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リレーコラム、夢をつないで、第20回。

国立成育医療研究センター、もみじの家、ハウスマネージャー、うちだ,かつやす。

1963年、東京生まれ。東京大学教育学部卒業後、NHKに入局。30年間、アナウンサーとして、首都圏ネットワーク、NHKスペシャル、クローズアップ現代等のキャスターを務め、阪神 淡路大震災や、東日本大震災の緊急報道にも携わる。2016年にNHKを退職し、国立成育医療研究センターに新設された、医療的ケアが必要な子どもと家族のための短期入所施設、もみじの家のハウスマネージャーに就任。社会福祉士の資格を持つ。著書に、医療的ケアの必要な子どもたち 第二の人生を歩む元NHKアナウンサーの奮闘記(ミネルヴァ書房)。

医療的ケア じ者のサポートは日本の宿題。

医療的ケアという言葉が、近年、存在感を増してきています。医療の進歩により、出生時に重い疾患があっても、エヌアイシーユー、新生児集中治療室で救命が進む一方、退院後も、自宅で、人工呼吸器や、痰の吸引などの様々な医療的ケアを必要とする子どもが増え続け、2019年度には20000人を超えました。しかし、社会的な支援制度や、サポート体制が み成熟なため、多くの家族、主に母親が、24時間、365日、ケアに追われる日々を強いられています。

令和がん年度に行われた、厚生労働省の事業、医療的ケアじ者と、その家族の生活実態調査、で明らかになったのは、就寝や就労など、一般的には当たり前にできることが、医療的ケアじ者の家族にとっては、当たり前ではないという現実です。

母親からは、切実な声が寄せられました。

「命の危険と隣り合わせで、目が離せない。慢性的な不眠で、とてもきつい。」

「自分自身の持病が悪化している中で、治療に専念する環境を作れない。」

「医療的ケアが必要な子どもが産まれたことで、仕事を辞めなければならなくなった。家計が圧迫され、将来にとても不安を感じている。」

私が働く国立成育医療研究センターの医療型短期入所施設、もみじの家(東京世田谷区)が開設されたのは、2016年4月。その頃に比べると、医療的ケアじ者のための制度は徐々に整えられ、家族の声が、行政に反映されるようにもなってきています。しかし、地域によっては十分な障害福祉サービスを利用することができず、もみじの家に宿泊するために、遠くは東北地方から通ってくる家族もいます。支援の量や質の地域間格差が広がっていることも、課題として認識しなければなりません。

医療的ケアが必要でも、住み慣れた地域で、家族が、安心して暮らし続けられる社会を構築する挑戦は、始まったばかりです。世界で一番、赤ちゃんが安全に生まれる国、と、言われるほど小児医療が進化した日本は、今、救った命をどう守っていくのか、重い宿題を抱えています。

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