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2022年度、障害者の働く場、パワーアップ フォーラム。人は、自立して生活することで幸せを感じられる。高工賃へのあくなき挑戦。

11月25日、宮城会場。現地からお届けする、オンライン フォーラム。

障害の重い人にも高い工賃を実現する支援方法を学ぼう。

昨年の11月25日、本年度2回目となる、現地からお届けする、オンラインのパワーアップ フォーラムを、宮城県柴田郡にある社会福祉法人、はらから福祉会で開催しました。2021年度、はらから福祉会全体の平均月額給料は、5万6367円、なかには、8万3340円を達成した事業所もあります。

現地会場、宮城県柴田郡、社会福祉法人、はらから福祉会。

労働手段をどう改善するかが、就労率と、給料を上げるカギ。

「はらから福祉会の武田理事長は、障害の重い軽いに関係なく、生きがいを持って働き、高い給料を得ること、を目標にされています。決してあきらめない姿勢は、同じ目的に向かう仲間として、元気をもらえるはずです」と、やまうち理事長が開幕のメッセージを送りました。

ホスト講演では、障害の重い人にも高い給料を実現するポイント、チーム化、機械化、意識化を武田さんが解説。はらから福祉会を紹介する動画には、視聴者の参考となる取り組みが、次々と映し出されました。

ゲストと一緒に、はらから福祉会を見学した、エヌピーオー法人、日本障害者協議会の藤井克徳代表は、「障害のあるかたの就労率を上げるには、じぐや機械化など、労働手段の改善が大切です。障害は、本人を取り巻く環境で、より重くも、軽くも変わっていくことが、はらから福祉会の取り組みで実感できますね」と、講演しました。

ゲストで社会福祉法人、オリーブの樹の加藤裕二さん、社会福祉法人、かしのみ福祉会のおまた弘美さんは、現状報告に加え、視聴者代表として、ホスト施設を見学した驚きと感動も伝えています。

シンポジウムでは、高工賃を目指し、障害の重い人への支援などこれからの取り組みを語り合うことに。シンポジストたちは、キーワードを掲げて、どう実践するかを発信しました。

ホスト講演:テーマ、より障害が重い人を働き手に。チーム化、機械化、意識化を通して。

全員参加の、チーム化で、質の高い商品の量産を実現。

どんなに障害が重くても、働いて暮らせるだけの賃金を。40年前に事業所を開所したときから、はらから福祉会は、重い障害のある利用者さんにも、全員に、7万円の給料支給を目標に取り組み続けています。そこで武田 はじめ理事長が掲げたのが、チーム化、機械化、意識化の、みっつです。

「高賃金を払うには、高品質な商品を大量生産し、売上を伸ばすことが必要です。技術の高い難しい仕事は、障害の軽い人が担当すれば良いのですが、それだけでは量産化できません。そこで、高度な仕事を難易度の中高低で分解。単純作業が適している障害が重い人も一緒に参加できるようにしました。全利用者さんが力を合わせ、付加価値の高い商品を量産化していく。これが私たちの考えるチーム化の狙いです」と、武田さん。

機械化で、利用者さんのやりがいも広げていく。

難易度の高い仕事をどうやって単純化していくか。それを進める手段の一つが機械化です。機械導入は、効率、生産性アップのためと捉えられがちですが、はらから福祉会は、障害の重い人もやりがいのある仕事に参加できる手段として活用します。紹介動画で、えいむ亘理の職員は、「高品質な牛タンに欠かせない目入れ作業は、限られた人しかできない職人技の仕事でした。それを、機械化で単純化し、量産も可能に変えています。利用者さんの働く時間内で、より価値のある仕事に従事できるようにするのも、機械化の目的です」と、解説しています。

意識化で、自閉症のかたのマイペースをユアペースへ。

はらから福祉会が40年かけてもなかなか良い結果を出せなかった課題。それは、こだわりの強い自閉症のかたたちの仕事への参加です。

「どうしたら、自分の世界に閉じこもらず、みんなと仕事ができるようになるか、を研究する、専門の支援チームを作りました。研修会や、外部の講座などにも参加して勉強を重ね、始めたのが、意識化です」。

はらから福祉会では、毎朝、こだわりの強い利用者さんたちが手をつないで一緒に通所してきます。

「他にも、歩行訓練や、リズム運動、さらに、トイレや着替えなど、できるだけ集団で行動します。その結果、集団への慣れと、適応力を育むことができ、こだわりの強いマイペースの人が、周りに合わせるユアペースに変わってきました」。

