生花で障害者雇用を生む。
にぎわう原宿駅の喧噪を背に、10分ほど歩くと、閑静なオフィス エリアの一等地に、お洒落なカフェを併設した、フラワー ショップが目に入ってきました。花に関わる事業を通して、障害者の働く場や、職域の拡大を試みるローランズです。
2013年に、まず、花屋として、資本金100万円で、株式会社ローランズを起業。軌道に乗った3年後、一般社団法人、ローランズ プラスを設立。つづけて、その翌年に、就労継続支援A型の事業所、ローランズ プラスをスタートさせました。
「当初から障害者雇用を志して、事業を始めました」と、代表の福寿みづきさん。
店頭販売や、フラワーギフト、ブライダルそうか、観葉植物のレンタル、商業施設やビルなどの植栽管理といった、株式会社ローランズの受注業務の中から仕事を切り分けし、ローランズ プラスの利用者さん40名が、それぞれに合った仕事を担当する仕組みです。
「結婚式のお花を手がけるとしたら、お客さまと打ち合わせをして、デザインを決定し、デッサンを起こして、という企画営業の部分を会社が引き受け、実際にかざいの仕入れや管理、調整、装飾花の製作を、利用者さんたちがおこなっています」。
フラワー キーパーと、車両を導入。
ローランズ プラスは、昨年10月、当財団の助成を利用して、フラワー キーパーを、12月に大型バンを導入しました。フラワー キーパーは、低温で、花の鮮度を管理する冷蔵庫です。
「通常の温度ですと、バラなどは早く開きやすく、どうしてもロス率がアップしてしまうんです。フラワー キーパーに入れると、花のもちが1.5倍くらい長くなり、ロス削減につなげられます」。
大型のバン導入で、積載できる花の量も、これまでのものより1.8倍にアップ。納品業務の効率が上がりました。
導入の背景には、神奈川県を中心に、全国で約70店舗を運営するスーパーマーケットと共同して、1店舗だけ任されていた、そくかの販売を拡大するという計画がありました。その打診に応えるためには、設備の増強が欠かせませんでした。
「月に約600束を納品していたんですけど、2000束ぐらいになりました。また、別に、新たな式場との契約もこの間にまとまり、供給力のアップがこういったことにつながっているなと思います」。
花卉関連と、カフェ事業の売上は、2022年度の約7,180万円から、2024年度は8,340万円を予想。利用者の月平均給料も、在籍人数ベースで、2022年度の81,000円から、本年度は16パーセント アップの見込みです。
花ほころぶ、人もほころぶ。
福寿さんが障害者雇用に関心を持つきっかけは、たまたまだったと言います。
「大学3年生のときに、単位も取れるし、資格も取れる、せっかくならという理由だけで、特別支援学校へ実習にいって、教員免許の取得をしたんです。そうしたら、価値観ががらっと変わったというか」。
福寿さんが実習にいった特別支援学校の就職率は、当時、15パーセントほどだったそう。
「自分は、ずっと学生でいたいと思っていたんですけど、働くことを夢みたいに思って、目をキラキラさせている子どもたちを前にして、働くって、誰にとっても当たり前のことではないんだ、って」。
それが、「将来、そういった受け入れ先となれるような会社を自分で作りたいな」と、思うにいたった、福寿さんのげんたいけんになりました。卒業後に、社会人を2年経験。新人として忙しい日々を送る中で、通勤途中の花屋に心を癒され、生活に花を採り入れるように。気がつけば、フラワー アレンジメントのレッスンにも通うほど、のめり込んでいました。
起業は、自宅の一角で、フラワー ギフトのみからのスタート。やがて、スタッフを抱えるようになり、会社も安定してきたことから、障害者雇用を始めようと言い出したところ、「スタッフがみな辞めてしまったんです。ふつうに花屋さんとしてやっていて、障害者雇用をしたくて起業した、とそれまで私がスタッフの誰にも話していなかったため、目標の共有ができていなかったんです」。
しかし、そこから、「福祉に関心のない人たちにも、いいなと思ってもらえるような商品を作って、障害のあるなしに関わらず一緒に働き、暮らしていけると証明すること、イメージを変えていくことが大事」と、強く感じたと福寿さん。
「花はひとつひとつ、全然ちがうんです。花と向きあうには、その違いをよく見極めることが大切で、それは、人との向き合いかたでも同じ。そうした部分を、いま、グループ内できちんと言語化している最中です」。
誰もが、自分らしく咲ける。花を愛する眼差しから導きだした目標が、ローランズ プラスにはあります。