このページと、以下のページは音声読み上げブラウザに最適化済みです。

私たちの賛助会費が活かされています。 障害者給料増額支援、助成金。助成先レポート、ボリューム54。

ゼロからの水産加工業。宇和海の恵みを雇用につなぐ。

愛媛県西南部の宇和島市で、就労の場づくりに取り組んできたアイホープ。夕日の美しい小さな島で2024年、水産加工業に乗り出しました。新しい職域の開拓へ、未経験からの挑戦です。この夏にはネット通販もいよいよ開始し、事業の加速を図ります。

地域に根ざして、困り事に向きあう。

のどかな海にかかる大橋を渡ると、ほっとする風情に包まれます。宇和島港の沖合に浮かぶ、くしまは、人口、約700人ほどの小島。四国本土と、10年前に橋でつながりました。

島の思い出ピアノという一風変わった名前の食堂が、島の一角にはあります。橋がかかったがゆえに、学校や診療所は島外のものと統合され、閉鎖されました。その廃校となった小学校の音楽室をそのまま生かし、地域の人々の食と交流を支える、ユニバーサル レストランとして5年前に開店しました。

「私たちが取り組んでいる、地域共生社会づくり事業のひとつです」と語るのは、アイホープの統括部長、清水洋平さん。

彼らが新たに挑んだのが、隣の家庭科室を利用した干物の製造販売事業です。製造に欠かせない食品乾燥機や、真空包装機、冷凍庫などの整備費の一部に、当財団の助成金が活用されました。

アイホープのルーツは、病院を有する姉妹法人が、退院患者の就労先づくりを40年ほど前に始めたことに遡ります。現在は、市内各所で、農園事業や、清掃洗濯、売店業務などを通じて、障害者の就労をサポートするのみならず、高齢者支援など、地域の幅広い課題の解決にも取り組んでいます。「農園事業も大きくなって、米は10トンをつくる規模になったのですが、規模が拡大したからといって、働ける利用者さんが同じように増えるわけではありません。なにか、これまでとは違う職域、事業モデルも立ち上げたほうがよいのではないか、という話が持ち上がりました」。

いろいろな案が検討されましたが、廃校の家庭科室を生かす方策が模索されました。

島の高齢者に向けた配食見守り弁当事業のキッチンとして、すでに家庭科室を利用していたからです。そして、くしまの目の前は宇和島の海。リアス式海岸の先に広がる好漁場で、タイの養殖は日本一の出荷量です。

農福のつぎに目指すは、すい福連携。

「じゃあ、魚をやろう、と。活きのいい鮮魚が中心のこの辺りで、加工をやっている人は少ないんですが、あえて干物を選びました。日持ちがしますし、専用のトラックを仕立てなくても物流に乗せやすい。販路を島外へ広げやすい、と考えました」。

干物の製造事業は、2024年、ついに本格的なスタートを切りました。宇和島やくしまのことを知ってもらえればと、くしまひもの工房と、土地の名をブランドに冠しました。現在は加工専属の利用者が1名、レストランとの兼務で1名の利用者さんが働いています。

加工場を覗くと利用者さんが、それは立派なマダイをさばいていました。長さ、重さの違う包丁を巧みに使い分け、器用に調理していきます。時に冗談も飛び交い、技術指導の支援員さんとも和気あいあいです。「彼は魚を触った経験がないということでしたが、料理が好きだというので、新卒採用となりました」と清水さん。

レストラン兼務の利用者さんは、洗濯事業からの異動。今では接客にも慣れて、細やかな心遣いも見せる頼もしさ。「彼女は芸術のセンスも高くて、メニュー黒板や、レストランの公式ティー シャツのデザインも手がけています」。

加工部門の売上は、昨年度に、約140万円を達成。干物を始める以前は、8.9万円ほどだった平均月額給料も、約12.5万円にアップしました。

星明かりを辿るように、ひとつひとつ。

とはいえ当初、水産業は、誰もまったくの未経験。すべてが暗中模索だったそうです。「仕入れ先は宇和島の漁業関係者に教えてもらいました。市内の業務用鮮魚店です。事情を話すと、『障害のあるかたの就労につながるなら協力するよ』と。本来なら遠くて難しいところ、くしままで届けてくれます」。

また、助成がなければ機器を整備できず、そもそも事業を立ち上げられなかったかも、と清水さん。商品の衛生面から天日干しは採用できない、と考えたからです。自分たちの規模に合う機種を、厨房機器業者などに教わり、障害者でも使いやすいものを選びました。

