米沢市は、米沢盆地の中心に位置しており、夏は高温多湿、冬は雪に覆われる気候の厳しい地域です。このまちで、フラワーコート米沢は、平成18年の3月に、クロネコメール便(後に DM 便)配達事業を始めました。当初は1名だったメイトさんも、13年目となる現在は、全員で7名。配達エリアが広いため、車と自転車、徒歩に分けて配達しています。
大きな声で毎朝、確認事項を斉唱。
フラワーコート米沢の朝は早く、7時半には DM 便の仕分けが始まります。エリアごとに、てきぱきと DM 便を仕分け、地図にマークをしながら、配達先を確認していきます。
仕分けが終わると、さあ、朝礼。ここでは、毎日、必ず、おこなう儀式があります。それが、配達時の確認事項の斉唱。「イチッ、お客様へのあいさつ」、「ニッ、お客様の名前と、番地の確認」と続き、「5、タオルとビニールの携帯」、「10、配達中は携帯をマナーモードにしないで、音が聞こえるようにしておく」など、細やかな確認を、全員で高らかに読み上げます。
最後は、緊急連絡先として、フラワーコート米沢の住所と、電話番号を斉唱。「今日もいちにち、よろしくお願いします」と元気に締めくくりました。
確認をくり返すことで、プロの仕事になっていく。
「仕事をするなら、だれでもプロにならないといけません。ミスは許されないんです」と、フラワーコート米沢の赤尾雷水理事長、施設長は話します。「そのためには、繰り返しの訓練がとても大事。確認を何度もすれば、みんな、しっかりできるようになります」。
その言葉どおり、フラワーコート米沢では、確認を徹底しています。雨や雪の日は DM 便がくっつきやすいので、1冊であることを確認すること。配達に出かけたら、11時、13時、14時、15時に、携帯電話で状況を報告することなど、その内容は細部にわたります。また、職員の情野由典さんは、「他の地域を忘れないために、ひとりが同じ場所ばかりを配達しないよう考えています」と話します。
こうした日々の努力を続けることで、今や東北で配達数第1位、全国でも第2位の成績を誇るまでになりました。人口密度が低く、配達効率の悪い地域にもかかわらず、達成した成績。平成27年には、工賃向上の成果で、山形県知事から表彰されています。
長靴を履きつぶすほど、過酷な冬の配達。
特別豪雪地帯に指定されているこのまちの、冬の配達は過酷です。道も家も深い雪で覆われます。顔を上げられないほどの吹雪の中、徒歩での配達は、通常の倍の時間と体力を要するといいます。メイトさんを始めて13年目のベテラン、長谷部正子さんは冬の3ヶ月で、長靴を3足も履きつぶすそうです。玄関の位置を高くしている家が多く、凍った階段で転んでしまうメイトさんもいるとか。
この時期はさぞかしつらいだろう、と、冬の配達はイヤではありませんか、と、メイトさん達にたずねました。すると、「そんなことはありません」と、意外にも明るい返事。地元のかたのために、プロの仕事をしている、という自信と充実感が、彼らの表情に表れているようでした。
このまちのDM便にとって、欠かせない存在。
ヤマト運輸山形主管支店 サービスセンター 永山直樹センター長は、「12年以上もの長い間、つねに安定した品質で仕事をしてもらっています。大変、感謝しています」と、フラワーコート米沢の仕事を高く評価します。
「私たちのエリアは、米沢市の約4分の1を占めますが、そのほとんどの DM 便をこちらで担当してもらっています。安心しておまかせできますし、本当に助かっています」と話すのは、ヤマト運輸山形主管支店 米沢西支店 水野浩一支店長。この地域に欠かせない存在だと語ります。
フラワーコート米沢の確認事項には、こんな取り組みもあります。ひとり暮らしのお年寄りの家では、必ず、「おはようございます、メール便です」と声をかけて 置いてくること。地域の安全を考えて、自主的に始めた活動だそうです。
お年寄りの見守り、という、地域の一員としての役割を、DM 便配達をとおして、メイトさん達が、しっかりと担っていたのです。
上杉神社を背に、ペアを組んで配達中。左の長谷部正子さんは、スタート時からのメンバーで、リーダー的な存在。「最初は不安でしたが、今は配達するのが楽しい」。 右の舟山陽さんは、三輪自転車に重い DM 便をのせてサポート。「この仕事は自分にあっているので、続けたいです」。
嵐田洋一さん。「 DM 便を始めてから、よく眠れるようになりました。65歳までがんばりたい」。
小杉恭道さん。「一生懸命やっているね、と言ってもらえるとありがたいです」。
慣れた手つきで DM 便を入れていく鈴木幸平さん。
車内で相談しながら配達をする、左の柏倉綱裕さんと、右の吉田智子さん。
DM 便を手渡しする吉田さん。いつも笑顔で挨拶をします。
車を運転しながら、ひとりで配達をする、ベテランの鈴木幸平さん。担当地域の配達は、ほぼすべて把握しているといいます。「地元のみなさんに、いつも助けてもらっています」。
真宗大谷派、養善寺の住職でもある、フラワーコート米沢の赤尾雷水理事長、施設長。「 DM 便配達で感じるのは、メイトさんの変化です。生活が規則正しくなって、健康的になります。会話が苦手だった人も、あいさつができるようになりました。続けてよかったと思います」。
田園地帯を、車に乗ってペアで配達。左の柏倉綱裕さんは運転も担当。「ありがとうと言われると、始めてよかったと思います」。右の吉田智子さんは、メイト歴、約10年。「雪の日は転ぶこともあるけれど、配達は楽しい」。
前列左より、フラワーコート米沢、柏倉綱裕さん。鈴木幸平さん。吉田智子さん。長谷部正子さん。職員、小林 カルミナ エヴァンゲリスタさん。赤尾慶子理事。後列左より、職員、情野由典さん。赤尾雷水理事長、施設長、小杉恭道さん。舟山陽さん。ヤマト運輸山形主管支店、米沢西支店、水野浩一支店長。ヤマト運輸山形主管支店、サービスセンター、永山直樹センター長。ヤマト福祉財団東北支部、小原守事務長。