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瀬戸理事長の塾長施設訪問.

重症心身障害者と家族のために,医療的ケアもできる福祉施設を.

4月25と26日、夢へのかけ橋実践塾で弁当、配食サービス事業に特化した塾を指導する楠元塾長の施設、キャンバスの会を瀬戸理事長が訪問しました。キャンバスの会は、さまざまな形で利用者さんに働く場を提供するとともに、介護、医療的ケアにも力を注いでいます。「4月1日、障害福祉サービス事業所 はながしま 内に はながしま診療所を開設し、医療と福祉を一つの場所でケアできるようになりました。これは重症心身障害者の母親として、私が長年求めてきた理想の形です」と楠元塾長は話しています。

紙オムツの手配、給食、クリーニングなど、障害のあるかたが必要とすることを一つひとつ自分たちの手で形にしてきたキャンバスの会。高齢者施設や地元のかたからの依頼にも応え、弁当、配食サービス、レストラン、リネンサービスなど、次々と事業化して利用者さんの働く場を広げている(AZM レストラン、CBS リネンサービス都北、施設外就労先の農業法人、おべんとうのまるよし、生活介護事業所なみき、株式会社丸佳、障害福祉サービス事業所 はながしま、はながしま診療所、CBS リネンサービス年見、給食センターキャンバス)。

キャンバスの会見学会日程.

4月25日.

4月26日.

利用者さんの自立のために、さまざまな形で働く場を創出.

社会福祉法人キャンバスの会は、弁当、配食サービス、食品加工、クリーニングなど、さまざまな形で利用者さんの働く場を提供しています。「1日のお弁当の製造数は、約2000食です。おべんとうのまるよしや給食センターキャンバスで、お弁当を製造、販売し、官公庁、企業、病院、個人宅、高齢者のデイサービスの配食サービスもおこなっています」と楠元塾長。

株式会社丸佳でも、お弁当や惣菜などを製造。宮崎市 J A 会館内には、ランチタイムになると200人以上のお客様で賑わうレストランも運営しています。

クリーニング関連で訪ねたのは、企業や飲食店のユニフォームをつくりレンタルすることで固定客の獲得に成功した CBS リネンサービス年見。コインランドリーを改装した CBS リネンサービス都北は、病院、高齢者施設などの私物クリーニングを専門にしています。

「弁当、配食サービスの利用者さんの仕事は、お弁当の盛り付け、配達などです。クリーニングでは、アイロンがけ、折りたたみ、私物クリーニングの選別などを担当。他にも製麺、野菜づくり、野菜のカットや袋づめ、清掃作業などがあります。利用者さんは、それぞれ得意とする仕事で能力を発揮しています」。

中には技能を高め、後輩の指導係を兼任する利用者さんもいました。各人が仕事に誇りを持ち働く姿は、とても頼もしく見えます。

重症心身障害者の自立とは、食べて眠り暮らすこと.

「知的や精神に障害のあるかたは、働き給料を得ることで社会的自立を目指すことができますが、日常の活動すべてが大変な重症心身障害者にとって、食べることや眠ること自体が自立です」と楠元塾長。今年4月に開所した、はながしま診療所は、平成26年6月に建設した、障害福祉サービス事業所 はながしま(以下、両施設をあわせて、はながしま)の中にあります。はながしまを利用するかたの中には、人工呼吸器や気管切開、また胃瘻などの手術をされているかたが多くいらっしゃいました。

「私には、重症心身障害者の子どもがいます。かつて医師からは長くて7年と宣告されましたが、医療の進歩は目覚ましく40歳を超えた今も元気に暮らしています。私がずっと心配し続けているのは、親亡き後のこの子の将来。重症心身障害者の入所施設は、全国的にもわずかで、医療的ケアが必要なため一時預かり(ショートステイ)ができる場も身近にありません。私は、子どもたちを安心して預けることができる施設を地元につくりたいと、12年前にキャンバスの会を立ち上げたのです」と楠元塾長。

瀬戸理事長は「東京都立小平特別支援学校を訪れた際、医療が必要な障害児などを持つ親が大変な苦労をして学校に通わせている現実を知りました。子どもたちが学校を卒業後、どこに かよう ことができるのか、本人と保護者をどうケアできるのかが気になっていましたので、はながしまを是非見学したかったのです」と述懐します。

1人の利用者さんに3人のスタッフ体制でケア.

