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この街で、一緒に生きていく

仕事をとおしてみんなが少しずつ伸びていく

千葉県千葉市で、最も早くクロネコメール便配達(後にクロネコ DM 便配達)に携わった、ワークホーム、海の実。単独で配達できる2人を含めた、6人のメイトさんと支援員がひとつになって、丁寧に配達をしています。

千葉主管支店,蘇我センター

面積
4.2平方キロメートル
人口
31,982人
世帯数
15,564世帯

ワークホーム海の実

2006年からクロネコメール便配達( DM 便配達)を開始。1日の平均配達数約100冊。清掃作業、デコ石けんなどの手づくり品の製作、販売、ウォーターサーバーのキャップのリサイクルなどをおこなっている。

障害者のクロネコ DM 便配達事業

参入施設数
318施設
従事者数
1,535人。2015年8月現在

お問い合わせは公益財団法人ヤマト福祉財団 DM 便担当

電話,03-3248-0691、ファクス,03-3542-5165

http://www.yamato-fukushi.jp/

ワークホーム、海の実 は、2005年に作業所を開設。最初は移動販売のパン屋さんを事業の中心にしていました。おいしいと評判でしたが、同じ地域を廻るためか、しだいに売り上げが下降。何か他にみんなでできる仕事はないかと探していたときに、ヤマト福祉財団のホームページでメール便配達事業を知ったのです。2006年。千葉市内の作業所では初めての、メール便配達事業の取り組みでした。

現在の配達数は1日平均約100冊前後ですが、300冊近い日や1桁の日もあって、波があるとのこと。それでも6人のメイトさんが分担して、毎日楽しく配達をしています。

できることをひとつずつ

海の実 が担当するのは、千葉市中央区の蘇我1丁目と2丁目。 ABCD と4分割して、すべての家の名前を書き込んだ分かりやすい地図を作っています。そこに転居、入居などを書き込んで、情報を更新。また、住所録のノートも作り、住所で名前が確認できるようにしています。

毎朝、大きなテーブルを囲むように、 ABCD の担当のメイトさんが座って、仕分けをスタート。作業所に一番近い A の半分は、いつも日暮忠夫さんが担当しています。日暮さんは脳梗塞から半身が不自由となりましたが、杖を使ってゆっくりと配達。メイトさんになってから3年半で、長い距離を前よりも早くしっかりと歩けるようになりました。

この日は、 A の残りを担当する萩原薫さんと伊藤周平さんが共同作業を進めていました。萩原さんが小さな紙に住所を書くと、それを伊藤周平さんが付箋に、なぞるように同じ文字を書き写します。工程がひとつふえるけれど、それによって伊藤さんは文字を写すのがだんだんと早くなり、数字もきれいに書けるようになったそうです。

藤田浩明さんは、 D 地域の DM 便に付箋を貼る作業を担当。 DM 便をいくつかの山に分けて、ひとつずつ作業を終わらせていくことにより、集中力が増しました。支援員の新田美恵子さんは「本当に少しずつですが、前に進んでいくのがうれしいですね」と語ります。

付箋を使いこなして誤配が激減

海の実 では付箋を使うのが特徴です。まず、付箋に住所を書いて、ひとつひとつの DM 便に貼ります。次に、地図を赤く囲んで、配達先がわかるようにマーク。さらに、配達順に数字を書いたシールを付箋に貼り、地図にも数字を書き入れます。集合住宅への DM 便は、宛名とノートに書き入れてある名前とが合っているかを確認。違った場合は、付箋に確認と書きます。宛先に旧番地が書いてあることもあるので、必ず古い地図で照らし合わせます。加えて、メイトさんの仕分け作業の後は、必ず支援員が再度チェック。注意が必要そうな DM 便には、付箋と地図に緑色の印をつけるという慎重さです。

