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巻頭企画、ヤマウチ理事長と、ヤマト労連の森下会長にインタビュー。

組合と会社の両輪で、ヤマト福祉財団の活動が支えられています。

障害のあるかたの自立と幸せを実現するお手伝いを。初代理事長であるおぐら まさお氏の意志を受け継ぐ、ヤマト福祉財団の活動は、労働組合と、会社の両輪により支えられています。今回の巻頭特集は、ヤマウチ理事長と、ヤマト企業労働組合連合会の森下会長に、それぞれの思いをお聞きするとともに、ヤマト福祉財団の活動財源、障害者の働く実態についても説明します。

ヤマト福祉財団、ヤマウチ理事長。

昨年度、約6,500めいのかたが新たにヤマト福祉財団の賛助会員になっていただき、計77,674めいより心のこもったご寄付をいただきました。

ヤマトグループ企業労働組合連合会、森下会長。

昨年は、ヤマトグループ企業労働組合連合会から、夏のカンパとして72,755,000円の寄付をヤマト福祉財団にお贈りしました。

賛助会費、夏のカンパ、法人会費、配当金がヤマト福祉財団の活動を支えています。

障害のあるかたの自立と、社会参加の支援。

ヤマト福祉財団の活動。

助成事業、研修や育成事業、表彰事業、広報や啓発事業など。

活動運営費。

基本財産。ヤマトホールディングス株式が100パーセント。

ヤマウチ理事長にインタビュー。

地域社会と障害のあるかたのために。それはこれからも変わることのない、ヤマトグループ全社員の思い。

ヤマトグループは、2019年に100周年を迎え、いまは次の100年に向かって、新たなスタートを踏み出しています。そこで、改めて噛み締めているのは、経営理念の中の企業姿勢にある、地域社会から信頼される企業であり続ける、という強い思いです。そこには、ヤマトグループは、地域社会から信頼される事業活動をおこなうとともに、豊かな地域づくりに貢献します。特に、障害のあるかたを含む、社会的弱者の自立支援を積極的におこないます、と明示されています。それは、100年間、変わることなく貫き通して来た姿であり、これからも、ずっと変わることのない、確固とした信念です。

みなさんは、日々の仕事を通して、お客さまや地域の方々と触れ合いながら、社会的弱者のために、なにができるかを考え、いろいろと実践されていると思います。でも、それだけでは満たせない、手の届かない実践的な活動を、私たち、ヤマト福祉財団が、代わりにおこなわせていただいています。

私たちが実現したいのは、障害のあるかたが生きがいを持って仕事をし、経済的にも自立した生活を送ることで、幸せを感じられるようになっていく、そんな社会です。そのために、福祉施設が、利用者さんの新たな仕事を創出し、給料増額を目指す方法を学べるパワーアップフォーラムや、夢へのかけ橋実践塾を開催。新事業などを立ち上げるため、また、環境や、仕組みをつくるための助成事業も幅広く展開し、さらに、農福連携などを推進する団体などへの支援もおこなっています。

これではじめるよ、と、おぐら まさお、初代理事長が机の上にポンと置いた紙袋の中身とは。

みなさんもご存じのように、ヤマト福祉財団は、おぐら まさお、初代理事長が私財を投じて設立しました。

財団設立の準備を進めていた、ある日、事務所を訪れた小倉さんは、「これではじめるよ」と言って、机の上に、ふたつの紙袋を無造作に置いて行かれたそうです。元 常務理事の高田さんが中を見ると、ヤマト運輸の株券が、ひと袋に1000枚ずつ入っていました。さすがに、これは事務所に置いたままにはしておけない、と、あわてて、銀行の貸し金庫に預けに走られたと聞いています。

小倉さんは、最終的に320万株を拠出され、会社も35万4500株を出資し、ヤマト福祉財団の基本財産となっています。これは、財団が活動を継続的に行うために確保しておかなければならない基本財産であり、それがあることにより、社会的な信用も維持できます。では、毎年の運営活動費はどうなっているのか。その詳細は囲み記事のリストにあります。

ヤマト福祉財団の活動資金を支えるのは、社員からの支援。それが他の財団との大きな違い。

収入の内訳は、社員からの支援、株式配当、ヤマトホールディングス法人会費の大きくみっつです。社員からの支援は、賛助会員より、夏と冬の2回に500円ずついただいている会費と、労働組合からいただいている夏のカンパで、これが全体の52パーセントを占めています。

注目いただきたいのは、世の中の多くの財団が、会社などからの支援をもとに活動しているのに対し、ヤマト福祉財団は、社員からの寄付に支えられ、活動を続けているということです。これこそ、ヤマト福祉財団と、他との決定的な違いだと思います。

