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農福連携実践塾、見学勉強会 in 上信越、北陸。

利用者支援と、仕事づくりを農業で実践。塾長たちと、現地視察をおこないました。

農福連携実践塾の見学勉強会 in 上信越、北陸を、7月20日から22日まで実施しました。今回は、群馬県前橋市の 菜の花、長野県の小布施町、長野市にある くりのみえん、富山県八尾町の おわらの里 と、それぞれの塾生が参加し、約250キロメートルを移動しての見学勉強会となりました。

社会福祉法人、ゆずりは、菜の花。GAPに挑戦し、さらなる収益アップを。

群馬県榛名山の山麓に広がる地域で、高工賃と就労支援を法人の理念に掲げ、県下で工賃実績上位を占める、社会福祉法人ゆずりは。塾生事業所の 菜の花は、約9ヘクタールにタマネギ、枝豆、ブロッコリー、ホウレンソウ、キャベツ、こめ等々を作付けています。タマネギは地域の67パーセントのシェアを占めるほど。慣行栽培と自然栽培の両輪で、約2000万円の売り上げをあげています。

菜の花では、工賃を上げるために、1. 生産量を増やす、2. そのために作付面積を広げる、3. 広がった作付面積で作業の効率化を図るために機械化を、と、進めてきました。

設立当初、2015年の作付面積は4ヘクタール。5年後の2020年には12.2ヘクタールと約3倍へ。平均工賃も約27000円から約45700円になりました。

重度の利用者さんもグループホームで生活し、活躍しています。菜の花では、適材適所で、利用者さんの仕事を配置。何が得意か、どこに能力を伸ばせるか。職員が観察し、午前、午後でアセスメントの項目にポイントを付け、それを利用者工賃にプラスすることで、利用者さんの力と工賃を上げています。

熊田塾長は、講評の中で、「福祉の中で一番必要なことをきちんとやられている。林さん(実践塾講師、ピアファーム理事長)がいつもおっしゃっている福祉力、経営力、事業の全部の力が必要だ、ということがはっきりみえた」。林さんは、「農業で品質と安全を担保するためにGAPにも挑戦し、さらに収益をあげていってほしい」と、メッセージをおくりました。

収穫した枝豆の選別を、菜の花の利用者さんに指導を受ける塾生。

真夏の炎天下で枝豆の収穫作業。

収穫した枝豆を鞘だけに刈り取る脱鞘機。

熊田塾長も利用者さんと一緒に、選別された枝豆を袋詰め。

社会福祉法人、くりのみえん。農業と福祉をつなぐ事業として、平飼い養鶏を。

まだ、自然栽培ということばも浸透していない頃、農業と福祉をつなぐ事業として、24年前に有機農業にシフトして、平飼い養鶏をはじめたのが、くりのみえんです。有機農業は農業全体の1パーセントしかない、お手本も何もない時代でした。「販路も分からない、有機農業をどうやれば地域に定着できるか、試行錯誤の24年間だった」と、くりのみえんの島津理事長が話してくださいました。

現在では小布施農場と、長野農場に、平飼いで3000羽の鶏を飼っています。できあいの飼料を使わず、自家配合で育った鶏の卵は、おぶせのたまごとして、地域のブランドに育ちました。

化学肥料は一切使わず、鶏糞を使った自然循環農法に徹して、無農薬の米、野菜づくりをおこなっています。地産地消を目指し、タマネギ、伝統野菜の小布施丸ナス、越冬させた雪下ニンジンなど、3、4種類にしぼり、栽培した野菜を、地域の給食センターに販売しています。

「くりのみえんは、ゼロから作り上げてきた伝統的な農福連携。長年の思いや、ゼロから作り上げたということがとても勉強になった。こういう事業所を、参入してきた農福連携の人たちに見せてあげたい」と、熊田塾長。塾生から、「有機農業の除草の大変さが分かる。機械ではどうにもならないこともあるので、情報交換をしていきたい」との声もありました。

農薬、除草剤を使わない、くりのみえんの田んぼ。

伝統野菜の小布施丸ナス。

平飼い、おぶせのたまご。なちゅらるショップ、くりのみ。

自家配合飼料で平飼い飼育。

社会福祉法人、フォーレスト八尾会、おわらの里。福祉施設が地域を盛り上げ、地域の伝統を守る。

越中おわらかぜの盆で有名な富山市八尾町。当初は観光みやげ品制作などの作業からはじめて町と共に歩んできたおわらの里は、集落もなくなってしまった山間部に5ヘクタールの農園で桑を育て、加工品を作っています。

「施設事業の10分の1でしかない桑事業を進めるのには、意味がある。昔、養蚕で栄えた歴史があり、桑事業で町おこし、桑畑を守ることが、伝統を伝える価値になるのではないかと考えた。そのために、地域の企業とつながり、商品を提案していく」と、塾生の杉山さんが話します。

桑の葉を使った商品を県の特産品として登録し、地域の参加者を募り、ファーマーズ マーケットを実施。桑畑体験ツアーの企画、7年前に取引が停止になった大手企業とのコラボ商品である、おわら桑摘み茶の再販も決定しました。

単に農福連携事業というのでなく、福祉施設が地域を盛り上げ、地域の伝統を守る事業に取り組んでいます。

「あえて農福にこだわる必要はなく、中山間地域の助成金を、単独で申請して、事業を作っていくことが大事。このような地域は全国にあるので、モデルとして発信を」と、林さん。川田アドバイザーから、「工賃向上も大事、山間部の桑畑を守るのも大事。短い時間で、桑の事業が、八尾町の事業に変わってきたと実感している。地域のブランドを福祉が救うような好事例だと思う」と、コメントをいただきました。

集落がなくなった山間部に5ヘクタールの桑畑。

桑の葉を収穫する利用者さん。

収穫した桑の葉を乾燥させ、お茶や、お菓子など加工品へ。

桑 をキーワードに、六次化を進める。

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