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私たちの賛助会費が活かされています。障害者給料増額支援、助成金。助成先レポート、ボリューム 41。

地域の魅力を詰め込んだ、究極の肉まん。

中川運河など、多くの河川が走る中川区。運河沿いは、交通の便の良さから、鉄工所や、倉庫などが目立つ一方、中西部には、生産緑地がまだ残るエリアです。昭和50年に市が設けた作業所を源流とする、わーくす昭和橋は、メディアも取り上げる、絶品の肉まんを開発して、平均給料、25,500円を達成しています。

社会福祉法人、みなと福祉会、わーくす昭和橋。愛知県名古屋市中川区。

宿題は、"ブランド野菜を生かせ"。

市の作業所を、2012年に、みなと福祉会が引き継ぎ、スタートした、わーくす昭和橋。当初は配食サービスを事業の柱に考えていたそうですが、「いろいろと試行錯誤しているうちに、気づいたら、肉まん事業がどんどん軌道に乗ってしまったんです」と、副所長の岡本やすしさんは、謙遜気味に語り出しました。

名古屋市中川区は、じつは、ある野菜の日本発祥の地です。それは白菜。中国を経て、日本に白菜がはいってきたのは明治時代。しかし、栽培は難しく、当時できたのは、葉先が巻かないものばかり。現在見る、結球した白菜の普及の陰には、この地で10年にわたって栽培改良にあたった、野崎徳四郎の存在がありました。

この国産、第1号、野崎白菜で地域の活性化を目指していた、中川区ブランド野菜製品開発研究会に、岡本さんたちは、2013年に参加します。同研究会は、区農政課を中心に、大学や、地元の生産者や、飲食店らが集まって、野崎白菜を使った、新メニューの開発に取り組んでいました。

「地域のそうした動きに参加することで、新しい出会いや、学ぶことがあるかもしれない」。そんな軽い気持ちで参加すると、任されたのは、野崎白菜を使った肉まんの開発でした。

プロにはプロの技がある。

半年間でなんとか形にしたものを研究会で披露すると、悪くはないが、売り物としては決定打に欠ける、との評価。素人の限界でした。しかし、研究会の仲間から、「陳 建一氏の兄弟子が中川区にいるよ」との話を耳にし、すぐにプロの教えを請いに向かいました。

すると、「調味料にも加える順番がある。生地をこねるにもタイミングがある。素材は同じでも、それだけで全然できあがりが違ったんです」。料理人が授けてくれたコツは、料理本に書かれていないことばかりでした。

名古屋肉まん本舗のブランドで売り出した自慢の肉まんは、こうして完成しました。

商工会議所の経営塾にも参加して、松坂屋の催事販売の出店を勝ちとったのは2015年のこと。「慣れないプレゼンに緊張しましたが、なんとかクリアしました」。気になる売上は、「予想を遥かに超えて、2500個ほど売れました」。断トツの売れ行きでした。

じつは、岡本さんには秘策がありました。経営塾で、メディアと上手につきあうことは大事と教わったとおり、知る限りの伝手を頼って、地元テレビ局や、中日新聞に取材をお願いしたのです。どちらも好意的に採りあげてくれ、これが来店に拍車をかけたのです。

とはいえ、「催事での販売は、職員総出の大掛かり。この体制はずっとつづけられない。自分たちの力量もよく分かりました」。現在は、自前の EC サイト、きょうされんや、 JA あいちのカタログ販売に軸足を置いて、利益率優先の営業を心がけています。

どうせなら、注目浴びる"究極"を。

松坂屋での催事を経験し、次はどこを目指そうかと考えていた岡本さんたちは、翌年、県の工賃向上アドバイザーの派遣事業に申し込みました。そこで発破をかけられたのが、究極の肉まんプロジェクトです。

「私たちも、やりたいとは思ったんですけど、お金のかかることなので、後ろ盾がないと、ちょっと動けない」と悩んでいると、 JA あいちの頒布会の注文が飛び込んできました。これならば、前年から確実に注文が見込め、算盤もはじけます。

生産力も、当財団の助成を得て導入したドウコンディショナー、生地の発酵を自動化する機械によって、1.5倍に増強しました。

「不思議なことに、自分たちが一歩進むと、引き合いや、助けてくれる人が現れるんです」と岡本さん。

究極の肉まん、鳳凰は、名古屋コーチン以外にも、素材は、自然栽培でつくった県内のものを、皮も、ごく一部の点心師しか継承していない老麺を使って、徹底的にこだわり抜きました。また、カレーコーチンまんも、複数の通販サイトで入賞し、注目を浴びており、ナゴヤドームでの販売も打診されているとか。直営店で、できたてを売りたいという夢もあります。

素直に耳を傾け、物事を究めてきた、わーくす昭和橋は、まだまだ話題を呼びそうです。

手作業で生地をのばし、ひとつひとつ包んでいく。

プロ並みのスピードで肉まんを包んでいく Y さん。

いきなり、「肉まんをやれ」って。休みの度に家で試作。家族も、最初は、美味しいと言って食べていましたが、と、岡本副所長。

肉まんの種を計量して、ひとつずつに丸める。

包みかたが均一ではないのが手作りの証。肉まんアーティストたちの作品として、それもまた味わいのうち。

一番大きいものが、招福カレーコーチンまん。白いものは招福肉まん、みどり色が抹茶あんまん、桃色は白あんがはいった梅あんまん。

事業所の中にある実演、販売コーナー。

スパイシーなカレー餡と、とろり玉子の招福カレーコーチンまん。500円、税込。

助成を活用して、昨年7月に導入された、ドウコンディショナーで、生産力が1.5倍に。

労働組合支部執行委員長、助成先訪問、シリーズ36。

ヤマト運輸労働組合、名古屋支部執行委員長、西村 貴志さん。

障害のあるかたの真面目さを応援したい。

彼ら、彼女たちの仕事ぶりには感心しました。発酵や、蒸し時間もそうですし、計量も、しっかりグラム単位で計られていました。一切の作業に手を抜くことなく、むしろ、私たちよりきっちり、お仕事をされているのが分かり、素晴らしいと感じました。夏のカンパで集まった善意で、食品機械を助成させていただきましたが、機械化によって作業効率が上がり、利用者さんのお給料がアップすることは、とても意味あることです。

皮も、もっちりしていて、肉汁があふれ出す肉まんは、お世辞抜きで美味しかった。もっと、この肉まんの存在を広めていきたいですね。

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