賛助会費は、会員ひとりひとりの意志が込められ、また、労働組合からの寄付は、夏のカンパとして、社員のみなさんの思いが込められています。私たちは、それぞれの重みをしっかりと受け止め、大切に活用させていただいています。

もうひとつ、大きな点は、私たちがおこなう、障害のあるかたたちの自立支援を、労働組合と、会社が両輪となって支えてくれていることです。これこそ、ヤマト福祉財団の、一番の特徴と言えます。

より意義ある活動を目指し、もっと身近に感じられる、みなさんの誇りとなれる存在へ。

ヤマトグループは、One ヤマトとして、新たな一歩を踏み出します。それを具体的に示す中期経営計画、One ヤマト2023には、サスティナブル経営という大きな柱があり、そこには、環境問題だけではなく、福祉も SDGs も入っています。もっと世の中に役に立つ会社へ、もっと社会に信頼される会社へ。私たちヤマト福祉財団も、One ヤマトの一員として、なにができるかを考え、実践してまいります。

現在、国民の14人に1人が、なんらかの障害があるといわれています。そのだれもが、同じように幸せに暮らしていける世の中を築いてほしいと、小倉さんは我々に未来を託しました。でも、そのバトンを受け取ったのは、ヤマト福祉財団だけではありません。社員ひとりひとりの手に受け渡されているのです。その自覚を持つことで、日々の仕事の中に、ヤマトの一員として、できることがいろいろと見えてくると思います。

たとえば、みなさんのセンターは、どれだけバリアフリーが行き届いていますか。

このドアでは車椅子が入りにくいから、レイアウトを変えたほうが良いのではないか。この通路や階段には点字ブロックが必要だ、と見直していく。また、担当エリアの配達をおこなっていく中でも、耳の聞こえないかた、目の見えないかたのお宅の情報を共有し、みんなでサポートするなど、仕事を通して、さまざまなことができると思います。

そこから生まれた、もっと福祉の現場に直結した支援を、というみなさんの気持ちを、私たちが、福祉施設や、障害のあるかたたちの元に、幅広く実践していきます。この財団の取り組みをみなさんに伝え、広めていくことも、私たちの大切な仕事です。

そのためにも、社員のみなさんが、財団がおこなう、障害のあるかたへの支援活動に参加いただける機会をもっと設けたい。今後は、みなさん自らが企画して動き出せるように、労働組合との連携をさらに深め、進めていきたいと思います。

大切なのは、みなさんに、もっと関心を持ってもらい、ヤマト福祉財団が、より身近な存在になっていくこと。そして、みなさんの誇りとなれる、意義ある活動を進めていくことだと考えます。ぜひ、これからも、小倉さんが目指した世の中を一緒に築いていきましょう。

賛助会費と、労働組合からの夏のカンパが、活動運営費の52パーセントに。

社員からの支援が半分を超える、ヤマト福祉財団の活動運営資金。ひとりでも多くの社員に、障害のあるかたの自立を支援するその活動を、より具体的にお伝えし、深くご理解いただけるように努めていきます。

財団の収入の内訳。

森下会長にインタビュー。

ヤマト福祉財団の誕生の経緯や、活動について知ることで、夏のカンパの意義も見えてくる。

夏のカンパは、そもそも労働組合の先輩たちが、道路を職場とする我々が、交通遺児のためになにかできることはないか、と、1987年に始められたもので、以来、34年間、ずっと続く取り組みです。ヤマト福祉財団には、1993年の財団設立の翌年より27年間で、11億円を超える寄付をさせていただいています。このカンパを通して、私たちは、障害のあるかたにも支援することができているのです。

協力してくれる仲間は、せっかく寄付するんだから、いいことに使ってもらいたい、と考えています。だから、自分たちの出したカンパが、どんなふうに役立てられているのか、どれだけ多くのかたに喜ばれているのかを知りたいはずですし、それを伝えるのも、カンパをいただく我々の、大切な役割だと思っています。

私も、入社当時は、なにもわかっていませんでした。それでも、先輩や、組合役員から、いろいろと教えてもらうことで、なぜ寄付をしているのか、なにに使われているのかを、初めて知ることができ、以来、納得して、カンパをできるようになったのです。

いま、自分がヤマト労連の会長となり、各組合には、仲間に、ヤマト福祉財団のことをもっと説明してほしい、と、お願いしています。

加盟組合や、支部執行委員長などは、みなさんを代表して、福祉施設への助成金贈呈式などに同行させていただいていますので、そこで見聞きしたことなども伝えてほしい。そして、ヤマト福祉財団がどうやって生まれたのか、その歴史や、活動を伝えてもらいたいのです。

