農福連携。
農業と福祉が出会うと、地域が変わる。
農業と福祉をつなぎ、ひとりひとりの仕事や、役割をつくり、地域のつながりを育む、農福連携。その取り組みは、福祉や農業の枠を越え、地域の、新たな可能性を広げています。
農業と福祉、それぞれの課題を、お互いの力に。
福祉では、こんな課題が。
- ひとりひとりに合った、働く場を増やしたい。
- 仕事による給料、収入を高めたい。
- 社会や地域と関わる機会を広げたい。
農業では、こんな課題が。
- 担い手が減っている。
- 農業従事者の高齢化が進んでいる。
- 使われなくなる農地が増えている。
それぞれが持つ力を活かし合い、新しい仕事や役割をつくる。
農福連携によって生まれること
1. 仕事が生まれる。
ひとりひとりに合った、働く機会が広がる。
2. 農地が活きる。
人手不足の農作業や、使われていない農地の活用につながる。
3. 人がつながる。
福祉事業所、農家、地域の人との交流が生まれる。
4. 地域が元気になる。
仕事や商品、新しい人の流れが、地域へ広がる。
なぜ、農業なの? 農業には、百の仕事がある。
- 体を動かす仕事。
- 細かな違いを見分ける仕事。
- 丁寧に繰り返す仕事。
いろんな人が、いろんなかたちで、活躍できる。
百姓という言葉があるように、農業には、体を使う仕事もあれば、細かな作業や、同じことを丁寧に繰り返す仕事もあります。さまざまな工程があるからこそ、ひとりひとりの得意なことや、特性に合わせて役割をつくりやすい。それが農業と福祉がつながる理由のひとつです。ひとりひとりの、できること、が仕事になっていきます。
農業と福祉、それぞれの、困った、を、新しい力へ。
畑を耕す。種をまく。草を取る。収穫する。採れた作物を洗い、選別し、袋に詰める。農業には、実にさまざまな仕事があります。
こうした特徴を生かし、障害のある人たちの働く場や、社会参加につなげていく取り組みが、農福連携です。
農業の現場では、担い手の減少や、高齢化、農地の荒廃が課題となっています。一方、福祉の現場にも、働く機会をどう広げるか、給料や収入をどう高めるか、という課題があります。
農業と福祉。それぞれが抱える課題を、一方が一方を助ける関係ではなく、お互いの力を生かし合う関係へと変えていく。そこから、仕事が生まれ、農地が活用され、人と人とのつながりが生まれる。
農福連携は、福祉や農業という分野を越えて、地域の課題解決にもつながる取り組みとして広がっています。
働く場を、続く仕事、へ。
農業を始めるだけでは、農福連携は続かない。
農福連携によって、新しい働く場が生まれる。それは大切な第一歩です。しかし、その仕事が、一時的なものに終わってしまえば、利用者の暮らしを支える、安定した収入にはつながりません。農福連携を続けていくために欠かせないのが、経営という視点です。
どんな作物をつくり、いくらで売るのか。誰に買ってもらうのか。農産物をそのまま販売するのか。加工して新しい商品にするのか。農作業が少ない季節にも仕事をつくるにはどうすればよいのか。福祉事業所にも、こうした、事業を育てるという考え方が必要になります。
一方で、効率や利益だけを追い求めればよいわけでもありません。ひとりひとりの特性や得意、不得意に合わせて作業を工夫し、その人が力を発揮できる仕事をつくることも欠かせません。利用者が仕事に手応えを感じ、商品が売れ、その成果が給料として還元される。そんな循環をつくることが、持続可能な農福連携につながります。
つくるだけでなく、選ばれる商品へ。
事業を続けるためには、つくったものを、どう売るかも重要です。丁寧に育てた農産物も、買ってもらえなければ収入にはつながりません。品質を高め、加工で付加価値を生み出し、商品の魅力や背景を消費者に伝えていくことも大切な仕事です。
その価値を見える形にする仕組みのひとつが、ノウフク ジェイ エー エスです。障害のある人が生産工程に携わった食品や、観賞用植物について、生産方法や、表示の基準を定めた日本農林規格で、一定の基準を満たして認証された商品には、ノウフク ジェイ エー エス マークを表示できます。
商品が生まれるまでの背景を知り、選び、買う。消費者のそうした行動もまた、働く人の仕事を支え、農福連携を続けていく力になります。
福祉、農業、経営。みっつの視点を現場へ。
ヤマト福祉財団が取り組む、農福経営実践塾では、農業に取り組む福祉事業所の責任者などが参加し、それぞれの課題を整理。農業技術だけでなく、経営、就労支援、商品開発、販路拡大などについて学びながら、具体的な改善策を考えます。計画を立てて実践し、成果を検証し、さらに改善する。ピーディーシーエー を繰り返すことで、事業所が自ら事業を成長させる力を身につけていきます。目指すのは、利用者に安定した仕事をつくり、給料を高めていける事業所を育てることです。
農福経営実践塾で取り組むピー ディー シー エー。
- ピー. 計画する。課題、目標を整理。
