他では作れない贅沢なジェラートに。
目の前に広がる緑豊かな樹木に、サトウキビ畑、鳥たちのさえずりが聞こえるジェラテリア。そんな風景に Toropica Amami, 奄美のジェラートの鮮やかなのぼりと、落ち着いた雰囲気の、お洒落な木造の建物が優しく溶け込み、観光客や、地元のかたの癒しのスポットになっています。それにしても、奄美大島の太陽は強烈。美しい風景よりも、冷蔵ケースに並ぶ、色とりどりのジェラートに目は釘付けです。早速、ドラゴンフルーツなどのジェラートを注文し、風通しの良いオープンカフェへ。一口食べると、すっぱ甘い、さわやかななんごくフレーバーが、口中に広がっていきました。
「2019年にジェラート作りをはじめたのは、農家さんのもとで施設外就労をおこない、そこでいただいた果物をお金に換えるため。労働対価を、金銭ではなく、作物でいただくのは、農家の負担を少なくし、互いに支えあう関係にしたかったからです」と、代表取締役の田中基次さん。
「簡単にマネされない、また食べたくなる、買いたくなる商品を」と、工房を建設します。そして誕生したマンゴー、スモモ、たんかんなどのトロピカルフルーツをふんだんに使った、果汁50パーセントの贅沢感あるジェラートは、島内のホテルや、ショップで販売いただけることになりました。
しかし、2020年、春、コロナウイルスの感染拡大で、観光客が激減します。落胆する職員や、利用者さん。田中さんは、「これを機に、島外にも販路を拡大する」と宣言し、福岡で開かれた大規模商談会に参加。高島屋の2021年お中元ギフトのオンラインショップに出品できることになり、表紙も飾ることに。これが反響を呼び、売上は想像を超えて、大きく伸びていきました。
実店舗の完成で、目に見えない効果も。
コロナ禍で、お取り寄せを楽しむ全国のお客様にアピールしています。ジェラートの種類は、奄美群島だけでなく、他の島じまの特産品も盛り込み、約16種類に。さらに、自家栽培したハーブティーも加えた商品ラインアップは、じつに華やかです。
「でも、ウェブだけではダメ。実店舗がないと、百貨店や、お客様からの信頼性は大きく異なります。実店舗を利用したかたのSNSなどでの宣伝効果も期待できると、ジェラテリアの建設費をヤマトさんに申請したのです。ジェラテリアには、他にも、接客業をやりたい、という利用者さんの希望をかなえる目的もあります。2階には休憩室も備え、農業チームもここで一息つける、そんな、働く環境を整えました」。
ジェラテリアは、ウッドショックや、地震など、さまざまな困難を乗り越え、今年5月に、やっとオープンしました。そこからは、数字や、目に見えないさまざまな効果も生まれています。
「目の前でジェラートを食べたお客様に、美味しかったよ、と声をかけられたらうれしくなりますよね。それを、他チームにも話すことで、みんなが仕事の喜びを共有できるようになっていったのです。ジェラート作りは大変そうだから嫌だ、と言っていたかたが、私もやりたい、と自分から申し出てくるなど、ひとりひとりの仕事へのモチベーションが、ぐっと上がってきています」。
青空の下、農園で汗を流し、働く人。工房で収穫した作物を材料に製造する人。自宅でPCを使い、ホームページや商品のパッケージをデザインする人。そして、ジェラテリアでお客様をおもてなしする人。みんなが力を合わせ、連携することで、ジェラート事業は動いていきます。
大切なのは、全利用者さんが希望する仕事、職場で、無理なく働くことができるようにケアすること。田中さん自身が作業療法士であり、他にも精神福祉士の資格を持つスタッフもいて、ひとりひとりの体調などを管理し、支援しています。
「あまみんが目指すのは、ずっと通いたくなる、ここち良い居場所に、さまざまな仕事を用意し、より高い給料を支払うこと。現在、平均月額給料は、約2万6000円まで増えましたが、まだ上にいけるはずです。そこで考えたのが、農業体験をして宿泊もできる、農泊です。ジェラテリアの2階に宿泊部屋も作りましたが、その窓から眺める満天の星空は、最高ですよ」。
海の見える農園を新たに購入し、A型事業所を作り、農泊施設を整える計画も進めています。どこまで事業が広がっていくのか、楽しみです。