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2023年度,障害者の働く場,パワーアップフォーラム。人は自立して生活することで幸せを感じられる.

2023年度テーマ、インクルーシブに働きたい、を実現しよう.

本年度のパワーアップフォーラムは、9月1日の東京会場では、会場でのリアル開催、および、YouTube を通じたライブ配信によるハイブリッド形式で、9月12日の福井会場と、9月20日の福岡会場では、現地からお届けするオンライン形式で開催し、多くのかたに参加いただきました。

国連からの通知簿は、日本社会へのイエローカード.

開催にあたり、山内理事長は、「大切なのは、インクルーシブに働きたい、と、願う利用者さんの声に、どう応えていくかです」と、挨拶。「今日は、講演者のお話などから、障害のあるかたの現状や、実践的な支援のありかたを一緒に学び、明日への元気を持ち帰ってください」と、呼びかけました。

エヌピーオー日本障害者協議会の藤井克徳代表には、障害者権利条約と、会場ごとのテーマで、講演いただいています。

「2022年、日本政府の権利条約への取り組みに対する国連からの通知簿、総括所見には、当事者を置き去りにした父権主義的な対応となっている、と、書かれています。これは、障害のあるかただけでなく、いまの日本社会全体へのイエローカードです」と、解説しました。

さらにヤマト福祉財団、小倉昌男賞受賞者や、全国の福祉施設の代表者が、働く場の拡大から、支援方法まで、具体的な取り組みを報告。シンポジウムでは、来場者、視聴者からの質問にも答え、有益な時間を共有できました。

山内理事長.

エヌピーオー日本障害者協議会、藤井克徳代表.

9月1日 金曜日、東京会場。インクルーシブに働きたい、を実現しよう.

東京都立,産業貿易センター,浜松町館のリアル会場には、約60名が来場。同時配信した YouTube には、約100名のかたに視聴いただきました。

特別講演.

なんの隔たりもない社会を、共に働く就労支援の意味を問い、共に考える。ソーシャルファームの取り組み経過から.

東京家政大学,名誉教授,社会福祉法人,ほうしんかい,顧問,上野 容子 さん.

精神に障害のあるかたたちが、当たり前に暮らせる社会へ.

1970年代、私は、精神科病院のソーシャルワーカーとして働いていました。当時は、治療イコール入院であり、病状が安定しても、簡単に退院できません。その理由は、ご家族にも疎んじられた患者さんが、地域での生活を、自ら諦めてしまっていたからです。

そんな現実を知った私は、豊島区の患者さんのご家族と、ほうしんかいを設立。精神に障害のあるかたの仕事、雇用する企業などの拡大に努めています。さらに、患者さんたちの就労指導者を育成するため、大学で教鞭をとるようになりました。

より多様な働く機会と、喜びを、当事者と一緒に創出したい.

ソーシャルインクルージョンとは、だれもが共に暮らし、共に活動し、共に働くことができる社会。しかし、いまだに、精神障害のあるかたは、生産性と、利益優先の労働から排除されています。

そこで、私が推進しているのが、ソーシャルファームです。現在、行政もソーシャルファーム認証制度を整えるなど、応援してくれています。ファームと言っても、業態は食品製造や、カフェ運営など、自由です。大切なのは、当事者たちの能力、希望とマッチングできる多様性を持つこと。そして、当事者が主体的に経営や事業に一緒に取り組み、成立させていくことです。

経営コーディネーターとも協力し合い、より高い給料支給を目指していく。そんな活動を全国に広げていきたいと考えています。

小倉昌男賞,受賞者講演.

なぜ、高工賃を目指してきたのか。その先に見えてきたこと.

社会福祉法人パレット・ミル,常務理事,中山 みち代 さん.

各自の個性、色に合う仕事を選び、支援していく.

滋賀県栗東市にあるパレット ミルでは、さまざまな障害のあるかたが、自立を目指して働いています。パレットは、流通業など、フォークリフトで、ものを運ぶ際に載せる台。ミルは製造工場です。そして、この名には、みんながいろんな色を持ち寄り、夢を描いていこう、そんな思いも込めています。

そこで、私たちは、より高い給料と、自分に合う仕事を選べるようにしていきました。現在、樹脂パレットのリユース、発泡スチロールの減容、木工、製菓、施設外就労などの仕事も広げています。

給料とともに自己肯定感も高まり、さらに上を目指す.

私たちが目指すのは、障害者だからと言われない高い品質、より効率的で働きやすい環境、適材適所で力を発揮できる支援、最低賃金の保障などです。

現在、月額平均給料は、7万円を超えています。給料は生活の糧だけでありません。自分が認められた、評価された。そんな自己肯定感を得ることで、仕事への意欲もより高まっていきます。そんな利用者さんの成長していく姿に鼓舞されて、私たちも、支援のありかたをさらに工夫しているのです。

コロナ禍で仕事が激減し、大変な時期が続いていますが、各企業にお声がけいただき、給料を減らさずに頑張れています。改めて、だれもがお互いに必要とし合うインクルーシブな社会、働き方の大切さを噛み締めているところです。

会場では、あまみんのジェラート、16種類が配られました.