- ディー. 実践する。現場で取り組む。
- シー. 確かめる。売上、給料を確認。
- エー. 改善する。次の計画へ。
農福連携の価値を商品から伝える。認証された商品に表示されるマーク。商品を選ぶことも、農福連携を応援するひとつの方法です。
農福連携は、地域から社会へ。
さまざまな人や組織がつながり、農福連携の輪は、社会へと広がっています。
農福連携が広がるにつれて、その取り組みに関わる人たちも多様になっています。福祉事業所と農家が、一緒に農作業をする。そこに、農産物を加工する企業や、販売する店舗、地域の仕組みづくりを支える行政、体験学習などをおこなう学校、商品を購入する消費者が加わっていきます。
作る人だけでなく、売る人、届ける人、買う人も農福連携の一員になれる。その輪を社会全体へ広げる動きが、全国各地で生まれています。
その広がりを、財団も支えています。
農福連携を地域に根づかせるには、新しいことに挑戦するための資金や、経営を学ぶ機会、活動を支えてくれる人とのつながりが必要です。
ヤマト福祉財団では、農福経営実践塾で事業を担う人材を育てるほかにも、助成事業を通じて新たな活動を支援したり、農業ボランティアでは、労働組合の協力のもと、ヤマト グループ社員と福祉事業所を直接つないでいます。
支援の形は違っても、その先にあるものは同じです。障害のある人の仕事をつくり、続けられる事業に育て、地域とのつながりを広げていくこと。こうした活動を支えているのが、ヤマト グループの皆さまから寄せられる賛助会費や寄付です。
農福連携の輪は、こんな分野にも。
- 農福連携。
- それぞれが持つ力を活かし合い、新しい仕事や役割をつくる。
- 農家。
- 農地の提供、技術支援。
- 福祉事業所。
- 働く場の創出、社会参加。
- 企業。
- 商品開発、販売、雇用の創出。
- 消費者。
- 商品を選ぶ、応援する。
- 学校。
- 学び、体験、次世代の育成。
- 行政。
- 制度の整備、支援の促進。
優れた実践を次の地域へ。全国各地の優れた農福連携の取り組みを発掘し、その工夫や成果を広く伝えるのが、ノウフク・アワードです。農福連携等応援コンソーシアムが2020年度から実施し、全国への発信を通じて、次の地域での実践につなげています。
一人の、働く、が、地域の未来につながっていく。
農家や福祉事業所だけでなく、企業、行政、学校、消費者へ。農福連携の輪は、さまざまな人や、組織へと広がっています。では、そのつながりがひとつの地域で形になったとき、どのような変化が生まれるのでしょうか。福島県の、こころん の取り組みから、農福連携の可能性を見ていきます。
農業から始まった仕事が、地域をつなぐ仕組みへ。
農福連携の可能性を形にした一例が、農福経営実践塾で塾長も務める、熊田芳江さんが、長年、運営に携わってきた福島県の、こころん です。
耕作放棄地を活用した農業から、養鶏、菓子づくり、直売所、カフェ、移動販売へ。仕事を広げ、ひとりひとりの得意なことや、特性に合わせた役割を生み出してきました。
農産物を加工し、自分たちで販売することで、農作業の少ない季節にも仕事をつくる。生産、加工、販売をつなぐ経営の工夫が、仕事を続ける力になります。売上を利用者の給料に還元することも大切です。
さらに、離農した農家から農地を借り、地域農家から農作業を請け負う。直売所では、地域農家の商品も販売。地域住民の雇用や、学校、大学の実習生の受け入れなど、活動は、事業所の外へ広がりました。
多様な仕事をつくり、事業として育て、地域の人や組織とつながる。こころん の実践には、これまで見てきた農福連携の可能性が、ひとつの形として表れています。
こころんの仕事づくり。
- 直売所、カフェ。
- 地域農家の商品も扱い、販売の輪を広げる。
- 農場、養鶏。
- ひとりひとりに合った役割をつくる。
- 移動販売。
- 商品を届け、人と人のつながりを生む。
- 加工。
- 商品づくりで、季節を越えた仕事へ。付加価値を付け、収入アップ。
農福連携で地域を元気に。
農福連携は、ただ農業をして、収入を増やすだけの取り組みではありません。ひとりひとりに合った仕事を、きちんと事業として成り立たせることが大切です。
財団の農福経営実践塾では、以前から課題の整理、計画、実践、検証、改善を重ね、売上や給料の向上につなげることを大切にしてきました。国も、給料向上や、事業運営の成果をより重視する方向へ進む中、その重要性は増していると感じます。
小倉昌男さんの、「障害のある人の自立を支える」という思想が、今も実践塾に受け継がれていることを大切に思います。貴重な学びや、挑戦の機会を支えてくださる、ヤマト グループの皆さまに感謝しています。
熊田 芳江 さん。
一般社団法人、そら、代表理事。一般社団法人、日本農福連携協会、顧問。第14回、ヤマト福祉財団、小倉昌男賞、受賞。長年にわたり、農業を活用した障害者就労支援、6次産業化、地域連携に取り組む。ヤマト福祉財団、農福経営実践塾、塾長。