さらに、集団で体を動かす、働く、を交互に取り入れることで、1日の流れのなかに仕事をすることをパターン化。問題行動も随分減ってきた、と言います。

「障害の重い利用者さんも、やりがいのある仕事をしたい、人の役に立ちたい、と願っています。その私たちが、多様な作業と十分な仕事量を用意することで、次はあの仕事をやりたい、と目標を持つことができるのです。幸せになる権利に例外はありません。福祉に携わる者は、それを決して忘れてはいけないのです」。

社会福祉法人、はらから福祉会。

設立。
1983年4月。
事業所数。
9ヵ所。
うち、B型事業所の平均月額給料。
5万6,367円。2021年度。最高額は、えいむ亘理の8万3,340円/牛タン加工。
事業内容。
豆腐、豆乳、油揚げなど、大豆加工食品製造。レトルト食品製造。菓子製造。パン製造。牛タン、豚肉の食肉加工業務。ピザと牛タンのお店と、レストランの運営。

シンポジウム:テーマ、さらなる高工賃を目指し、障害の重い人への支援など、これからの取り組みについて。

設備投資も支援の方法も、迷ったときこそ、一歩前へ。

「ホスト施設をご覧になっていかがですか」。コーディネーターの藤井さんの問いに、社会福祉法人、オリーブの樹の加藤さんは、「福祉施設のレベルを超えて、食品会社の工場のようでした。同じ経営者として、ここまで投資する勇気が凄い」と、驚いています。社会福祉法人、かしのみ福祉会のおまたさんは、夢へのかけ橋実践塾、武田塾の元塾生です。「ここを訪れる度に、新しい機械が入り、重度の働くかたの人数が増えていく姿を見せつけられて。塾長は、つねに先をいき、とても追いつけません」と、ため息をもらしました。

おふたりの感想に、武田さんは、「支援方法も、機械の導入も、どうすれば障害の重い人が、もっと活躍できるかを考えた、職員の提案です。購入費をうまく補填できるのかと、悩みはしますが、そこは、えいや! でやるしかない。迷ったら一歩前にです」と、静かに微笑みます。

「今後の私の役割は、障害の重いかたが働く環境と支援づくり」と、決意を述べるおまたさん。加藤さんの課題は、「障害者手帳では見えない、多様な働きづらさを抱える人たちの支援」です。武田さんは、「高齢になった利用者さんが、自信を持って暮らせるようにすること」を目標にしています。最後に、藤井さんは視聴者に向け、「障害の重いかたではなく、ニーズの多いかたと捉え、より良い方法を考えていきましょう」と、呼びかけました。

ゲスト報告1。

テーマ:高工賃支給の秘訣。

社会福祉法人、オリーブの樹、理事長、加藤 裕二さん。千葉県千葉市。

オリーブの樹が目指すのは、障害のあるかたが地域で暮らせるだけの給料です。そこで、利益率の高いクッキーや、アイスなどを自分たちで製造。障害のあるかたの働く姿を直接見てもらい、地域の理解を深めたい、と対面販売にしました。でも、思うように給料を増額できなかった。そんなとき、おぐらまさおさんの、「いろいろ悩むより、払いたい賃金を払ってしまえ」との言葉に衝撃を受けます。そこで、A型事業所にして、最低賃金を払ってしまうことに。これで職員は必死になり、市場を見て、商品を開発し、販路開拓の取り組みかたも変わっていきました。だから、私のキーワードは、払ってしまう。これが一番の秘訣です。

ゲスト報告2。

テーマ:私たちが歩んできた高工賃への取り組み。

社会福祉法人、かしのみ福祉会、理事長、おまた 弘美さん。山梨県甲府市。

私が、かしのみ福祉会で働き始めたころの、利用者さんの月額平均給料は、約3,000円。障害があると、こんなお金で生活しなければならないのか、と憤りを感じました。なんとか変えたいと考えた私は、夢へのかけ橋実践塾、武田塾に入塾。給料5万円と、明確な目標を決めたら、とにかくやるんだ、と、武田さんの出す課題に一生懸命に取り組むことで、営業力と販売力が自然に身についてきました。いまでは、ドライフルーツ、飲めるゼリーなどのヒット商品を三つの事業所で製造販売し、最高で8万円を支払えています。私が掲げるキーワード、覚悟、は、まさにそんな実体験から得た答えなのです。

やまうち理事長。

エヌピーオー法人、日本障害者協議会、藤井克徳代表。

くりえいと柴田。

みずきの里、丸森。

えいむ亘理。

社会福祉法人、はらから福祉会、理事長、武田 はじめ さん。

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