実践報告1、仲間と共に創出する、インクルーシブな社会.

エヌピーオー法人,カムイだいせつ,バリアフリー研究所 ,チーム紅蓮,施設長,五十嵐 真幸 さん.

私はこつ形成不全症で、幼いときからずっと車椅子生活です。でも、普通にみんなと同じ学校に通い、自分が障害者だということを忘れていました。ところが、就活を始め、車椅子、と書くだけで書類選考落とされる、そんな現実に直面します。社会は、私たちのことを知ろうともせず、偏見を持っている。それを払拭したくて、仲間とエヌピーオーを立ち上げました。いまは、私たちの視点で、だれにも優しい町づくりや、故郷、旭川の観光イベントなどを企画。地域に必要とされる、さまざまな仕事を自ら創出し、インクルーシブな社会実現を目指しています。

実践報告2、尽きないチャレンジ、これからの夢。奄美大島での農福連携.

株式会社,リーフエッヂ,あまみん,代表取締役,田中 基次 さん.

最初の事業は、高齢化が進み、人材不足に悩む農家のお手伝いで、労働対価は、作物の現物支給でした。それを現金化したい、畑で働けない利用者さんの仕事もつくりたい、と試行錯誤の末、たどり着いたのが、ジェラートと、ハーブティー製造の六次化です。一時期はコロナ禍で観光客が激減しましたが、お取り寄せブームや、奄美群島の世界遺産登録などの追い風を受け、順調に売上を伸ばしています。今後は、農福連携をもう一歩進め、とうない循環型農業や、農泊事業にもチャレンジ。地域のかたと一緒に楽しく仕事を拡大しようと、夢を語り合っています。

シンポジウム。共通テーマは、インクルーシブに働きたい、を実現しよう.

インクルーシブに働くとは。各人の視点でふかぼりする.

シンポジウムでは、コーディネーターの藤井さんが、インクルーシブに働きたい、を実現しよう、をキーワードに、各会場ごとのテーマに沿った、いくつかの質問を投げかけました。

障害の有無など関係なく、子供たちが一緒に学ぶ環境をつくることが、インクルーシブな社会を創る礎になる。

障害者が、社会に必要とされる仕事に就けば、地域の理解も深まり、共に働き暮らす環境づくりにつながるはず。

その点、農福連携は、まさに適した方法だと言える。

職員は支援にてっし、利用者さん主体の仕事の進め方へ。

それが実現できれば、意欲も増し、毎日気持ちよく仕事ができ、給料も増えていく。

やりがい、目標を持って働き、地域のなかで、自立して暮らしていける体制を築こう。

それには、支援員だけではなく、経営者としての視点と、工夫が必要。

シンポジストたちの意見を聞いた藤井さんは、「本来、働く、とは楽しいものです。もっと自由に、各人の個性を伸ばせる仕事づくりと、支援をおこないながら、いまの私たちにできる、インクルーシブな取り組みも、同時に進めていきましょう」と、呼びかけました。

山内理事長も、「みんなが一緒に働き、幸せになっていける、そんな社会をつくっていきましょう。ヤマト福祉財団もお手伝いしていきます」と、伝えました。

福岡会場.

福井会場、9月12日,火曜日。メンバーと共に立ち上げた農福連携実践で、工賃向上を目指す.

福井県あわら市の、休校になった小学校を改造した、波松ステイ,なみまち CAFE が、メイン会場です。その近くにある、エヌピーオー法人,ピアファームが運営する観光果樹園からの現地リポートで、フォーラムは開幕しました。

特別講演、農業で工賃向上.

エヌピーオー法人,ピアファーム,理事長,林 博文 さん.

競合相手が少ないほど、事業として成功しやすい.

福井県あわら市は、稲作が主体。当初、「果樹栽培は、素人ができるほど易しくはない」と、反対されました。あえてぶどう栽培を選んだのは、「ライバルが少なければ、販売しやすく、成功率が高い」と、考えたからです。

私は、どんな品種を、どう栽培するかなど、果樹栽培のプロの指導を受け、設備購入には、助成金をとことん活用しました。助成金は、自施設の理念や、現状を明確にしなければ申請できません。これは、職員の意識向上を図る上でも、とても効果があります。

地域と一緒に成功を目指す農福連携こそ、計画性が重要.

私の目標は、利用者さんが、さりげなくあたりまえにはたらく、インクルーシブな世界です。そのためにも、安定した生産、品質の実績を築き、農業法人の認定も取り、本物の農業者として、周りに認めていただけるように努めてきました。

大切なのは、中期、長期の計画を立てることです。私は、毎日、うちの畑の天候や、気温変化と、作物への影響を記録してきました。これをもとに改善点を見直し、毎年、新たな栽培計画を立てています。

現在、観光ぶどう農園、あわらベルジェが開園中です。私が塾長を務めるぶどう栽培塾でも、お客様が収穫して、買っていただける、観光農園のメリットを伝えています。

農業に特化した就労支援は、地域と一緒に町を活性化する意味でも、非常に大事なところだと思います。

実践報告1、農福連携による、高工賃の実現.

