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賛助会員のみなさんへ。財団のしごと。福祉助成金編。

障害者の自立のため、福祉助成金は、どのような仕組みで活用されているか、ご存じですか。

障害のあるかたの幸せな生活を築くために役立ててほしい。そんな思いが込められた、ヤマトグループの賛助会員からの賛助会費、ヤマトグループ企業労働組合連合会からの夏のカンパなどをもとに、私たちはより効果のある、意義のある、事業活動の推進を追求しています。では、どのような事業を、どのような仕組みで推進しているのか。ここでは、財団のしごとをピックアップし、その流れ、仕組みまでも解説。みなさんの寄付が形になっていく姿をお伝えします。

今回取り上げるのは、財団の事業の柱のひとつ、福祉助成金です。

福祉助成金が変わります。

みなさんのご厚意のもと、福祉助成金は、2020年度で27回目、助成金の累計総額は、17億1,587円となりました。今後は、障害のあるかたが自立して生活することで、もっと幸せを感じられるように、よりさまざまな用途、角度から、福祉施設、団体のお手伝いができるように、福祉助成金の仕組みなどを見直しました。その内容は、障害のあるかたがたの給料を増額するための新規事業の立ち上げや、生産性向上に必要な設備や機器を購入する資金、障害者給料増額支援助成金と、障害のあるかたがたの福祉を増進するための事業や活動の資金、障害者福祉助成金のふたつです。2021年度の募集要項はホームページに掲載。助成を必要とされる施設、団体を募集します。

2021年度の福祉助成金は。

ヤマト福祉財団助成金。

障害者給料増額支援助成金。助成金額、50万円から、上限500万円。

障害者の給料増額に努力し、取り組む事業所、施設に対し、さらに多くの給料を支払うための事業の資金として助成。

障害者福祉助成金。助成総額、一千万円。

会議、講演会、ボランティア活動、スポーツ活動、文化活動、調査、研究、出版など、障害のあるかたの幸せにつながる事業、活動に対して助成。

27年間の福祉助成金で。

助成金累計総額、17億1,587円。

助成先、累計件数、2,141件。

基本的な助成までの流れは。

公正な選考により、助成先を決定します。

1. 助成を求める福祉施設が申請書を提出。

利用者支援と、事業経営の両観点で、条件を満たすかを検討。

2. 書類選考をおこないます。

申請書を確認し、助成先を絞り込みます。

3. 選考委員会で決定後、各地で贈呈式をおこないます。

本当に正しく効果的に活用できるかを討議し、助成先を決定。

4. 実際の導入状況を確認します。

計画通りに設備などが導入、活用されているかを確認。

コロナのいまも、あのときの助成が、利用者さんの幸せを支えています。

助成後、福祉施設では、利用者さんの仕事ぶりや、給料などはどう変化したのだろうか。いまもその助成は役立っているのだろうか。現在、新型コロナウイルスの影響を受け、助成先は、あの頃とは異なる状況下に置かれています。そこで、インターネットを使ったリモート取材で、ふたつの助成先施設に、お話を伺ってみました。

エヌピーオー法人 ピアファーム。福井県あわら市。

丘陵地帯の休耕地を、利用者さんたちと力を合わせて、果樹園に再生したピアファーム。2011年には農水省の認定農業者の認定も得て、農福連携が注目される前から、本格的な農業経営を進めてきました。市場でも珍しい新品種のナシなら、通常より高い単価での販売も容易、と、2013年度ジャンプアップ助成、500万円で、新品種梨 導入事業、新品種のナシ苗の購入、ナシ棚の整備などを開始。2019年度の平均月額給料は、45,489円になっています。

2013年度、ジャンプアップ助成金。
500万円。
助成内容。
新品種梨 導入事業。
事業形態。
就労継続支援B型。
事業内容。
農業。ナシ、ブドウ、路地野菜の栽培。
利用者人数。
定員20名。現員24名。
2019年度売上見込み。
4,376万円。
2019年度月額平均給料。
45,489円。

もう一つの事業の柱、産直市場ピアファーム、スーパーの経営と合わせると、昨年度の売上は、1億2,300万円です。

2013年度に助成金で整備した新品種のナシ園は、利用者さん、みんなの力で、大きく育っています。

社会福祉法人、ゆたか福祉会、ワークセンターフレンズ星崎。愛知県名古屋市。

DM の封入封かん業務を事業の柱に、売上拡大と、給料増額を進めてきた、ワークセンター フレンズ星崎。それを後押ししたのが、2016年度、ジャンプアップ助成金で購入した、自動重量検査装置です。正しく計量、検査できる人しか担当できなかった検品作業が、この装置の導入で、だれでも簡単、スピーディにおこなえ、作業の効率と品質を確実に向上。その成果は数字にも現れ、2014年度、月額平均給料、32,150円から、2019年度は51,495円へと増加しています。

2016年度、ジャンプアップ助成金。
500万円。
助成内容。
自動重量検査装置の整備。
事業形態。
就労継続支援B型、生活介護、就労移行支援。
事業内容。
DM の封入、封かん。
利用者人数。
15人。
2019年度売上。
1,961万円。
2019年度月額平均給料。
51,495円。

助成で自動重量検査装置を導入。機械化でスピードアップと、ひとりひとりの作業品質が向上しました。

助成いただいた新ナシ園は、私たちの事業の旗印。

ひろふみ 理事長。

Zoomで聞きました。

質問:新型コロナの影響は、利用者さんや、ナシ園に出ていますか?

