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巻頭特集、理事長を囲んで。

だれもが幸せになれる社会へ。職場で、地域で、社員のみなさんは、なにを考え、行動していますか?

ヤマト福祉財団は、心身に障害のある人々の自立と、社会参加を支援することを目的に、1993年に設立されました。基本財源は、初代理事長、小倉昌男氏が投じた私財。その活動を支えるもうひとつの柱が、ヤマトグループ社員の賛助会費と、ヤマトグループ企業労働組合連合会による、夏のカンパです。

日々、障害のある社員と一緒に働くみなさんは、職場や、地域社会でどんなことを考え、行動されているのでしょうか。

今回は、労働組合、三河支部、支部執行委員長の松田隆志さん、滋賀主管支店、大津おおがや営業所グループ長の山村一樹さん、羽田クロノゲートベース、障害者雇用推進者の田中日和さん、西東京主管支店人事、総務の小池快虎さんに集まっていただき、お話を伺いました。

ヤマト運輸本社ビル2階受付前で、左から松田隆志さん、田中日和さん、山内理事長、小池快虎さん、山村一樹さん。

農業ボランティアで、利用者さんと一緒に田畑へ。

山内理事長:以下、理事長:今日はお忙しい中、ありがとうございます。これまで、この座談会では、有識者もお招きし、障害者が働く環境や、支援制度のありかたなどを語り合って来ました。今回は、社員のみなさんが、日々、感じていることをお聞きする、とても良い機会だと、楽しみにしています。

松田隆志:以下、松田:そうお聞きすると、なんだか緊張して来ますね。

理事長:肩の力を抜いて気楽にいきましょう(笑い)。最初に松田さんからいきましょうか。財団では、ヤマト運輸労働組合と連携して、ボランティア活動を展開しています。そのひとつが、各支部の近くにある、福祉施設の農作業のお手伝いです。三河支部では、2021年に社会福祉法人無門福祉会と一緒に活動しましたね。

松田:そこから、毎年、自主的に農作業のお手伝いに伺うようになりました。春にサツマイモの苗の植え付け、秋には収穫など、基本的に年2回。人数は、ご家族も含め、20から30名くらいです。

理事長:参加者たちの感想は?

松田:ボランティアという堅苦しい捉え方ではなく、イベントみたいな感覚ですね。特に、子どもたちが大喜びで、畑で焼き芋をつくったり、女性たちも、虫やミミズが出てこようが関係なく、利用者さんたちと一緒に土にまみれて楽しんでいます。地元のスーパーで売っている無門福祉会の美味しい椎茸などを、障害のあるかたたちが、こんなに楽しそうに、丹誠込めて育てているんだ、とわかるだけでも良い体験になっていると思います。

理事長:いまや、障害のあるかたは、日本の農業を支える重要な働き手として、期待されています。無門福祉会は、無農薬無肥料無除草剤の自然栽培で、安心安全な農作物を作られているんですよね。

松田:お米も、野菜も、どれも美味しくて、お昼の炊き出しも楽しみのひとつです。そんな様子を組合の広報誌で紹介し、5名ほどですけど、お米を抽選でプレゼントもしています。一度参加したかたは、「ぜひ次も」となり、参加者を募ると、自然に集まってくるようになりました。

ベースで働く、障害のあるかたの悩みや、問題を解決する窓口。

理事長:田中さんの羽田クロノゲートベースには、障害のある社員は何人いらっしゃいますか?

田中日和さん:以下、田中:現在、31名が働いています。

理事長:全員の仕事の指示を田中さんが出されているのですか?

田中:荷物の仕分けや、掃除など、現場での指示は、各グループ長がおこなっています。私は、障害のあるかたの窓口であり、サポート役です。なにか問題があれば、一緒に解決していきますし、ときには、ご自宅まで訪ねて、ご家族ともお話をします。また、高校を卒業してヤマトに入社を希望するかたが、仕事内容や、職場の雰囲気を事前に知るための実習なども、私の担当です。

理事長:頼れるお母さんみたいな存在だと聞いていますよ。田中さんは、ヤマトで働く前から、障害者福祉に携わっていたのですか?

田中:障害のあるかたが、学校を卒業して、いきなり社会に放り出されてもなかなかうまくいきません。私の実家は、その準備のための自立支援ホームをやっていました。私がヤマトに入ったきっかけは、南東京ベースでアルバイトをしたとき、ヤマト運輸という会社が、障害者雇用や、福祉に対して、真摯に取り組まれていると知ったからです。ここでなら、私もなにかできるかもしれない、と、入社しました。

理事長:ヤマトグループ社員の行動指針には、「障害のあるかたに対する雇用機会の提供や、自立支援活動を推進する」と、記されています。これは、小倉昌男さんが自ら書き加えた言葉です。ヤマトグループは、社会的に弱い立場にいるかたも、みんなが生きがいを持って働き、楽しく暮らせる、幸せな社会を築くお手伝いをする会社でありたい。この意志を全社員が受け継いでいますが、働きながら、直接、関わり続けるのは難しい。そこで、私たちヤマト福祉財団が、みなさんの想いを受け取り、さまざまな形で、障害のあるかたの支援活動を展開しています。

