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リレーコラム、夢をつないで、第5回。

NPO 法人就労継続支援 A 型事業所全国協議会、理事長、久保寺一男。

たとえ、重い障害があっても、働くいきがいを。

相模原市の施設での未曾有の事件は、重苦しい心象を残しました。憎悪だったらまだ理解ができます。しかし、人間が他の人間を不要な存在として抹殺した今回の事件、理解の限界を超えていて、つくづく人間の存在意義を考えさせられました。

翻って、私たちが携わっていた障害者就労支援の世界はどうであろうか。21万人の障害者が非雇用の福祉的就労という名のもとに月平均工賃が1万数千円程度、しかも労働保険も適用されないのに、実態は労働形態であります。私も含めた福祉関係者、行政府、立法府の責任は重いように思います。生きづらい人たちに同情はするけれど、もっともらしい理由をあげつらうだけのようにも感じます。

平成18年、一般就労の難しい障害者の受け入れ先として我が福祉工場、しんわルネッサンスを立ち上げ、しかし、自立支援法でやむなく平成20年に A 型 (脚注) に転換しました。そのころ営利企業が参入できるようになったものの、運営が上手くいっていない事業所が多いことを知り、平成24年に神奈川県 A 型事業所連絡会を立上げました。それを各県に呼びかけていこうとした矢先でした。平成26年6月12日に NHK ニュース9で悪しき A 型事業所の実態が放映されました。 A 型事業を運営している者たちには衝撃的でした。 A 型事業の将来を憂慮、危機感を持った同志を募り、平成27年2月28日に A 型事業所全国協議会を設立しました。

一般の企業等で働くことが難しい人たちが、福祉的支援を受けながら労働者としてプライドをもって働き、いち市民として地域生活をしてもらいたいとの想いでした。設立総会の熱気は、このままではいけない、何とかしなければいけないとの皆さんの篤い想いでありました。あれから2年が過ぎようとしています。これからも健全な運営をする A 型事業所が増えることを推進、啓発していくこと。日本の障害者就労支援制度のなかで、 A 型が中間的就労分野で一定の役割を果たす可能性が高いことを訴えていこうと考えています。

Profile.

1951年生まれ。1974年3月、工学部土木学科卒業、同年4月、建設会社入社。1984年社会福祉法人進和学園に転職、支援員として勤務。2002年4月、授産施設 進和職業センター施設長。2006年3月、障害者支援施設 しんわルネッサンス施設長。2011年4月、同統括施設長。2015年4月、NPO 法人就労継続支援 A 型事業所全国協議会、略称 全 A ネット理事長に就任。

脚注: A 型:就労継続支援 A 型事業所。雇用契約を結び、最低賃金を保障する制度。

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