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私たちの賛助会費が活かされています。障害者給料増額支援,助成金。助成先レポート、ボリューム46。

通年できる水耕ハウス栽培で、彼らの暮らしの質を高めていく.

立山黒部アルペンルートの玄関口、立山町。稲作中心のこの地域で水耕栽培事業に挑み、今年6月の平均工賃、約2万5,000円を実現させたのが、わくわくファーム きらり です。しかし、これまでの道程には、予想を超える物語がありました。

エヌピーオー法人,クラシーズ,わくわくファーム,きらり.

水耕栽培事業部,グリーンハート.

富山県中新川郡立山町.

無農薬で、大切に育てる水耕栽培.

立山連峰の雄大な山並みを遠くに望む平野に、水田が広がります。その中に白い建物が見えてきました。富山駅から車で走ること、約40分。近づくほどに、その大きさが際立ちます。

訪れたのは、8月の下旬。6つの棟が連なったように見えるビニールハウスは、1反、50メートル。プールがすっぽり収まってしまいそうな広さ。内部の暑さは相当なものです。そこですくすくと育っていたのは、水耕栽培のサラダほうれん草。腰の高さに設置したベンチから、青々とした葉を覗かせていました。

「ここで、月に、約1トンの野菜を出荷しています」と話すのは、わくわくファーム きらり,理事長の息子で、栽培責任者の中島大地さん。

2021年、当財団の助成を活用して新調したすいこう用定植パネル、1,300枚と、遮光ネットが、ここで一役、買っています。パネルは、銀イオンを含む抗菌作用が期待できるもので、野菜の病気がぐっと減ったそうです。また、収穫後のパネルは消毒洗浄しますが、以前に比べて、軽量で扱いやすいため、洗浄にかかる負担も減少。夏でも、冬でも、カッパ着用で、水洗いする時間の短縮にもつながったと言います。

パネル洗浄のほか、障害のある利用者は、定植や、収穫された野菜の調整を主に担当。調整とは、折れた茎など、不備のある部分を取り除く作業だそう。収穫や、計量、袋詰めは職員がおこなっています。

「水耕栽培の野菜は軟らかくて、折れやすいんです。収穫は一番難しい作業で、健常者でも、できない人はできません。1から10まで利用者ではなく、要所に健常者も入って、互いの得意をかけ合わせて、一緒にやっていくのが、自分たちの農福連携だと考えています」。

降って湧いた、借金話.

「中島さんは公務員だから、簡単に借金できるよ、って、その社長に言われて。銀行に相談に行って、結局4,000万、借りたんですよ」。

理事長の中島 よしみさんに、同団体発足の経緯を伺うと、それは数奇なものでした。

7年前に、定年を迎えた中島理事長は、元教員です。支援学校で20年、普通中学校の特別支援学級で20年。特別支援学級に移ったころに、お母さんたちと、障害児の将来をどう組み立てていくのか、勉強会を立ち上げます。

その活動で知り合ったのが、なにかと手助けしてくれたひとりの事業家です。彼は障害者を自社で雇い、寮で自立させるというビジョンを、熱心に語っていました。

「ついては彼らの住む寮を、中島さん、建ててくれないか、と言い出したんです。えー、なんで私がって」。しかし、当時のお母さんがたは、将来を思い描くには程遠く、前向きになれずにいました。そこで、中島さんは決断します。

「彼らが自立して暮らす姿を見れば、考えも変わるかなって」。ところが、3年ほどで、その会社は倒産。事業家も、住んでいた障害者もいなくなってしまいました。残ったのは借金と建物だけ。

「愕然としました。こんなことってあるんかな、って。でも、私、ずっと落ち込んでる人でもないので、その寮を、グループホームにしようと、仲間を集めて検討を始めました」。

エヌピーオー法人であれば運営ができることを行政に確認すると、2003年には法人を立ち上げ、グループホーム事業のスタートに漕ぎ着けます。ほぼ同時に、働くところも必要だと始めたのが、きらりです。

就労からのノーマライゼーションへ.

畑を借りたネギ栽培などを中心事業としてきた,きらりが、水耕栽培に手を広げたのは2016年のことです。17年間、障害者雇用に励んできた企業、野菜ランド立山が廃業されると聞き、引き継ぎました。

大地さんによれば、現在、ルッコラや、フェンネル、ミニセルリーといった、新種の野菜など、栽培品種を10に増やし、その中のひとつであるパクチーを加工したソースの製造販売も計画しているそうです。

水耕栽培事業の年間売上目標、1,200万円も、手の届かない数字ではありません。

同法人の理念は、ともに生きる、ともにくらす、ともにはたらく。

その原点は、理事長の教員時代の経験です。生徒の就職先を探して、県外まで回りましたが、社会の壁は厚く、ありのままの障害者を理解して、採用してくれる会社はわずかだったと言います。

「生徒たちは、違いを説明もできなければ、自分たちの力で距離を縮めていくこともできない。だから、私は、彼らなりの働き方で頑張ったり、生き生きしたりできる場を作ってあげたかったし、そんな姿を知ってもらえれば、世間の見方も変わるんじゃないかな、って思っているんです」と、理事長。来年には、地域との交流スペースとして、カフェを併設した、多機能型事業所を新たにたちあげる予定です。

「障害者との関わり方を学びたい、という福祉サポーターの研修も近々、町から引き受けます。もっと、ここで、交流が生まれてくれればいい、と思います」

わくわくファーム きらりは、障害者の暮らしを考え、ひたむきに進んでいます。

この日、ネギ畑では除草作業中。佐藤委員長も、炎天下の畑でお手伝いしました.

サラダほうれん草の調整作業。繊細さが求められます.

立山連峰を背中にして、わくわくファームきらり。敷地には、ログハウスのグループホーム、2棟があります.

水耕栽培のハウスで、利用者のみなさんと.

理事長の中島よしみさん.

水耕栽培事業の責任者、中島大地さん.

グループホームのスクラム。ここから事業がスタートしました.

集荷後の水耕栽培パネルは、すべて手洗いで、殺菌洗浄しています.

労働組合,支部執行委員長,助成先訪問,シリーズ41.

ヤマト運輸,労働組合,富山支部執行委員長,佐藤 哲也さん.

改めていろいろと勉強になりました.

施設に実際にお伺いするのは初めてでした。障害のあるかたたちが、こうしたところで一生懸命がんばっていることは、まだまだ世間の人たちに知られていないですね。もっと情報発信していく必要性を感じました。

社員のみなさんからお預かりした夏のカンパ金が、こういった形で、県内の施設でお役に立っていることを、組合員の方々に、もっと深く伝えていかなくてはならないと思いました。

青年部のボランティア活動では、例えば、これまで、地域のゴミ拾いなどに取り組んできました。こちらにお伺いして、自分たちができることは他にもいろいろあると分かりましたので、今後は、そうした視野も持ちながら運営していきたいと再確認しました。

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