このページと、以下のページは音声読み上げブラウザに最適化済みです。

2022年度、障害者の働く場、パワーアップフォーラム。東京会場。

人は、自立して生活することで幸せを感じられる。

2022年度を締めくくるパワーアップフォーラムは、東京都立、産業貿易センター、浜松町館にて、3年ぶりの、リアル会場開催です。1月12日、会場には約100名のかたが来場し、ユーチューブでも同時配信しています。

学び、伝え、活かしていきたい、障害者支援の国際動向。

基調講演:障害者権利条約と、ソーシャルインクルージョン。

エヌピーオー法人、日本障害者協議会、代表、藤井克徳さん。

「私たち抜きで私たちのことを決めないで。障害のあるかたたちの切なる思いを反映して作られた、障害者権利条約が、2006年に国連で仮採択されると、会場には拍手と足踏みの音が響き渡り、人々はハグし、喜び合ったのです」。

エヌピーオー法人、日本障害者協議会の代表、藤井さんは、当時を振り返ります。

しかし、2022年、国連が、日本政府に仮採択後初の審査をおこない、総括所見として発表された内容は、手厳しいものでした。

「国連は、日本の障害者は働く場も、どこでだれと暮らすかも選択できない、と勧告しています。でも、これは政府だけの問題ではありません。いまこそ、福祉に携わる者が、政策動向や国際動向に関心を持ち、周りに伝え、現場で生かしていくことが必要とされているのです」。

働く喜びを伝え、働く力、態度を育てる。

特別講演:知的障害者の就労支援の在り方。

社会福祉法人、武蔵野千川福祉会、理事長、かんの あつしさん。

夢へのかけ橋実践塾、新堂塾のアドバイザーであるかんのさんは、利用者さんの、働く力を育て、豊かな暮らしを実現する支援などを塾生に指導しています。

「まずは、利用者さんに、働くとはなにか、を理解してもらってほしい。働くことで給料をもらい、仲間や趣味などの楽しみも増えていく。さらに社会で自分が必要とされる喜びを知れば、意欲はより高まっていきます。 その上で、利用者さん、ひとりひとりの能力をしっかりと把握し、どんな仕事をどう提供するかを考えていきましょう。さらに、できることを増やす方法と、じぐや、環境作りなどを工夫します。大切なのは、人との関わりを通して、学ぶ力、働く力、そして暮らす力を育てていくこと。働く力を伸ばすことで、やがては、周りと協調、協力できる、働く態度も育っていくのです」。

塾生施設で仕事の提供の仕方、働く環境作りなどを視察。

施設外就労先の本業で活躍し、高賃金とやりがいをつかむ。

おぐらまさお賞受賞者講演:企業の信頼が高くなる施設外就労。

社会福祉法人、いが幸育会、理事長、村田輝夫さん。統括管理者、奥西利江さん。

社会福祉法人、いが幸育会は、上場企業4社などとの請負契約による施設外就労で、A型の月額平均給料は10万円以上、B型も約7万5000円を実現しています。

「私たちが施設外就労を始めたきっかけは、当時、株式会社ミルボンで生産本部長をされていた村田さん、当法人理事長の助言からでした」と、奥西さん。当初、奥西さんは、「ぜひ特例子会社に」と、村田さんに相談し、お二人は、一緒に各地の特例子会社を見学していきます。

「そこでは、障害のあるかたに本業の仕事は難しい、と、清掃作業などの仕事を担当させていたのです。私は、奥西さんに、『これがあなたの目指している姿ですか? 品質をしっかり確保できるように、職員も職場に入り、ケアしながら、施設外就労をおこなってみては』と、提案しました」と、村田さんは振り返ります。

「村田さんからは、『仕事がきちんとできているのなら、障害があるから、福祉施設だからといって絶対に安売りしてはいけない』とのアドバイスもいただき、一般の請負会社さんと同じくらいの単価で仕事をさせていただいています」と、奥西さん。株式会社ミルボンでの施設外就労をモデルにして、他の法定雇用率に悩む企業からも声がかかっていきました。

現在、お二人は、企業、障害のあるかた、福祉施設のみんながウィンウィンになれる施設外就労を、インクルーシブな働き方、M.I.E モデルとして、全国に発信中です。

株式会社ミルボンで施設外就労に励む利用者さんたち。

実践報告 1:工賃向上を目指した10年間。

エヌピーオー法人、出愛いの里福祉会、障害者支援センター、出愛いの里、施設長、高橋勝茂さん。

2010年に新堂塾に入った高橋さんは、単価の高いディーエム事業で給料増額を目指します。100件近く電話営業して、やっと獲得した初の顧客は、厳しい納期に応えられず残念な結果に。

「利用者さんの働く力を伸ばし、生産性を上げることが必要だと痛感しました。そこで、新堂塾長や菅野先生に学んだ方法を実践。作業工程を細かく分け、じぐや機械も導入していくことで、入塾時、わずか6000円だった給料を、10年後には、4万5000円まで増額することができました」。

兵庫県、出愛いの里。

実践報告 2:自然栽培チャレンジ報告。

一般社団法人、農福連携自然栽培パーティー、全国協議会、理事長、磯部竜太さん。

「百姓である農業にはいろんな仕事があり、自分の得意な仕事を選ぶことができる。青空の下、土に触れ、楽しそうに働く利用者さんたちを、私たちは農福師と呼んでいます」と磯部さん。

無農薬、無肥料の自然栽培は、食べる側にも作る側にも安心安全です。しかも、慣行栽培や有機栽培に比べてコストがかからない上、商品価値が高く、収穫量が少なくても売上を確保できます。

「現在、自然栽培で、地域活性化と障害者の自立を目指す農家や、福祉施設などの仲間は、125団体以上に拡大しています」。

ヤマトグループ農業ボランティア。

実践報告 3:沖縄県発、ゆいジョブ、活動報告。

社会福祉法人、若竹福祉会、就業、生活支援、課長、吉川よしともさん。

2018年に3年計画で開始した沖縄パワーアップフォーラムは、コロナの影響を受けて、思うように活動できませんでした。

「実行委員は、地道に連絡を取り、準備を続け、やっと形にできたのが、働きたい障害者と、雇用したい企業を結ぶポータルサイト、ゆいジョブです」と吉川さん。

「2022年には、特別支援学校の生徒たちや、就労を考える利用者さん、地元企業が参加した待望のイベント、おしごと発見フェアを開催できました。これからも地元企業と力を合わせ、当事者の思いに応えていきます」。

おしごと発見フェア。

「来場者のみなさんから、シンポジストになにか質問は?」。プログラム最後のシンポジウムで、コーディネーターの藤井さんが呼びかけると、早速、幾人も挙手。「コロナ禍で減った仕事を、どうやって取り戻しましたか?」、「農地を持っていないのですが、自然栽培パーティーに販売として参加できないでしょうか?」、「施設外就労をおこなう利用者さんのメリットとは?」。

同じ福祉に携わる者の悩みに、シンポジストは自らの体験を通して、丁寧に回答していきました。

山内理事長は、「今日、得た気づきが、今後にきっと生かせるはずです」と講評。なにがあっても、利用者さんのためにできることを目指していく。登壇者と来場者の気持ちが一つとなり、本年度のパワーアップフォーラムは幕を閉じました。

公益財団法人 ヤマト福祉財団 トップページへ戻ります。
ヤマト福祉財団 NEWS の目次へ戻ります。