配達先では、付箋をまずポストに貼ります。付箋の宛先とポストの表記が合っているかを確認。端末を操作して投函、その後に付箋をはがすというやりかたです。

海の実 の新田恒夫代表は「集合住宅では、ポストが並んでいるので、上か下かに間違って入れることがありました。このやりかたでその間違いを解消できるように。それに職員が後ろからでも、ひと目でチェックできる利点もあります」と話します。

バッグを空っぽにする達成感

メイトさんの鈴木陽介さんは記憶力がよく、住所と地図だけで、宛先にたどり着くことができます。「空っぽになったよ」と、鈴木さんはすべて配り終えた達成感を、バッグを持ち上げて明るく表現しました。当日はヤマト運輸のドライバー歴28年のベテラン、柳澤秀基さんと一緒に配達。柳澤さんは同行ボランティアとして、休日に時々サポートしています。「楽しいし、心が休まります」と話します。鈴木さんは配達が終わると、必ず公園のブランコに乗るのが楽しみ。海援隊の 贈る言葉 を歌う元気な声が響いていました。

夢の実を育てたい

ヤマト運輸千葉主管支店,千葉中央支店,長内基羊副支店長は、「きめ細かいチェックを重ねているから、ほぼ誤配がありません。何か問い合わせがあっても、すぐに答えられるのは、すべてメモしているからなんですね。これからも信頼して任せられます」と語ります。

ヤマト運輸千葉主管支店サービスセンター,投函サービス担当,山本一彦係長は「私は障害者のかたを指導した経験があります。1から10の手順を1から100に細分化して、丁寧に指導する必要があるので、大変さは分かります。海の実 のみなさんに会ってうれしかったのは、この仕事に夢を持って励んでくれていること。私たちももっとできることを考えていきたい」と結びました。

「みんながこの仕事をとおして力を高めて、次のステップへ進めたら、新しい夢が生まれる。ヤマト運輸のみなさんと共に、これからも知恵をしぼっていきたい」と新田代表も夢を語ります。そして今日も、丁寧に、慎重に、仕分け作業がスタート。海の実 の元気な朝が始まります。

2015年4月1日より、クロネコメール便配達はクロネコ DM 便配達へと変わりました。

メイトさんとして8年目のベテラン萩原薫さん(左)と伊藤周平さん(右)は手をつないで配達。荻原さんの夢は、お母さんを旅行に連れて行くこと。

住所を書いた付箋に、数字を書き入れたシールを配達順に貼ります。

杖をつきながらゆっくりと配達する日暮忠夫さん。「慣れてくると、逆にうっかり間違うこともある。同じ名字の家も多いので注意しています」と話します。

左上:歌が大好きな鈴木陽介さん(左)と同行ボランティアの柳澤秀基さん(右)。上:朝の仕分け作業。ゆっくり丁寧に進めます。左: DM 便に付箋を貼っていく藤田浩明さん(左)。

「ヤマト運輸の仕分けなどを利用者さんの仕事にできたら、すばらしい。いつかその仕事に就けるかもしれないと思うことが、励みになると思う」と新田恒夫代表(右)。「支援員がサポートしながらでも、なにかの仕事を実現できたらいい」と支援員の新田美恵子さん(左)は話します。

左上: DM 便を元気に手渡す伊藤さん。上:緊張しがちな新田真理子さん(右)は少しずつ表情がやわらぎ、配達もできるようになりました。真理子さんの母である支援員の新田美恵子さん(左)と。左:ポストに貼った付箋と住所を確認してから投函する鈴木さん。

後列向かって左から:海の実,支援員金田愛さん、藤田浩明さん、萩原薫さん、日暮忠夫さん、ヤマト運輸千葉主管支店サービスセンター,投函サービス担当,山本一彦係長、ヤマト運輸千葉主管支店,千葉中央支店,長内基羊副支店長,新田真理子さん、海の実,新田恒夫代表、前列向かって左から:支援員,渡辺紀代美さん、伊藤周平さん、鈴木陽介さん、高部雅人さん、支援員,新田美恵子さん

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