ヤマト福祉財団 News.
- ヤマトグループ賛助会員向けニュース。季刊。
- 発行部数13万部、非売品。
- 2017.7.20 Summer.
- No. 55.
平成29年度福祉助成金事業、助成金贈呈式。
私たちにできること、私たちができること。
表紙写真。
ジャンプアップ助成金を贈呈した、熊本県小国町、陽なたぼっこ のお弁当配達に、ヤマト運輸熊本主管支店の熊澤宏主管支店長と、労働組合の渡邊猛支部執行委員長が同行しました。
日本障害フォーラムが推進するイエローリボン運動に賛同しています。
リレーコラム、夢をつないで、第6回。
社会福祉法人 訪問の家、前理事長、日浦美智江。
はたらき。
日本で初めて出来た重症心身障害児(者)の通所施設、社会福祉法人訪問の家、朋 は昨年30周年を迎えた。その初代の施設長を務め、理事長を6年間務めた年月を振り返ると、なんと多くの心を動かされる出来事、場面に出会ってきたことかと、改めて思う。
開所して間もなく、近くの小学校から七夕集会に招待をされた。みんなは車椅子に乗り、職員が、日傘で影を作りながら、小学生の皆さんと輪踊りを楽しむという体験をした。4年目だったと思う。それまで職員がしていた挨拶を、脳性まひで緊張は強いが、「アー」と声がでる、たかのりさんにお願いした。校庭で全校児童を前にしての挨拶。果たして彼が上手に声を出せるか、心配している私たちの前で彼は一生懸命、「あーあー」と声を出し、見事に大役を果たした。
次の日、ひとりの女性教師から私に手紙が届き、そこには、こう書いてあった。「彼のアーアーという挨拶を子どもたちが一生懸命聞いていた。私たち教師が子どもたちに十分伝えられない、力いっぱい生きること、チャレンジすること。それらを彼は見事に子どもたちに伝えてくれていた。何かみなさんにやってあげている、と思っていたが、間違っていた。やってもらっているのは私たちだった。これからは子どもたちをどんどん朋に行かせたい。朋のお兄さん、お姉さん、子どもたちに一杯教えてやってください」。
以来、小学校の子どもたちは気兼ねなく遊びにやってくる。そして、3年生、4年生は毎年、朋のみんなとの交流プログラムを楽しんでいる。
たかのりさんは、身体を使って報酬を得るという働きはできない。しかし、小学校のみんなと 朋 とを結ぶ大きな、はたらき をしてくれた。
人間は皆、関係の中で生きている。どんなに障害が重くても、人は関係の中で大きな はたらき をすることができる。彼は、また、私たち職員にも、みんなの はたらき の場面を地域の中でつくることが、みんなが地域で生きる大きな意味だ、と伝えてくれたのだった。今もはっきりと、小学校校庭でのあの場面が目の中に残っている。
Profile.
1938年4月6日生まれ、1962年3月、広島女学院大学英文科卒業。同年、横浜市立中村小学校訪問学級指導講師。1983年、障害者地域作業所、朋 指導員。1986年、知的障害者通所更正施設、朋 施設長。2000年、社会福祉法人訪問の家理事長。2003年、横浜市教育委員会委員。2005年社会福祉法人十愛療育会理事長。2012年、株式会社福祉新聞社取締役。2014年社会福祉法人横浜市栄区社会福祉協議会会長。同年、劇団文化座理事。2017年、社会福祉法人訪問の家顧問。第2回ヤマト福祉財団賞受賞者(2001年)。