「はながしまの利用者さんの9割が医療型で、なんらかの医療的配慮を必要とします。通常の介護施設では、利用者さん1人に約1.7人のスタッフと言われていますが、ここでは看護師、介護士、送迎ドライバーと3人体制でケアしています。移動や食事の途中、また眠っている間もいつ痰が絡み吸引が必要になるのかわかりません。入浴の際も、体を洗う介護士の側に看護師がついてサポートしています。これをお母さんたちは、毎日自分でおこなっているのですから、精神的にも肉体的にもギリギリの状態です」。

少しでも親のストレスを軽減したいと、楠元塾長は、行政などに重症心身障害者の施設の必要性を訴えかけてきましたが、なかなか進展しません。「待っていてもダメ。自分たちで動き出さなければ」と考えた楠元塾長は、大半を自己資金で(県産の木材を使うことで一部助成)はながしまを開設しました。

福祉の視点で医療的ケアをおこなう。それが親の求める理想形.

「本当に自ら建設されるとは思ってもいませんでした」と話すのは、はながしまの副院長 清山知憲医師。清山氏は、県議会議員でもあり、開設前から楠元塾長の相談を受けていました。

「開所した はながしまを訪れ、利用するかたや介護、看護にあたるスタッフの姿を見た時、これは福祉施設ではない、医師の力が必要な医療施設だとわかりました。そこで医者としてなにかお手伝いさせてほしいとお願いしたのです」。清山氏と院長、さらに非常勤の医師2名の4人体制で週5日の診療をおこない、保健所に診療所として認可してもらう体制を整えました。

「私を含め医師の多くは、重症心身障害者の診療経験がほぼありません。たとえば、一般の患者さんの診察は1日1回程度が普通ですが、重症心身障害者にはもっと多くの回数が必要です。こうした福祉的な経験、視点がなければ、親は安心して預けることができないのだと、初めて知りました。重症心身障害者へのノウハウを持つ国立大学病院などで、一部ベッドを用意しているところもありますが、多くて6床程度。はながしまは、19床で規模的にも全国初の試みとなっています」と清山氏。

楠元塾長は「19床のうち3床が畳です。添い寝が必要なお子さんもいますから、親の要望を満たすためにいろいろな点で配慮しました」と説明してくれました。

はながしまの取り組みを発信し医療関係者に現状を伝えたい.

はながしまの登録者数は、生後6ヵ月から50歳代の百十数名。宮崎県の重症心身障害者は約650名と多くのかたが支援を求めています。「はながしまでは、ショートステイと短期入所が可能ですが、現在、施設長(作業療法士)、看護師6名、介護士13名の体制で、これ以上の受け入れは厳しい」と楠元塾長はため息をつきます。

瀬戸理事長は「全国規模で考えると、在宅のみ、親の力だけで頑張られているかたは大変な人数になると思います。さまざまな規制やお金の問題などを行政が対応する必要がありますが、私たちにもなにができるのか考えていきたい」と話しました。

「大切なのは、医療関係者を含め多くのかたに現状を理解いただくことです。大半の病院が重症心身障害者のことを知る機会が少なく、親の願いと病院のケアにかい離が生まれています。いま私は、親の希望も反映して患者さん1人ひとりのカルテづくりを進めています」と清山氏。それを母子手帳のように持てば、どこでも同じ診療を受けることができると楠元塾長。

「現在、この地域を医療ゾーンに認定していただくよう行政に働きかけ、重症心身障害者が入所できる病院建設の準備も進めています」。楠元塾長は、はながしまを親が求める理想の施設にするため、既に次の行動に移っていました。

「木のぬくもりを感じる穏やかな空間で過ごしてほしい」。はながしまは、宮崎県産材を使用することで県から助成も受けている。

「重症心身障害者をお預かりする現場には、医師の手による医療的なケアがいかに必要かを痛感しました」と清山副院長。

車から直接ベッドや車イスが建物に はいれるように床の高さを調整。車椅子のタイヤを自動クリーニングする装置も床に設置した。雨に濡れないように屋根付きの車寄せにしている。

医療用ベッドや入浴用設備をはじめ、すべてに重症心身障害者をケアできる専用の体制を整えている。

障害の重さを問わず、すべてのかたの自立を支援 、社会福祉法人キャンバスの会.

社会福祉法人キャンバスの会は、弁当の製造、配食サービス事業、クリーニング事業などで、利用者さんに多様な仕事を創出し、社会的自立を支援しています。また、生活介護支援として、生活介護事業所やグループホームの運営、居宅介護支援、地域生活支援などを複合しておこなっています。

今年4月、重症心身障害者の医療的ケアをおこなう診療所を障害福祉サービス事業所内に併設。「障害の重さにかかわらず、それぞれが求める自立」を支援しています。

社会福祉法人キャンバスの会.

介護、医療的ケアの場.

利用者さんや障害のあるかたのケア.
重症心身障害者の一時預かり、短期入所.

利用者さんの働く場.

弁当の製造、販売.
クリーニング: 3事業所.
レストラン.
弁当の配食サービス.
そのほかの働く場.
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