松田:そんな活動資金のひとつが、組合員からの夏のカンパですが、ベースで働く外国人のアルバイトも一緒にカンパしてくれています。

理事長:ありがたいですね。

松田:さらにうれしかったのは、協力会社のドライバーのエピソードです。「これ使ってください」って、封筒を渡してくれたのですが、なかには千円サツと一緒に一万円サツが2枚も入っている。「本当にいいの?」って聞いたら、ありがね、全部、持って来た、って言うんですよ。

理事長:それは凄い

松田:もう感動してしまいました。

仕事ぶりを見ていれば、特別扱いなんて不要だとわかる。

理事長:一緒に仕事をされている小池さんはどうですか?

小池快虎さん:以下、小池:西東京主管支店の人事総務では、2名の知的障害のあるかたが働いています。1日のルーティンは、社内便の仕分け作業、備品セット、交通費の整理など。書類整理は、依頼があれば、他課の仕事も対応してもらっています。

理事長:ピーシーも使っているの?

小池:データ入力などですね。たとえば、ベースで働くアルバイト、約300人の契約更改には、膨大な情報量を入力しなければなりません。それを黙々と的確におこない、確認作業も正確で、とても助かっています。

理事長:仕事の説明をする際に気をつけていることは?

小池:順序立てて丁寧に説明するようにしていますが、それだけです。普段の会話も他の社員同様に、特別な気遣いなどなく、頼れる同僚としか見ていません。それどころか、毎朝、元気に挨拶し、職場を明るくしてくれているし、担当タスクをテキパキと終わらせ、手が空くと、自ら事務所の掃除までも。その仕事ぶりには頭が下がります。

理事長:彼らと一緒に仕事をして、小池さんご自身に、なにか変化は?

小池:おふたりのバッグには、ヘルプマークという赤いバッジが付いています。そのバッジの意味を理解したことで、自然に目がいくようになりました。すると、思った以上にバッジを付けているかたが身近に多いことがわかって来たんです。

理事長:いまは12人に1人が何らかの障害を持っているからね。困っている人を見つけたら、相手のことを考えて、自然に手を差し伸べる、そんな行動が当たり前の社会にしていきたいですね。

自分にできるプラスの提案で、より良い関係を築きたい。

理事長:山村さんはどうですか?

山村一樹さん:以下、山村:僕は大津おおがや営業所のグループ長で、職場の同僚に精神障害のあるかたがいます。お客様では、大荷主の社会福祉法人、共生シンフォニーさんの、がんばカンパニーという焼き菓子工場で、障害のあるかたがたくさん働いていますよ。

理事長:あそこのクッキーは人気がありますよね。月に扱う量は、どれくらいですか?

山村:大きなダンボールで300から400個ぐらいです。

理事長:共生シンフォニーを創設された中崎さんは、障害者福祉の世界では有名なかたなんですよ。利用者さんが働く上での支援はもちろん、事業も成功を収め、高い給料支給を実現されました。その経営方法などを、他の福祉施設にも知ってもらいたいと、財団が開催するパワーアップ フォーラムや、実践塾などでも講演いただいています。

山村:そんな偉いかただったんですか。いつも、「遊びに来ました」と、気軽に挨拶していました。

理事長:中崎さんなら、そのほうが喜ぶでしょう(笑い)。利用者さんとは、どんな会話をしているの?

山村:障害があるとか、意識したことはありません。中崎さんや、職員のかたとお話しするのと変わらず、普通に、たわいもない世間話をしています。そういえば、僕がグループ長として初めて営業したのは、がんばカンパニーでした。

理事長:商品がもっと売れるように、「イーコマースもこういう形でやってみたらどうでしょうか」とか、お手伝いできることはどんどん提案してください。それが利用者さんの給料増額につながっていきますからね。

山村:お互いにプラスとなる方法を考え、より良い関係を築いていきたいと思います。

ヤマトで働いている喜びを噛み締めながら、これからも。

理事長:山村さんは、障害のあるかたのご自宅にも伺うと思いますが、心がけていることはありますか?

