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私たちの賛助会費が活かされています。障害者、給料増額支援、助成金。助成先レポート、ボリューム49。

咲きかた、水の吸いあげ。花はそれぞれ。つぼみの歳月も、大切な時間。

子どもがなりたい職業で人気の花屋さん。その花屋を運営して、障害者の雇用拡大に挑戦しているのが、ローランズ プラスです。ときに、人生の節目を彩ることもある花を扱って、いきいきと仕事をする利用者さんたちの仕事場を訪ねました。

一般社団法人、ローランズ プラス。東京都渋谷区。

2023年度、障害者給料増額支援助成金、353万円。

助成内容。
花卉を保管するためのフラワー キーパー(冷蔵庫)および、輸送用車両の購入資金。
形態。
就労継続支援A型、40名。
売上。
7,580万円。
月額平均工賃(A型)。
93,960円。2023年度。

生花で障害者雇用を生む。

にぎわう原宿駅の喧噪を背に、10分ほど歩くと、閑静なオフィス エリアの一等地に、お洒落なカフェを併設した、フラワー ショップが目に入ってきました。花に関わる事業を通して、障害者の働く場や、職域の拡大を試みるローランズです。

2013年に、まず、花屋として、資本金100万円で、株式会社ローランズを起業。軌道に乗った3年後、一般社団法人、ローランズ プラスを設立。つづけて、その翌年に、就労継続支援A型の事業所ローランズ プラスをスタートさせました。

「当初から障害者雇用を志して、事業を始めました」と、代表の福寿みづきさん。

店頭販売や、フラワーギフト、ブライダルそうか、観葉植物のレンタル、商業施設やビルなどの植栽管理といった、株式会社ローランズの受注業務の中から仕事を切り分けし、ローランズ プラスの利用者さん40名が、それぞれに合った仕事を担当する仕組みです。

「結婚式のお花を手がけるとしたら、お客さまと打ち合わせをして、デザインを決定し、デッサンを起こして、という企画営業の部分を会社が引き受け、実際にかざいの仕入れや管理調整、装飾花の製作を、利用者さんたちがおこなっています」。

フラワー キーパーと、車両を導入。

ローランズ プラスは、昨年10月、当財団の助成を利用して、フラワー キーパーを、12月に大型バンを導入しました。フラワー キーパーは、低温で、花の鮮度を管理する冷蔵庫です。

「通常の温度ですと、バラなどは早く開きやすく、どうしてもロス率がアップしてしまうんです。フラワー キーパーに入れると、花のちが1.5倍くらい長くなり、ロス削減につなげられます」。

大型のバン導入で、積載できる花の量も、これまでのものより1.8倍にアップ。納品業務の効率が上がりました。

導入の背景には、神奈川県を中心に、全国で約70店舗を運営するスーパーマーケットと共同して、1店舗だけ任されていた、そくかの販売を拡大するという計画がありました。その打診に応えるためには、設備の増強が欠かせませんでした。

「月に約600束を納品していたんですけど、2000束ぐらいになりました。また、別に、新たな式場との契約もこの間にまとまり、供給力のアップがこういったことにつながっているなと思います」。

花卉関連と、カフェ事業の売上は、2022年度の約7,180万円から、2024年度は8,340万円を予想。利用者の月平均給料も、在籍人数ベースで、2022年度の81,000円から、本年度は16パーセント アップの見込みです。

花ほころぶ、人もほころぶ。

福寿さんが障害者雇用に関心を持つきっかけは、たまたまだったと言います。

「大学3年生のときに、単位も取れるし、資格も取れる、せっかくならという理由だけで、特別支援学校へ実習にって、教員免許の取得をしたんです。そうしたら、価値観ががらっと変わったというか」。

福寿さんが実習にった特別支援学校の就職率は、当時、15パーセントほどだったそう。

「自分は、ずっと学生でいたいと思っていたんですけど、働くことを夢みたいに思って、目をキラキラさせている子どもたちを前にして、働くって、誰にとっても当たり前のことではないんだ、って」。

それが、「将来、そういった受け入れ先となれるような会社を自分で作りたいな」と、思うにいたった、福寿さんのげんたいけんになりました。卒業後に、社会人を2年経験。新人として忙しい日々を送る中で、通勤途中の花屋に心を癒され、生活に花を採り入れるように。気がつけば、フラワー アレンジメントのレッスンにも通うほど、のめり込んでいました。

起業は、自宅の一角で、フラワー ギフトのみからのスタート。やがて、スタッフを抱えるようになり、会社も安定してきたことから、障害者雇用を始めようと言い出したところ、「スタッフがみな辞めてしまったんです。ふつうに花屋さんとしてやっていて、障害者雇用をしたくて起業した、とそれまで私がスタッフの誰にも話していなかったため、目標の共有ができていなかったんです」。

しかし、そこから、「福祉に関心のない人たちにも、いいなと思ってもらえるような商品を作って、障害のあるなしに関わらず一緒に働き、暮らしていけると証明すること、イメージを変えていくことが大事」と、強く感じたと福寿さん。

「花はひとつひとつ、全然ちがうんです。花と向きあうには、その違いをよく見極めることが大切で、それは、人との向き合いかたでも同じ。そうした部分を、いま、グループ内できちんと言語化している最中です」。

誰もが、自分らしく咲ける。花を愛する眼差しから導きだした目標が、ローランズ プラスにはあります。

新たに整備されたフラワー キーパー。鮮度管理に貢献します。

利用者さんから、花束のアレンジを教わる中村委員長。

ローランズ プラス代表の福寿みづきさん。

助成で導入した配送車両。今までは、軽トラで2往復していたところも、これなら1回で。

1階には、カフェ併設のフラワーショップ、ローランズ。3階は作業場になっており、束花つくりや、ブライダル向けのアレンジをおこなっています。

カフェで提供しているスムージー。花をモチーフにしており、エディブルフラワーをあしらったものも。

カフェの一角では、ブライダルから戻ってきた花を再アレンジメントして、販売もしています。

労働組合支部執行委員長、助成先訪問。シリーズ44。

ヤマト運輸労働組合、副都心支部執行委員長、中村 晃さん。

多様な個性を持つかたが、本当はそばにいる

ブーケ作りのコツを、若い利用者さんが丁寧に教えてくれました。慣れた人にしかできない仕事ですね。お花を押さえるにも意外と力がいること、触って、初めて分かりました。

学生時代の経験を、福寿さんは、自分の至らぬところと仰っていましたが、出会いで得られる気づきの大切さを感じました。じつは、私がヤマトに入社したとき、のちに福祉財団を創設された小倉昌男さんは、まだ社長をなさっていました。昭和62年、最後の年かな。それで、私も、小倉昌男さんに対する思いは強いんです。日本国内の12人に1人は障害のあるかたです。地域の中に、共生の輪を広げるお仕事をされているさまをお伺いできて、胸が熱くなりました。カンパが役立っていることと一緒に、社内に発信していきたいと思います。

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