小倉昌男、初代理事長の意志を継承し続けるフォーラム。
リピーターから新規参加者まで、全国から、たくさんのかたが参加し、障害のあるかたの幸せや、働く場について考えを深め合う、パワーアップフォーラム。1996年に、小倉昌男、初代理事長がパワーアップセミナーを初開催されたときから数えて、今年で29年目になります。スタート時は、脱 給料1万円を目指す、少人数のセミナー形式で、今回、ヤマト福祉財団、小倉昌男賞、受賞者として講演いただいた松浦一樹さんも、当時の受講者の一人です。2010年に、より多くのかたが、学びの場、出会いの場として活用できる、大会場でのフォーラムへとスタイルを変更。本年度は、7月4日に東京、9月12日に名古屋の2会場で開催し、来場者は合計200名を超えています。
どんなに忙しく厳しい状況でも、当事者の声に耳を傾けてほしい。
本フォーラムのテーマは、人は自立して生活することで幸せを感じられる、です。山内理事長は、「障害のあるかたを取り巻く環境が着実に良くなっている一方で、福祉施設、事業所は、慢性的な人手不足に悩み続けています。しかも、昨今は、諸物価がどんどん上昇し、運営者は、これまでにない苦境に立たされているのではないでしょうか。本日は、この状況を跳ねのけ、先進的な取り組みをされている方々に登壇いただきます。そのお話から、『こういう考え方っていいかも。これならうちでできるかもしれない』、そんなヒントを一つでも持ち帰っていただき、明日からのご自身の活動に生かしていただけたらと願っています」と、主催者挨拶をおこないました。
続いて基調講演として、障害のある人の今、働くことの意味を考える、と題し、エヌピーオー法人日本障害者協議会の代表、藤井克徳さんが講演。旧優生保護法や、能登半島地震、精神科医療など、障害のあるかたが直面する、さまざまな問題を解説しました。さらに、「昨年の、企業で働く障害のあるかたのじつ人員は約67万7461人、福祉的就労と合わせても障害のあるかた全体の労働人口の約35パーセントに過ぎません。2026年7月より、法定雇用率は2.7 パーセントとなりますが、どこまで徹底できるのかは手探りです。A型もB型事業所も、障害のあるかたにとって、より魅力ある現場を築いていくこと。どんなに忙しくても、一人ひとりの声に耳を傾け、各人の能力を伸ばし、職業選択の幅を広げることが必要とされています」と、伝えました。
会場ごとにサブテーマを決め、現場が抱える課題に向き合う。
本フォーラムでは、会場ごとにサブテーマも設定しています。東京会場は、働く力を掘り起こす、です。
東京会場の小倉昌男賞、受賞者講演では、株式会社カムラック、代表取締役の、賀村 研さんが、「企業との共存から共生へ。お互いがお互いを支え合う関係へ」を、さらに、社会福祉法人、けいこうかいの理事長、柴田智宏さんが、「暮らしの幅を広げるチャレンジ」を講演しました。また、社会福祉法人、武蔵野千川福祉会、チャレンジャー、所長、佐藤もとこさんが、「働く力を伸ばし、支える支援」と題して、実践報告。
障害のあるかたが、自らを高めながら就労を通じて社会参加していく、そのために働く力をどのように掘り起こしていくか。来場者は、メモを取りながら講演者の話に聞き入っていました。
名古屋会場のサブテーマは、障害のある人が自立するために働く場に求めていること、です。小倉昌男賞、受賞者講演では、社会福祉法人いなりやま福祉会の常務理事、酒井いさゆきさんが、「利用者さんが主人公。福祉は人なり」のテーマで、エヌピーオー法人、ENDEAVOR EVOLUTION 理事長の松浦一樹さんは、「刑事から福祉へ. 27年、追い求めた真の共生社会とは」と題して、それぞれの考え方などを講演。実践報告は、社会福祉法人ゆたか福祉会、リサイクルみなみ作業所の副所長、稲垣しんじさんの、「支援の充実と、効率化を求めて」です。
いま、当事者はなにを求めているのか、その多様化するニーズに応えるため、独自にどんな挑戦を続けているのか。
福祉関係者が直面するさまざまな問題にも焦点を当て、掘り下げました。
福祉現場で頑張る仲間たちへ、シンポジストたちがエール。
会場から最も大きな拍手がわき起こったのは、当事者の報告コーナーです。会場ごとで、それぞれ2名の当事者が、大勢の人の前で、緊張しながらも、自身の近況などを伝えました。報告を終えた当事者には、藤井さんがインタビュー。いま、どんな仕事にどういった気持ちで取り組んでいるのか、働く喜びや、これからの夢を語る彼らの声は、来場者の胸に、強く響きました。
最後のシンポジウムでは、講演されたみなさんがシンポジストとして登壇。それぞれの利用者さんへの思い、活動の信念など、講演で話し足りなかった内容を伝えていきました。さらに、来場者からの質問にも回答。若い利用者さんや職員との世代ギャップ、福祉をビジネスとしてどう展開していくかなどの悩みに、シンポジスト流の対応法や、考え方でアドバイスしました。そして、最後に、一人ひとりの思いを込めたメッセージを色紙に執筆。同じ障害者福祉の現場で頑張るかたたちへ、熱いエールを贈りました。
フォーラム終了後は、これを機会にシンポジストや来場者間での交流が広がっていくように、名刺交換会を開催。多くのかたがこれからの事業所運営や事業改革を進めるヒント、それを実現する新たな仲間とのネットワークを築く手がかりを持ち帰りました。
「目指すのは、障害のある人もない人も、だれもが幸せになれる社会」。小倉,初代理事長の願いを引き継ぎ、パワーアップフォーラムをこれからも続けていきます。