山村:障害のあるかたは、インターホンを鳴らしても、すぐ動けなかったりしますので、焦らず待つように、と同僚にも伝えています。集配や配達時は気持ちがはやり、反応が遅いと、すぐまたインターホンを押してしまいがちですから。

理事長:お客様視点での対応だね。

山村:僕は、つねにお客様に嫌な思いをしてほしくないと考え、行動しています。これは小倉昌男さんの影響でもあるんです。著書もいろいろ読ませていただいています。

小池:私は入社前ですが、経営学の本を読みました。

理事長:若い世代に小倉さんの精神が、きちんと継承されているのはうれしいですね。障害のあるかたの働き方についても、しっかり考えてくれている。小池さんが話していたように、ひとつのことに集中して働くことができる人とかもいるので、適材適所で、得意な仕事に就けるようにしていきたいですね。

田中:彼らは凄いですよ。たとえば、仕分けコードをすべて暗記している人もいます。なにより、みんな、自分の仕事に誇りを持っている。先日、雪が降って大変だったとき、足に少し障害があるかたが一生懸命、ボックスを運んでいたんです。「大丈夫?」って聞いたら、「これは俺の仕事だから任せとけ」ってそれを見て、ほれぼれしました。

理事長:彼らは自分の存在を認めてもらえる喜びを、人一倍感じている。でも、それは我々にとっても、とても大切なことです。障害のあるなしなんて関係なく、互いの良さを活かし合って一緒に仕事ができる。そんな会社、社会でありたいよね。

松田:変わるべきものは変えていき、変わるべからざるものはみんなで守る。ヤマトとはそういう会社ですから。

田中、山村、小池:そんな会社で働いていることを誇りに感じますし、うれしく思っています。

理事長:みなさんは同じ志をいだく仲間ですね。その想いに応え、財団はこれからも活動していきます。

一同:よろしくお願いします

だれもが互いの良さを認め、活かし合える。そんな会社に、社会にしていこう。

ヤマト福祉財団、理事長、山内雅喜。

ボランティアというより、楽しいイベントとして、家族揃って参加するかたが多いですね。

労働組合、三河支部、支部執行委員長、松田隆志さん。

ヤマトに入って、障害のあるかたと一緒に働くことが、当たり前だと思うようになった。

西東京主管支店、人事、総務、小池快虎さん。

すべてのお客様に、もっと喜んでいただけるように。その努力は惜しみません。

滋賀主管支店、大津おおがや営業所、グループ長、山村一樹さん。

みんな、自分の仕事に誇りとやりがいをいだき、働いてくれています。

羽田クロノゲートベース、障害者雇用推進者、田中日和さん。

ヤマトグループ、ボランティアプロジェクト。

本財団は、ヤマト運輸労働組合と連携し、2021年より、ヤマトグループボランティアプロジェクトを開始しました。そのひとつ、農業編では、全国各地の障害者福祉施設へ、各支部の組合員が、ご家族と一緒に伺い、障害のあるかたとともに汗を流し、農作業、農作物の収穫などをおこないながら、障害のあるかたたちや、障害者福祉施設への理解を深めています。

三河支部は、社会福祉法人無門福祉会で、ボランティア活動をおこなっています。

ヤマト運輸の障害者福祉推進体制。2025年3月現在。

組織。担当。役割。
主管支店。障害者雇用推進者。
  • 特別支援学校や福祉施設、ハローワーク等との関係構築、および採用活動。
  • 職場定着のための職場教育、フォロー巡回、職域拡大、その他諸問題の対応。
地域統括。障害者雇用推進者。
  • 目標達成に向けた、管下主管支店の活動支援。
  • 地域統括、障害者雇用推進者会議の企画、運営。
本社。イーエックス推進課。
  • 全社方針策定、および障害者福祉に係る施策の立案、推進。
  • 障害者雇用推進者への学習機会の提供。
  • 福祉三団体との連携窓口。

社会福祉法人共生シンフォニー様。

滋賀県大津市の、琵琶湖のほとりにある、社会福祉法人共生シンフォニーの理念は、共生、共働、共有です。人生をみんなで一緒に奏でていこう、を合い言葉に、すべての利用者さんが、夢とやりがいを持って働き、自立していけるように支援。できることは人によって違うのだから、と、いろいろな仕事を用意しています。現在は、障害福祉サービス、食料品製造、焼き菓子製造販売、公益事業と幅広く、障害のあるかたを支援。その事業のひとつ、がんばカンパニーの人気商品は、国産の材料を中心に、安心安全にこだわり抜いたクッキーです。毎日1トン近くの焼き菓子を製造し、全国各地の自然食品店や、ネットで販売しています。

「こんにちは。いつもありがとうございます」。

がんばカンパニーの利用者さんから荷物を受け取る、山村グループ長。

障害のあるかたたちの仕事ぶりを拝見しました。

西東京主管支店。人事、総務の事務など。

「好きな仕事は、社内便の袋詰め」と話す、渡邊てんせいさんと小池さん 。乗馬が得意な田中あきとさんは、入社したばかり。「渡邊さんがいろいろ教えてくれています」と、おふたりの息はぴったりです。

羽田クロノゲートベース。荷物の仕分け作業など。

「忙しくて目が回りそうだった」と、雪の日に大活躍した小坂貴博さんと、田中さん。いしき,のりひろさんは、実習で、声が小さい、と指摘され、支援学校の校庭で、先生と一緒に声を出す練習をして入社しました。

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