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リレーコラム、夢をつないで。第26回。

日本中に、精神医療改革のうねりを。

公益社団法人、やどかりの里、理事長。やどかり出版、代表。増田 一世。

プロフィール。

1978年、明治学院大学、社会学部、社会福祉学科、卒業後、やどかりの里、研修生となり、1979年から職員。1985年、やどかりの里、理事。1989年、やどかり出版、代表。1997年、精神障害者福祉工場、やどかり情報館を開設。2001年、やどかりの里、常務理事、2020年から、やどかりの里、理事長。精神障害者とともに働きながら、地域づくり、人づくりに注目した事業展開をおこなう。日本障害フォーラム幹事、日本障害者協議会、常務理事、ほか

国連障害者権利委員会、総括所見(勧告)を追い風に。

2022年8月、スイスのジュネーブにある、欧州国連本部で、障害者権利委員会による日本審査がおこなわれました。権利委員会との建設的対話をおこなう政府代表団、28人、そして、日本からの傍聴団は、100人を超え、私も傍聴団の一員として、建設的対話を見守っていました。

権利委員は18人、日本の担当者は、リトアニアのヨナス ラスカスさんと、韓国のキム ミヨンさん。この2人を含め、権利委員の皆さんは、日本の実情をよく理解していました。障害者権利条約は、私たちのことを私たち抜きに決めないで、の姿勢が貫かれ、障害のある人や、関係者の報告、意見を重視します。権利委員からは、日本の精神医療のありかたについて、核心を突く質問が続きました。残念ながら、日本政府代表団からは、精神医療改革への意志は示されませんでした。対日審査の最後に、キム ミヨンさんは、涙ぐみつつ、「日本の政府報告と、障害者団体から聞く実態には大きな乖離がある。人生をかけて、権利のために、一心に取り組んできた障害のある人たちと政府は連携をとっていくこと」と語り、拍手が鳴りやみませんでした。

そして、9月9日に公表された、日本に対する総括所見(勧告)。精神科病院での無期限入院の継続などに懸念が示され、非自発的入院や、治療を可能にする法律の廃止、精神医療の抜本的改革が求められました。長年、さいたま市にある、精神障害のある人の地域支援団体、やどかりの里で、精神障害のある人たちと共に働き、活動してきた私にとっては、この勧告を追い風に、抜本的な改革が進まない日本の現状を大きく変革したい、と、思いを強くしました。その矢先です。精神科病院での虐待が内部告発され、問題の多い病院と知りつつ、行政も患者さんを送り込んでいた、滝山病院事件が大きく報道されました。鍵のかかる病棟の中で、いつ出られるとも知れず、人間らしい扱いをされていない状況は滝山病院だけではないでしょう。座していては何も変わらない。日本中に精神医療改革を求める大きなうねりを起こしていかねばなりません。

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