社会福祉法人,ゆずりは会,菜の花,管理者,おぶち久徳 さん.

私が、平成27年に、ヤマト福祉財団の夢へのかけ橋実践塾、熊田塾に入塾し、最初に実践したのは、ピーディーシーエーを回すことでした。そこで、年間栽培計画の重要性に気づいたのです。それが、収益の高い作物の選定や、機械化にも繋がりました。現在、ナガネギや、ブロッコリーに加え、雨でも収穫ができるタマネギ、エダマメなど、約8品目を、計画的に栽培しています。そして、入塾時、2万7,000円の給料は、約5万円に。昨年は、タマネギ高騰の影響で、76,000円になりました。今後も、地元農家や、他業者とも力を合わせ、みんなで、もっとハッピーになりたい、と思っています。

実践報告2、私たちが目指す農福連携.

一般社団法人,空,代表,熊田 芳江 さん.

これまで、多くの福祉施設が、熊田塾、農福連携実践塾を卒業し、全国で、農福連携の実践者として活躍中です。おぶちさんには、昨年末から、たまねぎ栽培塾の塾長を務めてもらっています。年々、高齢化、人手不足が深刻化していく日本の農業が期待するのが、地域にも大きなメリットを生む、農福連携です。その成功に、最も必要なのは、なんとしても農業をやる、という福祉側の強い覚悟。それが伝われば、作物の選定や、栽培方法、また、農地の確保など、周りの農家が協力してくれるはず。なにより、自分たちが地域に溶け込んでいくことです。

福岡会場、9月20日 水曜日。地域産業の活性化を図り、地域とともに、暮らしていく.

福岡会場は、八女市のイベント施設、八女市民会館,おりなす八女です。「会場には、地域産業を盛り上げる一翼を担う、ハイジ福祉会が栽培する、美しいガーベラが飾られています」と、山内理事長が紹介し、オンライン配信をスタートしました。

特別講演。利用者も、職員も幸せになる取り組み。ハイジ福祉会の農福連携.

社会福祉法人,ハイジ福祉会,理事長,山口 由紀子 さん、施設長,山口 隆充 さん.

精神障害者が安心して働ける居場所を。山口理事長.

精神障害者の兄がいたことが、私が福祉の世界に入るきっかけです。2001年当時は、利用者さんの仕事も、給料も驚くほど少なく、これはなんとかしなければ、と営業に走り回りました。目指したのは、多様な仕事から適したものを選び、ここが自分の居場所だ、と安心して通えるようにすること。さらに、全国の仲間と、精神障害者の交通運賃割引の署名活動を開始。2017年には、鉄道や、航空会社などの割引も実現できました。

地元農家も、利用者さんも、ウィン ウィンに。山口施設長.

八女市はガーベラの一大産地ですが、農家は深夜に及ぶ調整、出荷作業に苦労しています。そこでジェイエーと交渉し、2014年にフラワーパッケージセンター、エフピーシー を開設しました。仕事がない福祉と、高齢化や人手不足に悩む農業の、足りない部分をマッチングさせたい、というのが理由でした。

エフピーシーでは、農家より持ち込まれる花卉の調整、出荷作業を、ハイジ福祉会の利用者さんが担当。農家は栽培に集中することで、いままで以上に生産を拡大しています。

また、調整、出荷作業だけでなく、自ら、ガーベラや、トマトの生産を手がけるようになりました。ガーベラは1年中、花が収穫できるので、利用者さんが継続的に仕事ができます。現在は、ジェイエーに加入し、花の町、八女市の戦力になっていると自負しています。

実践報告1。誰もが対等に地域で働き、地域で生きる活動を目指して.

社会福祉法人,くまもと障害者,労働センター,理事、事務長,野尻 健司 さん.

「人生で、一度は、社会で働いてみたい」。そんな脳性麻痺のかたの言葉に、自分の無力さを知った私は、もう一度、大学で学び直すことに。そこで出会った恩師と立ち上げたのが、くまもと障害者労働センター、通称、おれんじ村です。事業は菓子、弁当の製造と、その販売をおこなうカフェの運営など。おれんじ村では、利用者さんも、職員も対等です。だから、「障害や能力で格差が出ないように」との、みんなの意見をもとに、時給、380円を一律で支払うことに。今後も、当事者の考えを反映し、ひとりひとりが望むライフステージを、ひとつずつ実現していきます。

実践報告2。小さい施設でも、ステップアップできること.

一般社団法人,あんずの森,代表,泉 栄 さん.

夢へのかけ橋実践塾、新堂塾に入った私は、挫折感を味わいます。他塾生は、次々と給料、仕事量アップと結果を出していく。みんなのマネをしたくても、うちは愛媛県松山市の田舎にある小さな施設で、周辺環境や、特産品など、まったく違う。さらに、追い討ちをかけて、コロナ禍で大ピンチに。そのとき、小さいから小回りが利くし、意思決定も早い、と、発想を転換しました。そして、新堂塾で出会った、ペットフード会社の仕事や、近隣の物流センターでの施設外就労などにつながりました。今後も、弱点を強みに変え、給料増額を目指していきます。

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