乾燥機は、魚をセットし、量や魚種に合ったボタンの一押しで、翌日には設定通り仕上がります。番号を振ったマニュアルも作って、誰でも迷わず作業できるよう工夫しました。「最初は、魚の種類によって、塩味がばらついたりもしましたが、1年通して魚を仕入れて、魚種ごと、季節ごとの味付けのコントロールができるようになりました」。

この7月には、イー シー サイトもオープン。よそのお店が利用しているのを見て、ヤマト運輸の、らくうるカートのサービスに辿りついたそう。工房を訪れ、設定のサポートをした、愛媛法人、営業支店の光成さんも、「福祉財団の助成を活用して始められた、と聞いてうれしくなりました」。

まずはネット販売を活用して、販路の拡大をしていくのが目標、と清水さん。ですが、いずれは市中心部にも、水産加工品や、育てた農産品の販売拠点を設けたいと、早くも、先のビジョンを描き始めています。

うろこを落としたマダイを、慣れた手つきで三枚におろしていく利用者さん。宇和海産の立派なマダイを、極上の干物に仕上げます。

くしまひもの工房と、レストラン、島の思い出ピアノがはいる、旧くしま小学校。

架橋される10年前までは、フェリーが、四国本土とをつなぐ唯一の足だった、くしま。

社会福祉法人、正和会。アイホープ。

愛媛県宇和島市、就労継続支援、エー型事業所。2023年度、障害者給料増額支援助成金。地域資源を活用した活動分野の拡大による給料増額プロジェクト。500万円。助成内容、食品乾燥機、真空包装機等の購入資金。

塩分濃度など、加工の肝は、「知り合いを通じて、市内唯一の加工業者さんに教えを請うたり、あちこちの干物を食べ比べて、参考にしました」と、アイホープ の統括部長、清水洋平さん。

どれも自慢のケンサキイカ、マダイ、カマスの一夜干し。ラインナップの一部は旬に応じて変わります。

下処理した魚は、助成で整備した食品乾燥機へ。ワンボタンで翌日には、ばっちり仕上がります。

レストラン業務と兼務の利用者さん。商品をていねいに真空包装機でパックしていきます。複数の袋も一度に封ができるスグレもの。

通販で、宇和島の味をもっと身近に。

ヤマト運輸株式会社、愛媛法人営業支店、光成 わか さん。

らくうるカートの導入の際に、ビー2伝票への切り替えや、運用方法のサポートで伺いました。宇和島の魚はとてもおいしく、干物なら、焼くだけで、家庭でも気軽に味わえる点も魅力です。初訪問時には真空包装、冷凍設備や、ピーシー、プリンターなどが整っており、通販もすぐ進められそうだと感じました。工房や、隣のレストランで、みなさんが楽しそうに仕事をされていたのも印象的でした。

アイホープ 売上と、利用者給料のおおよその推移。就労継続支援エー型。

年度。2023実績。2024実績。2025実績。2026計画。
全事業売上。4,595万円。5,005万円。5,644万円。6,175万円
水産加工売上。0万円。38万円。138万円。170万円。
在籍数。18人。18人。17人。17人。
1人当たり月額給与。89,126円。104,417円。124,572円。148,897円。

新鮮な魚をいつも納めてくださる魚店さんと。

パックされたばかりの商品は、すぐさま、隣に設置した、液体急速冷凍機で、鮮度そのままにマイナス30度で冷凍されます。

らくうるカート導入のサポートにあたった、左のヤマト運輸の光成さん。「これなら導入できそうだ、って調べてみたら、なんだヤマト運輸さんのサービスなのかって、あとで分かりました」と、右の清水さん。

くしまひもの工房のみなさん。

労働組合支部執行委員長、助成先訪問、シリーズ 49。

思いをつないで、一滴を大河に。

ヤマト運輸労働組合、愛媛支部執行委員長、河野 こころ さん。

利用者さんが実際に魚をさばく様子を拝見しましたが、力のいる作業だと思います。それをしっかりこなされていて、感心しました。

幼い頃から、障害のあるかたと接する機会があったのですが、助成が役に立っているところを目の当たりにすると、喜びもひとしおです。

支部単位で集まる金額だけを見ると、小さく感じるかもしれません。ただ、それが、全国から集まることで、大きな額になり、各地の支援に使われている。だから、ひとりひとりは微力でも、決して無駄ではありません。

一番大切なことは、小倉昌男さんの意思を継いでいくことだと思います。率直に言えば、利用者さんの手取りが増えて、生活が豊かになっていくこと。誰もが、より豊かな暮らしができるように、応援していきたいですね。

公益財団法人 ヤマト福祉財団 トップページへ戻ります。
ヤマト福祉財団ニュースの目次へ戻ります。