いっそ、ハチミツづくりから.
一口含むと、なめらかなクリームの舌触りに、ハチミツ特有の、コクのある甘さが広がります。味わいの濃さは、一般的なハチミツとは比べものにならない美味しさです。近年、日本でも注目が集まりつつある、クリーミーはちみつ。温度管理をしながら適切に撹拌すると、きめ細かい結晶が均一に広がった、白いハチミツができあがります。これが、クリーミーはちみつです。
就労継続支援、はぁもにぃは、この、クリーミーはちみつを生産するための設備を、2021年度に実施した、新型コロナ感染症対応臨時助成金を活用して整備。試験製造の段階を乗り越え、待望の販売へ、めどが立つところまで漕ぎ着けました。
養蜂業に取り組まれた経緯から語ってくださったのは、理事長の長浜光子さんです。2008年に、放課後デイサービスから始まった、はぁもにぃは、4年後に就労の場ともなる、コミュニティ カフェを出店することに。そこで、お店に特徴を持たせようと色々な食材を探します。
「できる限り、地の物で、天然の甘味を探すうちに、ホームページの写真をお願いしていたカメラマンの紹介で、鈴木さんに連絡を取りました。ハチミツを仕入れさせてほしい、と」。養蜂園を営み、後に、はぁもにぃ養蜂部を世話することになる鈴木一さんの返事は、「だったら、両方やりませんか?」
最初は、「何を言っているんだろう?」と、思った、と長浜さん。しかし、養蜂が、海外では障害者の自立支援に一役買っていると聞くに及び、すぐに、鈴木さんの元に見学に。こうして、2013年、鈴木さんの養蜂園との共同事業で、はぁもにぃ養蜂部がスタートしました。
国内1号機を、いち早く.
以来、はぁもにぃの店舗や、オンラインで、天然非加熱の、純粋なハチミツを販売するほか、生産者からの依頼で、彼らの作物や、フルーツを乾燥させたものと、はぁもにぃのハチミツを原材料としたコンフィチュールなどの相手先ブランド名製造、オーイーエムで収益を上げてきました。
ちなみに、このオーイーエム事業で活躍しているのが、8年前に、当財団の助成を得て導入したフードドライヤー。「たくさんお仕事をいただき、機械はいまもフル稼働です」と、長浜さん。しかし、新型コロナ感染症と、養蜂資材の高騰による打撃は、遥かにそれを上回るものがあった、と言います。
そこで、現状を打開すべく、白羽の矢を立てたのが、海外では先行して人気の出ている、クリーミーはちみつです。
ポーランドのメーカーが、3、4年前に発売した製造器を、専門誌の記事で目にしていた鈴木さん。とある国内商社が、その取り扱いを始めた、と聞きつけたからです。
そして、一昨年の10月、国内1号機が、無事、はぁもにぃに導入されました。
検証を重ねて、ようやく.
すぐに試作に取りかかり、昨年1月から、複数の商談会に出品すると、「すごく評判が良くて、すぐにも卸してほしい、と引き合いが来ましたが、まだ試作の段階なので、と待っていただいてます」と、長浜さん。手応えは十分でしたが、一般販売には慎重を期しました。ハチミツを、ほどよく結晶化させることがクリーム化の肝ですが、配合や、温度に大きく影響を受けるからです。
鈴木さん曰く、「冷蔵販売なら、もう完成していて、販売できる」そうですが、常温で、品質を長期間保持できるか、現在、実際に、複数のサンプルを室温で保管して、状態を検証しているところです。とはいえ、順調にいけば、正式販売はもうすぐの予定。ひとまず、気温の下がる秋以降を目標にしています。
「取引先の生協さんで、10月からの数ヵ月間、季節限定で販売する話が、ようやくまとまりました」と、長浜さん。
昨年度は、売上が、前年三割減で赤字決算になりましたが、「これまで、給料を下げたことは一度もありません」。平均給料月額は、9万円台を達成させました。
「コロナで借入も増えました。でも、自分には言いたいことがあって、環境さえあれば、力を発揮できる子たちがいる以上、やっぱり、諦めるようなことは、うちにはできません。
ただ、収益を出していかないと、法人そのものが、もう、危うくなってしまう、というようなはざまにずっといるのも事実です」。
そう語る長浜さんたちは、現在、事業体制の再編にも取り組んでいます。経費がかかるだけで、今、持つ必要のないものは手放して、スリムに。その代わりに、必要に応じて、外部ときちんと連携するしなやかさを手に入れよう、と模索中です。
ヒットの予感を放つクリーミーはちみつが、はぁもにぃの挑戦に大きな弾みをつけてくれるに違いありません。