林:ナシはコロナと関係なく、順調に育っていますよ。5月中旬現在は、甘く大きな実となるようにつぼみの数を減らす摘果の真っ最中です。利用者さんの健康管理には細心の注意を払い、出勤前は必ず検温し、三密にならないように作業しています。

質問:観光農園も運営されていましたが。

林:毎年、夏に開園していますが、今年はどうなるかはまだわかりません。しかし、こちらから販売を仕掛けていこうと事業計画を立て、すでに1月から、段取りを含めて動いています。なんと言っても、販売あっての農業ですから。

質問:売り切る覚悟でしたね。

林:助成いただいたナシ園は、まさにその象徴です。3年前から徐々に収穫できるようになり、商品価値の高い新品種のナシは、売れ行きも好調です。いまは10エーカー、1反あたり、30万円の収益ですが、いかに成園するかで80万円以上に、200万円も夢ではありません。しかも、ナシ棚の寿命は20年くらいと言われていますが、やり方次第で、50年以上も長く収益を上げ続けることができます。それが、お米や、野菜とは違う、果樹園の面白さであり、可能性は無限大です。

質問:特別な栽培方法が必要ですか?

林:ナシ栽培の基本、ルーチンワークを守っていくことです。たとえば、日々丁寧に落ち葉を掃き掃除すれば、病気を防止できます。健康で良い品質のナシなら、同じ面積でも出荷量が増え、収益率も上がります。しかし、人手が足りない農家では、こうした手間のかかる作業は難しいのですが、うちには農業を楽しみに働く、たくさんの利用者さんがいますからね。

質問:利用者さんへの技術指導は?

林:利用者さんは、各人のやりやすいやり方で働いていますが、先ほどのルーチンワークを外さなければ、自然に栽培技術も身に付いていきます。私たちの考えに賛同し、パートなどで協力いただくベテラン農家の熟練した技、やり方も良いお手本です。

質問:地元の農業にも貢献していく、と。

林:あわら市では、農家も、育ててきたナシ園も、段々ととしを重ね、若い力が必要とされています。私たち福祉施設も、もっと地元に貢献したいと考えていますが、その気持ちをこの助成が後押ししてくれているのです。助成金の看板を見ることで、ここはきちんとやってくれる施設だ、と、地元のみなさんに信頼いただくことができる。私たちにとっては、錦の御旗のような存在ですね。

脚注:成園とは、費用がプラスになり、利益が出た果樹園のこと。

仕事のありがたさを再認識。新たな領域にも挑戦したい。

稲垣伸治 副所長。

Zoomで聞きました。

質問:新型コロナの感染拡大で、利用者さんや、仕事への影響はありますか?

稲垣:愛知県は、5月11日取材時で、新たな感染者の数も減り、利用者さんのほぼ全員が元気に、つうしょしています。ただし、仕事量は通年の半分以下に。春先におこなっていた、大学のオープンキャンパスの案内など、ゴールデンウィーク向けイベントの大半が、自粛のため、キャンセルになってしまいました。

質問:昨年の新堂塾のフォローアップ研修では、じか受けのお客様も増えて、好調と伺ったばかりでした。

稲垣:助成で導入した自動重量検査装置も活用し、生産効率と、品質の両方のレベルが上がっています。これを武器に、営業をかけ、じか受けのお客様は約23社まで増えました。一社の受注量は多くありませんが、単価が高いので、売上は増加していました。

質問:助成の成果が出てきていた、と。

稲垣:導入前の検品作業は、正確に計量、判断できるノウハウを持つ利用者さん2名と、職員が担当して、やっと毎時1000通ほど。その作業を、助成していただいた機械を使うことで、利用者さんひとりで、毎時3000通もこなせるようになりました。いままで検品を担当していた利用者さんは、職員がおこなっていた区分けや、資材準備などの難しい仕事へ。利用者さんの仕事領域は広がっています。利用者さんの中には、もっと上手く仕事をこなせるようになりたい、と自分に合う指サックや、ペンなどの道具を給料で購入するかたも。ひとりひとりの取り組み姿勢と能力が向上し、確実に生産量も増えてきています。

質問:せっかく良い流れになっているのに、つらい状況ですね。

稲垣:仕事の大切さを、職員も、利用者さんも痛感しています。でも、落ち込んでいても仕方ありません。この機会に、利用者さんの仕事のスキルを高めよう、と勉強会を開いています。職員も同様です。若い職員の中には、利用者さんが働くための支援や、DM の封入封かんについての専門知識が不足している者もいます。そんな職員の意識改革や、教育も、いまのうちに進めているところです。

質問:今後の展開としては。

稲垣:私たちの強みである、品質の高さと、スピード感で、ひとつひとつ仕事を取り戻していきます。そのときには、自動重量検査装置にも、しっかり活躍してもらわないと。今後は DM で築いた、お客様とのつながりを活かし、ロジ的な仕事への参入も視野に入れています。みんなで力を合わせて挑戦あるのみ、ですね。

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