人に喜ばれることで成長できる。人生を豊かにできる。福祉と私たちの仕事は似ている。

私も、いくつか、福祉の現場を拝見させていただいていますが、我々の仕事と福祉には、似たところがあると思っています。

荷物を届けることによって、お客さまに喜んでいただく。一回喜ばれると、もっと喜ばれたくて、どうしたら良いのか、と深く考えるようになる。その繰り返しが、より良い、次の仕事へとつながっていきます。

地域のために、人のために、自分になにができるかを考えて働く。それが、自分の成長へとつながっていく。このプロセスが、どこか福祉と似ていると思う。これこそが、私たちの仕事の喜びであり、ヤマトグループ社員の誇りだ、と私は感じているのです。

日本人は、ひとつの企業に長く勤めるという、他国と違う、独特の働きかたをしていますし、私も20歳からずっと、この会社で働いています。その結果、ヤマトグループ社員として愛社精神というものが自然に生まれてきました。ヤマトグループの社員たるもの、信号を無視しちゃいけない、安全運転をしなくちゃいけない。さらに、制服を着ている以上は、困っている人がいたら、手を差し向け、つねに地域に貢献する意識を持って行動するように、とも教えられ、育ってきました。

これを面倒だと感じる人もいるかも知れませんが、同じ仕事をするなら、そういった誇り、やりがいを見つけたほうが良いと思うし、それがわからない社員は、損をしているとも思います。

今日も仕事か、と、家を出る人と、よし、今日も頑張るぞと仕事に行く人。何十年も続けていくと、大きな差になってしまいます。

誇りと信念を持って働く、行動する。その大切さを教えてくれたのは、おぐら まさおさんだった。

私がそう考えるようになったのは、おぐら まさおさんの影響が大きい。私は、あれだけの志を持った経営者を、見たことがありません。

宅急便を開発し、社会にイノベーションを起こしたこともすごいですが、どんなに忙しくても、「なにより、お客さまへのサービスが先なんだよ」と、ストレートに社員に伝え、浸透させて、成功に導かれたこと。経営を退いたあとには、私財を投げ打って、障害者を支援しようと、財団を立ち上げられたことも素晴らしい。いくら志があっても、ここまで実行できる人はいません。

しかも、福祉の世界に経営のコンセプトを持ち込み、障害者は仕事をしても低賃金で仕方がない、という世の中の間違った観念を壊していきました。そんなおぐら まさおさんの志を引き継いでいるのが、ヤマト福祉財団であり、私たちがその支援をしているわけです。

その仕組みがわかってくると、もう少し寄付して役立ててもらおう、という気持ちも湧いてきます。夏のカンパのリストを見てわかるように、年々、カンパの金額が増えているのは、組合全体でそういった理解、意識が深まっている証だと思います。

障害のあるかたと携わることで、普段の生活の中でも、自然に手を差し出すようになれる。

いまはコロナカで、置き配なども求められていますが、普段から良い仕事をしていないと、良い配りかたはできません。地面にじかに置くのではなく、下に何かを敷くべきではないか、といった声が、自然と現場から出てくるのも、人に喜ばれることが自分を成長させる、豊かにしてくれる、と、わかっているからこそ。そんな、ひとりひとりの社員の成長が、企業の成長へとつながっていくのが一番です。

このように、私たちは、仕事を通じて、地域社会や、社会的弱者のために貢献をしています。でも、私たちにできることは、それだけではないはずです。

たとえば、電車で座っていたら、足の悪い人や、高齢者が乗車して来た。いつ譲ろうかと迷っている間に、違う人が席を替わってしまった。そんな経験はだれにでもあるでしょう。日本人は、障害のあるかたと関わることに、どこか苦手意識を持っている気がします。でも、実際に会って交流することで、いろいろなことがわかってくる。障害はひとつの個性だと感じるようになる。すると、支援の手も自然に出るようになります。

それを当たり前にできるようになるには、もう少し、障害のあるかたと携わることが必要です。そんな機会をつくること、我々が持っている情報を知らせ、いろいろな気づきを得られるようにしてあげることが、大切なのだと改めて感じています。

いかに人の役に立てるか、どれだけ、ありがとう、と言ってもらえるかで、人の価値は変わっていく。働くことで、そのような価値を見出すことができれば、夏のカンパも、賛助会員数も、もっと増えていくでしょう。宅急便を通じて、サービスとか、品質とか、社会貢献を意識しておこなう。その中に、障害者の自立支援というものが、自然に入っている。それこそが、ヤマトグループらしさなのですから。

