互いにできることを考え、みんなで支え合う体制づくり。
現地会場は、昨年、社会福祉法人、共生シンフォニーが建設した、びわこ共生モールです。ここは、障害のあるかたのショートステイ施設や、相談所、重度の心身障害者も安心して過ごせる、医療的ケアも備えた施設、さらに、就労を目指すかたの学び舎も集合した複合施設です。
「なかなか立派でしょう。でも、約30年前に私が入職したころは、オンボロ木造アパートの6畳ひとま。経営は厳しく、電気が止まりそうにもなりました。それを変えたのが、添加物などを一切使用しないクッキーの製造、販売です。売上は伸び、利用者さんの給料増額も達成できる、と、入所希望者も増えていきました。しかし、職員の負担はどんどん膨らみ、このままでは続けられないと悩む者も。そこで、事業担当を分けることにしたんです。ケアや、デイサービスの施設、障害者運動の施設、ビジネスを担当する施設と役割を分担。障害のあるなしに関係なく、できる人ができることをやり、互いに支え合う。それぞれの仕事に専念できる体制を整えていったんです」と、中崎常務理事。こうして誕生したひとつが、焼き菓子工場の、A型事業所、がんばカンパニーです。
利用者さんひとりひとりが、力をつけ、自信を持って働く。
がんばカンパニーは、自社オリジナル商品、大手企業のオーイーエムや、コンビニ商品などの企画、製造で、毎年、売上、約1億3000万円を達成し続けています。
「1日の生産量は平均400から500キログラム。多い時は1トンにもなるため、みんなで力を合わせなければ、とても納期に間に合いません。そこで、工程を細かく切り分け、各作業のやり方を、わかりやすくパターン化。さまざまなジグも用意して、たくさんの利用者さんが参加できるようにしたんです」と、水野 武所長。原材料も、これくらい、などの目分量ではなく、数字で明確に示すことで、高い品質の商品を、安定して生産できています。
「コロナの影響で、卸販売や、イベントの注文が減りましたが、お取り寄せブームで通販が伸び、全体の売上をカバーできました。おかげで、月額、平均給与、12万円、多い人で、20万円を維持できています」。
給食事業をおこなうA型事業所、はっぴぃミールの利用者さんも、月額、平均給料、約11万7000円を手にしています。
「利用者さんは、刻み食などの調理方法や、食品衛生もしっかりと理解し、調理の主役として活躍しています。毎朝のミーティングで、自分たちの仕事分担を話し合い、決めていく姿は、とても頼もしいですよ」と、ニノミヤマサヨシ所長は話します。ニノミヤさんは、清掃や家財整理などをおこなう、B型事業所、ほわいとクラブの所長も兼務。「他社が気づかないところも清掃し、片付けかたも、とても丁寧だと高評価をいただいています。それも、みんなが仕事に誇りを持ち、より高い給料を手にしたい、と頑張っているからでしょう」。
全事業所で、後輩の目標となる先輩が着実に育っている。そんな、働く環境と、仕組みづくりが、高工賃を実現する秘密のようです。