを言っている状況ではありません。これからは福祉か雇用かで論議するのではなく、福祉も雇用もという、も、でつなぐ関係を進めなければなりません。職員の意識や技術の違いは、利用者の暮らしにそのまま現れています。これからは支援力を問われる時代になると、自覚してください」と呼びかけました。
時流講座の後は、小倉昌男賞の受賞者講演がおこなわれました。
給料が上がれば、利用者の暮らしが変わることを実証
次におこなわれたのは、ジャンプアップ助成金の助成先の代表者による活用事例報告です。大阪会場ではレストラン,ララ ロカレの河原 美和子さん( NPO 法人かたつむりの会代表)が「町家カフェという喫茶店を経営していましたが、もっと利用者の働く場を広げ、給料をアップしたいと、2軒目のレストラン,ララ ロカレを計画して、この開店資金を助成いただきました。現在、計27人の利用者が働いています。中には社会保険に加入し、10万円を超える給料を得ているかたもいます」と報告。東京会場では、ワークセンター日和山の吉川大幹さん(社会福祉法人新潟市中央福祉会,支援員)が「助成では、高齢者施設の私物クリーニング専用の乾燥機を購入しました。さらに、実践塾にも参加し、いかにして仕事の効率と売上を上げるかを学びました。この両輪がかみ合って、現在は、目標にしていた利用者の給料5万円にも到達。利用者は将来への不安も徐々に解消され、暮らし振りも大きく変化しています」と報告しました。
午後の部は、夢へのかけ橋実践塾の3人の塾長による活動報告からスタート。塾生たちの成長と今後の課題をそれぞれ説明しながら、来場者に向かって「大事なのは、一歩踏み出すこと。ためらわずまずは行動を」と呼びかけました。続いて、今年10月から新規開講する熊田塾長が塾の方針などを説明しました。
この感動を忘れないうちに職場でディスカッションを
最後におこなわれたのは経済的な自立力を備えた経営をテーマにしたシンポジウムです。各塾長と講演、報告をされたかたがたをシンポジストに、来場者から質問を求め、活発に意見交換をおこないました。
大阪会場では「給料増額にどのような事業を始めたらよいのか。利用者を積極的に仕事に取り組ませる方法とは。販路拡大のノウハウは」などの質問が出ました。
東京会場では「働くことに疑問を持つ利用者への説得は。どうすれば売れる商品がつくれるのか。また、学生参加者からも、障害のあるかたが社会で活躍する場をつくるにはどうしたらよいのか」といった質問があがりました。
シンポジストたちは、丁寧に質問に回答。互いの意見を出し合いながら会場全体で利用者の仕事の拡大と給料増額という目的と、それを達成するためになにをおこなうべきなのかについて、理解を深め合いました。コーディネータを務めた藤井氏からは「今日学んだことや課題を忘れないように、施設に戻ったら、早速、他の職員に話し、行動を起こしてください」と呼びかけました。
瀬戸理事長は「今日、講演いただいたみなさんは、障害のあるかたが自主的に働く仕組みをつくり、利用者それぞれに合ったいろいろな仕事を創出されています。彼らの長所を伸ばし、働く喜びを提供する。給料アップにつなげて暮らしの楽しみを広げる。地域で認められ、貢献していく。そんな利用者の姿を見ることが、みなさんのやりがいのひとつだと思います。我々は、こうした情報をみなさんに紹介したり、あるいは助成金で設備投資の一部を援助させてもらいながら、障害のあるかたたちを、今後も応援し続けたいと考えています」とエールを送りました。