夏のカンパ。

毎年、6月から7月にかけて行われる、ヤマト労連のカンパニア活動。1987年から昨年までの34年間で、組合員のみなさまから、総額17億円が集められました。

数字で見る、障害者の実態。

人は自立して生活することで、幸せを感じられる。どれくらいの、障害のあるかたが働いているのでしょうか。自立するための工賃、給料はどれくらいなのでしょうか。データから、障害者の実態を探ってみます。

障害のある人の人口比率は。

日本の総人口、126167000人に対し、障害者は9635000人。国民の14人に1人が障害者です。

  • 7.6パーセントが障害者。9635000人。
  • 92.4パーセントが健常者。116532000人。

障害者数は、令和元年、2019年版、厚生労働省、障害者白書より。

総人口は、総務省、統計局、人口推計、令和元年、2019年10月概算値、公表。

障害者種別の人数は。

障害者種別とは、障害者基本法で、障害者の定義を、身体障害、知的障害、または精神障害があるため長期にわたり日常生活、または社会生活に相当な制限を受けるもの、としています。

  • 45.3パーセントが身体障害者。4360000人。
  • 43.5パーセントが精神障害者。4193000人。
  • 11.2パーセントが知的障害者。1082000人。

障害者種別人数は、令和元年、2019年版、厚生労働省障害者白書より。

障害のある人の就労状況は。

18歳以上の障害者の労働人口、およそ4080000人のうち、働ける人は約2割。

  • 15.5パーセントが、一般就労。企業や官公庁で働く人は、630000人。
  • 8.6パーセントが、一般就労が困難な福祉的就労。福祉施設で働く人は350000人。
  • 75.9パーセントが、家事手伝い、自宅療養、入院、入所施設、通所型生活介護施設。3090000人。

就労継続支援A型事業。雇用型、最低賃金。

障害者施設と雇用契約を結び、最低賃金を保障、社会保険なども適用されます。

就労継続支援 B型事業。非雇用型、分配工賃。

年齢や体力などで、雇用契約を結んで働くことが困難なかたが、雇用契約を結ばずに働きます。作業の成果により、工賃を受け取ります。

障害者種別人数は、令和元年、2019年版、厚生労働省障害者白書より。

B型施設で働く障害のある人の年収は。

障害等級2級単身者の場合、障害基礎年金、779,300円、プラス、平均工賃、16,118円 12カ月分、イコール、972,716円。

可処分所得の実質中央値248万円。

収入から税金、社会保険料を引いた可処分所得を高い順から並べた時の中央の値。実質中央値、相対的貧困線は、2018年国民生活基礎調査、等価可処分所得による。

相対的貧困線、124万円。

実質中央値の半分。

B型施設で働く多くの人の年間収入は相対的貧困線みまん です。

相対的貧困とは、余暇に支出する余裕がない状態のこと。

初代、小倉理事長が、障害者施設を見学して驚いた、1995年から約20年経った現在も、障害者の平均工賃、1ヵ月のお給料は、2018年の時点で16,118円と、自立できる収入にはなっていないことが分かります。

おぐら まさお著、福祉を変える経営、障害者の月給一万円からの脱出、より。

驚きました。今時、たった一万円の月給で、月曜日から金曜日まで、毎日、朝から晩まで働いている人たちがいる。しかも、その人たちは障害者なのです。どう考えても、自立とはほど遠い現実でした。

ボランティアに参加しませんか。

ヤマトグループ社員参加型の障害者支援を進めます。

財団ではヤマト運輸労働組合と連携し、ヤマトグループの社会貢献のひとつとして、障害者施設と社員の共有の場を提供し、地域連携を深める事業を進めます。

例えば、障害者施設で野菜の種まきや、間引き、秋には収穫などの作業を、利用者と一緒に行う、参加型農業ボランティアを実施。また、地域限定で町おこしなどの企画からボランティアとして参加します。他にも障害者施設の商品を、らくうるカートなど、通販サイトで販売するための勉強会の実施、障害者施設の商品を、社員のみなさんに買っていただくことで、支援につながるような仕組みづくりも企画しています。

農業ボランティアは、現在、北海道の札幌、愛知県豊田市、滋賀県栗東市の障害者施設で、5月から6月の植え付けからスタートしていく予定です。農作業を、障害者と一緒に、楽しみながら参加していただきたいボランティアです。他の企画も、動き次第、お知らせしていきます。

実験的におこなった農業ボランティア。組合員の家族も参加して、田植えや、雨の中の稲刈りを体験しました。写真下は、中部支社の社員食堂に、収穫した野菜をお届けした、障害者施設のみなさん。

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